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【WIRELESS JAPAN 2007】
ドコモ中村社長、携帯系サービスは全定額制を視野に
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NTTドコモ
中村維夫社長
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7月18日から開催された「WIRELESS JAPAN 2007」のワイヤレスコンファレンス2007では、その先陣を切ってNTTドコモの代表取締役社長、中村維夫氏が講演を行なった。「DoCoMo2.0~これからのドコモの変革と挑戦~」をテーマに、生活・ビジネスに役立つケータイの実現に向けた「一歩先への挑戦」をキーワードに、同社の携帯電話事業への取り組みなどについて語った。
中村氏はまず、「携帯電話事業を取り巻く環境の変化」について説明。昨年10月24日からスタートしたMNPに関して、3月までに約60万人の純減となり、同社契約数の1%の顧客を失ったことなどに触れ、「結果は厳しかった」と述べた。「MNP自体の影響は、少なくなってきているが、それでも4~6月で21万人落ちている。厳しい状況は続いているが、こうした状況を早く脱しないといけない。エリア、料金、端末、サービスに力を注ぎ、改善していく」とした。
ドコモから他社で移動したユーザーの解約理由には、「ネットワークのつながりにくさ」、「料金が高いというイメージ」の2つがあるという。これに対して、中村氏は、「FOMAの基地局数は、昨年だけで1.5倍に増やし、投資額は9,000億円を超えた。料金体系は、ソフトバンクの980円の設定への対抗は辛いが、auとは遜色ないものとなっている」とし、「FOMAの基地局はほぼできあがった。端末価格が高いので、料金そのものが高いと思われている。こうしたイメージを払拭していく。一歩先にいくことを訴え、ありとあらゆる分野でサービス向上を図っていく」と語った。
一方、ドコモに移行してきたユーザーの場合、「ネットワークのつながりやすさ」、「ファミリー割引」、「端末のデザインがいい」といった理由をあげているという。
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MNPの状況
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市場シェア
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■ 販売奨励金廃止はソフトランディングを模索
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モバイルビジネス研究会の報告書について
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中村氏は、2つめのテーマとして、モバイルビジネス研究会が6月26日に提出した報告書に関する見解を示した。
モバイルビジネス研究会の報告書では、販売奨励金の廃止について触れられているが、同氏は「携帯電話の拡大期においては、販売奨励金によって端末価格を安くし、通話料で回収するという仕組みを採用してきた。これによって、市場への普及を図ってきた。高機能端末を低価格で販売でき、ユーザーも利用しやすい。メーカーも高機能端末を次々出しやすいという環境が生まれている。日本は、ハイエンド型中心であり、インターネット接続比率が高く、アプリケーションの利用も進んでいる。日本の携帯電話の先進性をもたらした要因のひとつであることは間違いない」と述べた。
その一方で、同氏は「当社では、昨年度実績で1台あたり34,000円の販売奨励金を支払っている。市場の飽和によって、新規市場の拡大効果は少なく、買い換えが主流のなかでの販売奨励金の仕組みは財務的には苦しい。販売コストの一部を通信コストの一部として回収するというのは、長く同じ携帯電話を利用している人には不利でもある。研究会では、通信料金と端末料金の分離プランを提示し、何にいくら払っているのかを明確にすることを求めており、また、これは端末料金の支払期間が明確になることにもつながる。販売奨励金のモデルは、メリットもあったが、課題も多い。時代に合わないとの指摘は確かである。なんらかの対応を検討していく姿勢だ。一気に変えるというのではなく、ソフトランディングしていく仕組みが必要だろう」とも語る。
だが、「端末メーカーにとっては、端末の販売単価が高くなり、販売数量が減ることを意味する。業界全体で年間5,000万台の新規・乗り換え需要があるが、これは確実に落ちる。端末メーカー、販売代理店にどんな影響を及ぼすかを考えていく必要がある」とした。
研究会の報告書で触れられているSIMロック解除については、「仕組みとしては可能だが、慎重な検討が必要である」との見解を示した。
中村氏は、同じW-CDMA方式を採用しているソフトバンクとのメールができない、あるいはテレビが映らないといった、使い勝手に影響する問題が課題だとする。また、方式が違うauの端末との競争状況をどう確保するのか、海外輸出を想定すると、ある程度の価格設定が必要であることなどを指摘。「研究会の報告のように、結論を急がずに2010年までに出すのがいい。どうすべきかを、2010年までにいろいろ考えたい」とした。
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販売奨励金について
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SIMロック解除とプラットフォームの共通化
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MVNOの新規参入については、「反対の立場ではないが、お互いにシェアを奪うのでなく、Win-Winの関係でなくてはならない。MVNO事業者が、既存の通信事業者にはできないような新たな付加価値を提供できる通信サービスを行える仕組みが一番いい」と語った。
MVNOの提供方式は、事業者への回線卸方式と、回線接続方式があるとし、さらに回線接続方式のなかには、定額制、従量制の2つがあるという。「基本的には卸が原則だと考えている。それにより、MVNOがサービスレベル、内容、料金を設定することができる。接続の仕組みだと、義務化され、契約約款の手続きに時間がかかる。しかも、世界的にも例がない。また、料金プランももう少し事例が出てきて判断できる状況になってからの策定が望ましい。まだプランを作るには時期が早すぎる」などとした。
WiMAX事業に参入については、「NTTグループとして、3分の1までを資本出資する形でパートナーを組み、WiMAX事業に参入したいと考えている」と述べた。
■ 定額制、生活アシスト、国際――3つの切り口
