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【WIRELESS JAPAN 2007】
ウィルコム黒澤氏、PHSの特徴と次世代への進化を語る

ウィルコムの黒澤氏
 ワイヤレスコンファレンス2007の「ネットワークコンファレンス」で、ウィルコムの開発本部 本部長の黒澤 泉氏は、「次世代PHS標準化および開発動向と今後の展望」と題した講演を行ない、ウィルコムのネットワーク進化について語った。

 まず黒澤氏は、「いま国内でPHS事業をやっているのはウィルコムだけ。だからこそ、独自のサービスを提供したい」と語り、同社の提供するサービスなどを紹介した。ウィルコムが提供する定額サービスについては、「3つの定額をやっている。1つは通話の定額で、時間の制約がない。相手が070であればいつでも定額になる」と語り、通話のトラフィックのデータをグラフで紹介する。データによると、定額プラン非加入の従量料金ユーザーに比べ、通常の時間帯で15倍、21時~25時のコアタイムでは実に70倍にもトラフィックが増えているという。

 黒澤氏は「これだけトラフィックが増えるので、他社ではコアタイムを定額対象から抜いたり、対象ユーザーを限定したりしている。しかしウィルコムはマイクロセルを採用し、ネットキャパシティが大きいという特性があるため、すべてを定額で提供している」として、ウィルコムの独自性によるメリットをアピールした。


ウィルコムの3つの定額 定額プランで大幅に増えたトラフィック

W-SIMの特徴
 W-SIMについては、「無線部とアンテナを一体化したモジュール。これによって、企業が技術的に端末ビジネスに参画しやすくなった。小ロットでも作りやすい。開発期間も大幅に短縮できている」と語り、さまざまな端末が登場していることを紹介する。

 さらに、プラットフォームを公開してパートナー企業と協業しやすくすることで、「1+1+付加価値」を実現し、新たなマーケットを開拓していることをアピール。従来のマスマーケットに加え、小ロット生産などの特長を生かして、「コミュニティマーケットも狙う。携帯電話とは違った市場を作っていきたい」と語った。


オープンなプラットフォーム 技術的な独自性を基礎とした事業戦略

マイクロセル方式による数々の特徴

マイクロセルとマクロセル
 黒澤氏は、PHSの特徴であるマイクロセル方式について解説する。「PHSは電波が弱く、1つの基地局がカバーするエリア(セル)の半径は500mくらいまでが目安。これに対し、携帯電話のマクロセル半径は500m~20km程度。またマクロセルの場合は、セルの1つ1つを厳密に設計する。ウィルコムのマイクロセルは、セルがかぶっても良い、という設計思想になっている。セルが自動調整されるので、基地局を容易に追加できる」と語る。

 さらに「たとえば、都心部では、かなりセルがオーバーラップしている。トラフィックが集中する地域には、基地局を増やして負荷を分散できる。一方で携帯電話の場合、都心部では多くのユーザーが集中するので、データ通信が低下する傾向がある」とし、PHS技術が高トラフィックに強いことをアピールする。

 このほかにも小電力で医療施設内でも使えること、W-SIMによる多彩な端末展開ができることなどを紹介し、「これらの特徴を生かして、携帯電話では実現できない、独特な展開をしていきたい」と語った。


ユーザーの利用する基地局を分散できるマイクロセル方式 マイクロセル方式から生み出される数々の特徴

次世代PHSへの進化

現在進行中のW-OAM化

ネットワークのIP化
 通信方式の進化について、まず黒澤氏は、現在進行しているW-OAM化について説明する。W-OAM化については、「いま現在、設備交換を含めて進行している。変調方式の変更により、近い距離では64QAMにより高速化し、低速化するが、従来よりも遠い距離ではBPSKにより品質が改善される」と語る。

 また、基地局がつながるネットワーク側については、「IP化し、IPバックボーンを構築している。回線をISDNのまま独自交換機にしてIPバックボーンにつないでいるところもあるが、回線もIP化を進めている。現在のところ、全トラフィックの8割くらいがIP化されたネットワークを使っている。IP化されたネットワークをさらに光ファイバー化もする。いまはISDNがボトルネックとなり、W-OAMが進んでも512kbpsが限界となるが、光ファイバー化すれば、800kbpsにまで高速化される」と解説した。さらに「次世代PHSでは、このインフラがすべて使える。基地局の無線部分を変えるだけで、次世代PHSを導入できる」とし、次世代PHSを見据えた改良が進行中であることを明らかにした。

 こうした次世代に向けた動きについて、「よく設備投資は大丈夫なのか、と言われるが、16万局あるウィルコムの基地局を、設備交換の時期を利用し、低コストで新しいものに交換している」とも語る。


次世代PHSの特徴
 次世代PHSについては、現行PHSとの共存を考慮した技術になると説明する。フレーム構成を現行と共通化することで、デュアル端末で展開できるようにするという。

 また、規格の標準化については、今年9月にPHSの標準化団体であるPHS MoUによって承認され、その後ARIBでも承認されるという見込みを明らかにする。

 技術的な概要説明では、WiMAXなどとも比較し、「PHSはマイクロセルで、周波数干渉があることが前提でデザインされている。一方のマクロセルである携帯電話やWiMAXは干渉がないことが前提になっていて、このあたりがPHSと異なっている」と語った。


次世代PHSの標準化動向 次世代PHSの設計コンセプト

次世代PHSをWiMAXのチャネル利用の比較 次世代PHSではIPベースのネットワークが標準となる

 最後に黒澤氏は、携帯電話やブロードバンドの1カ月当たりの転送量のデータを示し、「携帯電話では10MBだが、ブロードバンドでは10GBとなる。周波数は有限なので、いかに帯域を有効利用するかが重要。その点、PHSは処理できる容量が大きい。これは次世代PHSでも同じ。次世代PHSにより、容量のあるネットワークを作れるのではないか。現行PHSからW-OAMに進化し、さらに次世代PHSにつなげていきたい」と語り、講演を締めくくった。


容量とモビリティを軸に取る「バンダイアグラム」に、容量の軸を追加して、ほかの方式と比較する 次世代PHSへの進化の道のり


URL
  ウィルコム
  http://www.willcom-inc.com/

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(白根 雅彦)
2007/07/20 18:28

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