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【WIRELESS JAPAN 2007】
シャープ精神で作り出されるケータイを松本副社長が語る
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シャープの松本副社長
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ワイヤレスコンファレンス2007の基調講演で、シャープの代表取締役副社長 商品事業担当兼情報通信事業統括の松本 雅史氏は、『シャープの携帯電話の「これまで」と「これから」 ~オンリーワン携帯電話の創出と更なる進化に向けて~』と題した講演を行なった。
■ シャープの物作り精神
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シャープが作ってきた歴史に残る商品群
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松本氏はまず、シャープの歴代社長がそれぞれに掲げたスローガンを紹介する。まず創業者の早川 徳次氏は「他社にマネされる商品」を作れというスローガンを掲げている。松本氏は、「他社にマネをされてシェアを逆転される、ということも起こりうるが、それでも新しいものと作れ、と謳った」と解説した。松本氏は、ほかの歴代社長のスローガンについても解説しつつ、今年4月に5代目の社長に就任した片山 幹雄氏のスローガンについては、「スローガンをいま考えているところ。もともと技術分野の出身なので、新しいことへの挑戦、技術への可能性といったところから考えている。お楽しみに」と説明した。
さらに松本氏は、創業者から続くスローガンにより、シャープは社名の由来伴ったシャープペンシルを始め、鉱石ラジオや電子レンジ、電卓といった数々の独創性の高く、歴史に残る商品を開発してきたことを紹介する。
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2つのこだわり
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そうした商品を開発してきた背景として、2つの「モノづくり」へのこだわりがあると松本氏は説明する。
こだわりの1つは、「産業化へのこだわり」。商品を生み出す際に、「研究」「開発」「事業化」「産業化」の4つのステップがあるとし、「それぞれの段階のあいだには魔の川、死の谷、ダーウィンの海がある」と語り、大きな壁を乗り越えて産業化を目指していることを説明する。
たとえば電卓の場合、研究段階では液晶があったが、それを電卓の表示装置に応用する必要があった。これが大きな壁を乗り越えて商品として開発され、そして事業となるまで大きくなり、いまでは液晶は1つの産業となっている。松本氏は液晶だけでなく、太陽電池や半導体についても、3つの大きな壁を乗り越え、産業になしえたと語った。
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産業化へのこだわり
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生産へのこだわり
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製造へのこだわりで作られた亀山第2工場
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もう1つのこだわりは、「生産へのこだわり」だとする。松本氏は「国内生産にこだわる。最近はとくに、マザー工場化や国内回帰といった流れがある。成熟商品などは海外でも作るが、最先端の技術・商品は、ノウハウなどの保護から、ブラックボックス化し、マザー工場化して日本国内での生産にこだわる」と説明する。
その一例として松本氏は、シャープの製造拠点の1つ、三重にある亀山工場を紹介する。亀山工場では、液晶のベースとなるマザーガラスを作っているが、世界最大のマザーガラスを作れることで、効率よく大画面液晶を作れるという。さらに松本氏は、亀山工場は生産性が高いだけでなく、制震システムも導入し、4月に三重県で起きた地震でも影響がなかったと紹介する。さらに太陽発電やコージェネレーションシステム、燃料電池といったシステムにより「工場で消費する3分の1の電力を社内でまかなっている。地球環境に優しい工場作りも心がけている」とも語った。
■ 縦横の連携で商品を開発
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シャープにある2つの携帯電話関連の事業部
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松本氏は、移動体通信事業は、広島にある「通信システム事業本部」と奈良にある「情報通信事業本部」の2つの事業本部が手がけていると紹介する。広島の事業本部では、ドコモやソフトバンク、au、あとは海外向けの、オーソドックスな携帯電話を作っている。一方の奈良の事業本部は、ウィルコムやイー・モバイル向けのスマートフォンを作っているという。
また松本氏は、「シャープの携帯電話事業の歴史は浅い。最後発だった。しかしカラーモデル、カメラモデルを出し、AQUOSケータイにまで進化した。その結果、2年連続で国内シェアナンバーワンとなった」と語る。
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最後発ながら、数々のマイルストーン的端末を生み出している
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2006年度の国内携帯電話出荷台数シェア
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縦と横の融合