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3つの切り口
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3つめのテーマとして、「DoCoMo 2.0」で掲げている「一歩先の取り組み」についても言及した。
中村氏は、「携帯電話はパーソナル化が進む一方で、どこでも使うユビキタス化とシームレス化が進んでいく」と予測。「個々人の生活に密着したインフラとしての浸透を図りたい。そのためには、定額制、生活アシスト、国際の3つの切り口がある」とした。
定額制では、「便利で楽しいコンテンツを利用するためには、料金面での不安を無くすことが必要。パケ・ホーダイは、すでに1,000万契約を超え、FOMAでは30%強を占めている。契約者数も1年間で倍に増えた。今年秋には、64kbpsに限定するものの、PC接続での定額制を導入する。定額制メニューの充実が今後の方向になる」という。
また、ネットワークの整備については、「アップリンクをどうするかが次の課題。スーパー3Gを、2009年から2010年にかけて提供していくほか、その先には4Gの世界がある。4Gはネットワークを全部張り替える必要があり、ここでどんなサービスが提供できるかを考えながら、二千十数年には実用化していくことになる」とした。
加えて、フェムトセル用BTSを会場に展示していることを示しながら、「電波の届きにくいところは、経済的な観点からもフェムトセルで対応することがいい。開発中の端末は、600gの重量で、13×18×4cmというサイズ。これで数10mのエリアでの通信が可能になる」と説明していた。
生活アシストに関しては、「携帯電話は、所有時間が長いこと、常に移動している環境で使われること、そして、カメラ機能やFeliCa機能の搭載などハードとソフトを融合した端末であるという特徴がある。さらに、セキュリティ機能にも優れている。朝の目覚ましとしての利用から、外出し、仕事をして、帰宅後、夜寝るまでの生活全般を、1台の携帯だけでカバーできないかと考えている。その点で、決済機能は重要なものであり、ワンセグ放送の受信や、GPSを使った乗り換え案内などといった機能とサービスの提供により、生活をさらに便利にすることを狙いたい」とした。
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ネットワークの高度化
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生活アシストのイメージ
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国際化への取り組みについては、音声通話が153の国と地域で利用でき、iモードやメールでは101の国と地域で利用できるようになったことを示した。
「アジアや欧州では、携帯電話で会社のメールが読めるようになったことで、ノートPCを海外に持っていくことが少なくなったという声も聞く。かつて日本独自のものを使っていたという反省もあったが、やっと世界で使えるということが実現できるようになった。日本人が訪れる99.8%の地域で利用できるようになる」とした。
「とくに、アジアは重要な地域と認識しており、アジア最大の事業者間連携であるCONEXUS MOBILE ALLIANCEによって、9つの国と地域で優先ローミングを行なっている。これによって、日本から海外へ出る人の半数をカバーできる。韓国、グアム、サイパンはドコモの携帯電話では通じないと言われてきたが、韓国では、KTFは出資し、W-CDMAが使えるようになった。グアムでもグアムセルラーを買収し、ハワイでもAT&Tモバイルによって、今年から3Gネットワークを構築していく。日本のユーザーに便利なように努力しており、日本人で行くところで電話機が使えないところはなくなった。以前は、成田空港で携帯電話を借りていく人が多かったが、いまは自分の端末を使う人が増えている。世界的にもW-CDMAに流れているので、それも強みとなっている」と語った。
また、次期モデルの905iシリーズにおいては、すべての機種でFOMA+GSM対応とすることで、第2、第3世代の機能を搭載し、全世界で使えるようにすることを明らかにした。
ドコモ2.0に関しては、「904iシリーズだけのプロモーションではなく、お客様に関するサービス全般をバージョンアップさせること、そして、内部体制を変えていくことにも取り組んでいる」と位置づけ、「この業界は、MVNOの新規参入や、アップルがiPhoneを投入するなど、どこが参入してくるかわからない時代になってきた。ゲーム機にも、いつ携帯電話機能が乗ってもおかしくない時代だ。誰が競争相手かわからないというのが正直なところ。以前は、携帯電話が様々な機能を取り込んできたが、いまは、他の製品が携帯電話機能を搭載するようになっている。そのためには、常に新しいことに挑戦する姿勢が大切である。一歩先に行くというキーワードは、新たな価値を創造し、新たな革新的な生活スタイルを提供していくということ。従来の流れにとらわれずに挑戦していく」とした。
また、中村氏は、「定額制ビジネスを拡大し、携帯系の利用に対してはすべて定額制で行くことを目指したい。トラフィックが耐えられるかどうかを検証してところだ。端末機のラインナップは、HSDPA対応および国際対応を標準機能として搭載していく。ワンセグはこれからはすべての機種に基本的に載せる。90X系には、HSDPA、GSM、ワンセグといった先進的な機能はすべて取り込んでいく。iPhoneを使ってみたが、確かに使いやすい。指を広げるだけで地図が拡大するなど、魅力的な端末である。こうした使いやすい、利用シーンやライフスタイルにあった魅力的な端末を開発していきたい」と語った。
最後に中村氏は、「携帯電話をハブにして、新たな価値を提供することに取り組んでいけないか、と考えている。生活のなかで、携帯電話を意識しないで、気軽に使えるようにしたい。ドコモにとって重要なのは、先進性や独創性であり、これを失ってはいけない。果敢にチャレンジしていくことが大切であり、これからのドコモの携帯電話に期待してほしい」と締めくくった。
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DoCoMo 2.0とは
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201X年のイメージ
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■ URL
NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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