10月24日~26日にかけて、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜では、最新のフラットパネルを各社が展示する「FPD International 2007」が開催されている。本誌では携帯電話向けの小型ディスプレイを中心にレポートする。
携帯電話に搭載されるディスプレイは、3インチなどの大型化、ワイドVGA液晶などの高解像度化といった進化が一段落した印象だが、会場では、液晶とは異なる方式である有機ELの展示が注目を集めているほか、薄型パネルで各社がしのぎを削っている様子が窺える。また一部では、屋外での視認性を高める技術や、高画質化、耐衝撃性など、付加価値を高める方向性が打ち出されているのも興味深いポイントとなっている。
■ シャープ、“世界最薄”を謳う薄さ0.68mmの液晶パネル
シャープのブースでは、「世界最薄液晶」として、薄さ0.68mmの液晶パネルが展示されている。大きさは2.2インチで、解像度は240×320ドット(QVGA)、コントラスト比は2,000:1。開発中の製品として展示されており、昨今ますます薄型化が求められているデザイン重視の携帯電話などにおいて需要が見込まれる。ブースでは、計測器を用いてパネルの厚みを表示するなど、薄さが全面的にアピールされている。
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世界最薄の液晶パネルの概要
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パネルの薄さはわずか0.68mm
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計測器で測定し、薄さをアピール
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同社のブースではまた、8月に発表された「光センサ内蔵システム液晶」が展示されている。これは、各画素に光センサーを内蔵することで、パネル表面の構造はそのままにタッチパネルやスキャナなど、入力デバイスとしての機能も持たせたもの。ブースでは実際に触れることができ、2点以上のタッチを認識したり、スライドさせて画像を拡大するといったデモが行なわれている。
さらに、画素に光センサーを内蔵する技術を応用した開発中の液晶として、「外光センサ内蔵システム液晶」が展示されている。これは、バックライトの自動調光に使う外光センサーを液晶パネルの外周に統合したもので、従来のように外光センサーを別部品として搭載する必要がなくなるというもの。半透過型液晶と組み合わせれば、平均50%の消費電力削減が見込めるという。厚さは従来の液晶と変わらず、来年には量産を開始したいという。
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8月に発表された「光センサ内蔵システム液晶」
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タッチパネルのデモを体験可能
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新たに公開された「外光センサ内蔵システム液晶」
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パネルのみで外光に応じた自動調光を実現し、半透過型液晶と組み合わせれば消費電力を削減できるという
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■ サムスンSDI、3.1インチ・ワイドVGAの有機ELを国内投入
サムスンSDIのブースでは、国内の携帯電話にも搭載される有機ELの最新製品が展示されている。
すでに発表された製品では、「INFOBAR 2」や「W53H」などを展示しながら、auの最新端末に搭載される2.6/2.8インチ、240×400ドット(WQVGA)の有機ELが紹介されている。また、3インチで240×432ドット(LQVGAと呼称)の有機ELと、4.1インチで272×480ドット(WQVGAと呼称)の有機ELでは、Conventionalとする量産品の展示に加えて、ドライバICなどで高画質化を図った「OLED MAX」と呼ぶ開発中の製品も展示している。性能は同一になるが、「OLED MAX」ではより自然な色を表現できるという。2008年の第3四半期に提供される見込み。
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「INFOBAR 2」や「W53H」でサムスンSDIの有機ELを紹介
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こちらは量産の2.4インチ、QVGAの有機EL
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量産品をベースに画質を向上させたという「OLED MAX」シリーズ。写真は3インチ、240×432ドットで、コントラスト比は10,000:1
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こちらは4.1インチバージョン。解像度は272×480ドット
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今後市場に投入される製品としては、3.1インチで480×800ドット(WVGA)を実現した有機ELが披露されているほか、2.4インチ、240×320ドット(QVGA)で薄さ0.37mmを実現した有機EL、曲げられる有機ELなども紹介されている。
同社ブースの担当者によれば、今後日本市場では、2008年においても春、夏、秋冬モデルで各社からサムスンSDIの有機ELを搭載した携帯電話が登場する予定という。また、3.1インチでワイドVGAを実現した有機ELについても、搭載製品が「2008年の第4四半期に出るのではないか」との予測を明らかにした。
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3.1インチでワイドVGAを実現する有機EL
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ワイドVGAの高精細な表示と有機ELの高コントラスト比により非常に鮮やかで緻密な表示が可能
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2.4インチのQVGAで薄さ0.37mmという薄型の有機EL
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実際に画像を表示しながら薄さをアピール
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4インチで、曲げた状態で固定した有機EL
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将来的には、ある程度自由に曲げられるようなものも目指すという
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■ 耐衝撃性や屋外での視認性を向上
NEC液晶テクノロジーのブースでは、「Super-Reflective NLT」として、1画素に反射領域と透過領域を併せ持ちながら、光学設計により透過率を向上させて輝度を確保し、反射率も向上させたという液晶パネルを紹介している。輝度と反射率の割合は4種類が用意されており、設計時に最適な仕様を選択できる。解像度もQVGAやVGAなどが用意されている。
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「Super-Reflective NLT」として反射率と透過率を選択可能に
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解像度や反射率など4種類のタイプを用意
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エプソンのブースでは、「耐衝撃薄型モジュール」が展示されている。従来であれば、薄型化を進めるに従い耐衝撃性は落ちていくことになるが、同社が展示する製品では耐衝撃性を落とさず薄型化を実現するという。展示された開発中の製品は薄さが1.2mmとなっていた。担当者によれば、部材の品質などではなく、構造的に強度を確保しているとのことで、元々堅い部材はそのまま残しながら、柔らかい部材を可能な限り薄型化することで耐衝撃性を実現しているという。これにより、落下などの衝撃に耐える性能を実現しながら、押圧やねじれ耐性も強化されている。
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「耐衝撃薄型モジュール」として強度にフォーカスした液晶パネル
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通常のパネルに比べて薄型化を図りながら強度を確保
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東芝松下ディスプレイテクノロジーのブースでは、「W54T」などにも採用されているガラスパネル一体型LCDモジュール「スクリーンフィット」が紹介されている。従来なら、液晶パネルとカバーパネルの間に空気層ができるが、これを特殊な樹脂で埋め一体型とすることで、内面反射を抑えて明るい環境下でもコントラストを向上させている。
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W54T、W53T, 912T、815Tに搭載された「スクリーンフィット」
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乱反射を抑えて明るい環境でも視認性が向上
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日立ディスプレイズのブースでは、参考出展として5インチで1366×768ドット(WXGA+)を実現したIPS液晶パネルが紹介されている。ハイビジョン映像が表示できる点をアピールしており、次世代の高性能なモバイル端末での利用を想定している。また、画素のレイアウトを従来から変えた「PenTile RGBW技術」を採用した開発中の液晶も展示し、低電力・高輝度化などのメリットをアピールしている。
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5インチでハイビジョン映像を表示可能なIPS液晶パネル
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解像度は1366×768ドット(WXGA+)を実現
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PenTile RGBW技術では画素のレイアウトを工夫
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写真のパネルでは輝度630cd平方メートルを実現
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LGフィリップスのブースでは、3インチ、WQVGAの有機ELが紹介されており、屋外での視認性を高める独自技術「ASR」が紹介されている。
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LGフィリップスは屋外でも視認性を確保する有機ELを展示
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中央がASR技術を使用した有機EL
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■ URL
FPD International 2007
http://techon.nikkeibp.co.jp/fpd/2007/
(太田 亮三)
2007/10/24 18:11
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