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松本氏は、シャープの物作りにおける特徴として、「縦と横の融合」ということを紹介する。
縦の融合とは、商品開発部門とデバイス開発部門が連携すること。松本氏は、「たとえばケータイであれば、液晶から白色LED、調光システム、赤外線通信モジュールといった自社内のデバイスを取り込むことで、商品を作ってきた」と語る。
横の融合とは、異なる事業部門が連携すること。たとえばAQUOSケータイであれば、携帯電話を作る広島とAVの事業部門が連携することで、商品を作り上げたという。W-ZERO3などのスマートフォンも、広島の事業部と、もともとはザウルスなどPDAを手がけていた奈良の事業部が連携することで、作られている。松本氏はこのほかにも、インターネットAQUOSなど、さまざまな部門が連携して製品作りをしていることを紹介した。また松本氏は、こうした縦横の融合を支えるものとして、シャープ社内に「緊急開発プロジェクト制度(緊プロ)」と呼ばれる制度があることも紹介した。
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縦の融合の例
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横の融合の例
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■ シャープが分析する携帯電話市場の動向
松本氏は携帯電話市場の動向として、ワンセグ市場の成長を紹介する。ワンセグケータイへのシャープの動きとして松本氏は、「ワンセグ放送の開始以来、ワンセグケータイの比率が上がっている。2007年度には急激に比率が上がり、5割に近づく。シャープではサイクロイドスタイルのAQUOSケータイだけでなく、2軸回転のW52SHやコンパクトなSH704i、スライドスタイルの913SHといったものも含め、2つの流れでワンセグ市場のユーザーニーズに応じていく」と語った。
デジタル放送の海外動向については、「日本の方式はブラジルが採用予定だが、ほかは別の方式がある。海外では放送受信が有料だったりと、環境に差があるが、今後、デジタル放送が普及する流れはできている」と説明した。
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ワンセグケータイ市場の急激な立ち上がり
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世界の地上デジタル放送の動向
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シャープの世界シェア
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また3G化、ワイドバンド化についても言及する。松本氏はまず「いままではGSMが主流だったが、いま3Gへの流れが加速している」と語り、3G化が国際的な流れであることを説明する。その上で松本氏は、シャープやほかの日本メーカーの国際シェアについて解説する。「現状のシェアでは、日本メーカー全部あわせても6%程度。シャープは国内ナンバーワンでも、1.2%くらいしかない。こういったシェアを見ると、日本メーカーは弱い、国際競争力がない、と言われてしまう。しかしこれはGSMベースの世界での話だから、とも言える。3Gのワイドバンド方式が普及し、土俵が変われば、競争状況も変わってくる。ワイドバンド方式で言えば、シャープのシェアは8.5%。3Gならば、日本のメーカーが海外メーカーに先んじているところもある。マルチメディア化、ワイドバンド化が日本メーカーにとってはチャンスではないか」とし、今後、世界市場でシェアを伸ばしていく可能性があることを示唆した。
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携帯電話の方式別の出荷台数。W-CDMAが今後も伸びていく
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W-CDMAで限定した場合の世界出荷台数シェア。シャープが3位に浮上する
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これまでのケータイの進化。人類の進化にたとえることができる
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今後のケータイの方向性について松本氏は、「ケータイの進化は速い。進化のキーワードは、軽薄長大だ。軽い・薄いだけではダメ。操作感やデザイン性、機能を含め、ユーザーニーズに合わないといけない。この軽薄長大をキーワードに、さらに進化を重ねていく」と語った。さらに「新たな機能と融合」「ウェアラブル化」「シームレス化」「生活スタイルとの密着」の4つをキーワードに、「モバイルライフツール」として進化していくとして、講演を締めくくった。
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軽薄短小、ならぬ「軽薄長大」
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携帯電話進化の4つのキーワード
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■ URL
シャープ
http://www.sharp.co.jp/
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(白根 雅彦)
2007/07/19 11:27
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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