20日、クアルコム本社において、CDMA2000 1xEV-DO Rev.B方式とUMB(Ultra Mobile Broadband)のデモンストレーションが行なわれた。両方式ともに、今回初めて、自動車を用いた移動環境での性能が紹介された。
■ Rev.B
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Rev.Bのデモに用いられた自動車
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自動車内部
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現在、国内ではauがCDMA2000方式を採用し、CDMA 1X WINというブランド名でCDMA2000 1xEV-DOおよび1xEV-DO Rev.A方式を使ったサービスを展開している。1xEV-DOは、携帯電話での定額制サービスを導入することに繋がるなど、データ通信に特化した方式で、通信速度は下り最大3.1Mbpsとなっている。Rev.A方式は、その発展版で上りの通信速度が1.8Mbpsに向上したのが特徴となる。
1xEV-DO、Rev.Aの進化の先に位置付けられるのが、今回紹介されたRev.B方式だ。通常、Rev.A方式までは、1.25MHz幅を1つのチャンネルとして扱う。Rev.B方式は、複数のチャンネル(n波)を同時に束ねて通信できるというもの。周囲の環境によっては1x(1波)、あるいは2xという形で通信することもできる。現在のところ、規格上は、15xまで標準化されているが、同社が2007年第4四半期にリリースするチップ「MSM7850」では、最大3xまでの通信がサポートされている。また、Rev.A方式を導入している通信事業者にとっては、基地局側に新たなハードウェアを導入することなく、ソフトウェアのアップグレードでRev.B方式を導入でき、既存のEV-DO方式との下位互換性も保たれている。このほか、レイテンシ(遅延)は、3x利用時は、Rev.Aと比べて50%に削減されている。
今回のデモでは、Rev.B対応のチップセットがまだ開発されていないため、Rev.A対応の試験端末を3台用意し、3xの環境を擬似的に構築した形で行なわれた。3xでの下りの通信速度は、3.1Mbps×3ということで最大9.3Mbpsとなっている。なお、利用する周波数幅は5MHz幅だ。
静止環境および移動環境でのデモが披露され、どちらもFTPでのデータ転送やHDサイズの動画ストリーミングで、通信速度やハンドオーバーの様子が紹介された。移動時の速度は明らかにされなかったが、同社では高速道路での実験も行なっており、その場合は最高65mph(時速で約100km/h)での通信に成功しているという。
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Rev.A端末3台を束ねて、擬似的にRev.B環境を構築
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静止環境でHDサイズの映像受信を行なったところ
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最初は、Rev.B対応の基地局から3xの電波をキャッチした状況での通信デモだったが、途中で基地局が切り替わると、1xの電波となった。スループットは落ちるが、映像は途切れることなく再生され、再び3xエリアに入ると、そのまま3xでの通信に切り替わった。説明を行なった担当者は、「レイテンシが低減されたことで、Webブラウジングもよりスピーディに利用できる。たとえば、端末側からサーバーへのリクエストも3波に分けて送信される。仮に、そのうち1波が届かなくても、再送信するなどの手段で補っている。たとえば東京のような大都市圏では、基地局が密集しており、既に3波が被っているエリアがあるだろう。そういった地域にRev.Bは最適」と語っていた。
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HDサイズの映像受信とFTPを同時に実施。環境が良ければ、理論値の9.1Mbpsに近い数値になる
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基地局が切り替わって1x状態になったところ
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3x状態でも環境が変われば、下り3.68Mbpsと、速度は落ちる。なお、この速度は1基地局あたりのセクタースループット
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Rev.AとRev.Bの比較
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■ UMB
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UMBの移動デモに用いた自動車
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UMBは、その規格上、下り288Mbps、上り75Mbpsという通信速度を実現できる方式。ただ、この数値は20MHz幅という広帯域で行なう場合で、UMBそのものは1.25MHz幅から利用することができる。また、CDMA2000方式を採用する世界各国での実情を踏まえ、450MHz~3.9GHzと、幅広い周波数帯で利用できるようになっている。このほか、MIMO、SDMA、ビームフォーミングといった技術を取り入れていることも特徴とされる。
レイテンシは、Rev.B方式が30ミリ秒であるのに対して、UMBは約16ミリ秒になる。端末向けチップのMDM8900は、2008年第1四半期に出荷される予定で、下り最大40Mbpsという通信速度を実現できる。
またクアルコムでは、WiMAXと比較した場合、WiMAXは基地局の収容数が最適化されておらず、ハンドオーバーについても厳しい点があると指摘。これまで、クアルコム側からWiMAX側に、それらの性能について尋ねても、明確な回答は返ってきていないという。
UMBは下位互換性がない技術になるが、同社では「Rev.Bは既存事業者が導入しやすい通信方式。幅広い周波数が得られる場合は、UMBは強力なオプションたり得る。そういった面から、Rev.BとUMBは共存できる。また、W-CDMA方式と比べると、CDMA2000(3GPP2)は技術開発が常に先んじており、市場へ導入できる時期が非常に早い。それが事業者にとってメリットと言える点ではないか」としている。
デモでは、移動する自動車内において、ノートパソコン上でHTTPやFTP、HDサイズの動画のリアルタイムストリーミング、Ping、テレビ電話などのアプリケーションを同時に動作させて、UMBの能力を示した。リアルタイム性が求められるテレビ電話は優先度が高く、FTPなどは優先度が低く設定され、移動によって速度が落ちると、優先度が低いアプリケーションの通信速度が抑えられ、優先度が高いアプリケーションがスムーズに利用できるようになっていた。UMBでは、16QAMやQPSKなどの変調方式を用いているが、移動による通信環境の変化にあわせ、変調方式も変えているという。
デモで走行したルート上には、基地局が3カ所設けられているが、ハンドオーバーもスムーズに切り替わっていた。
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同時に10種類以上のアプリケーションを動作させた
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左上がアプリケーションごとに色分けした、通信速度。右下は移動ルート
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UMBの特徴
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WiMAXとの比較
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■ MediaFLOのオペレーションセンターも披露
このほか同社では、あわせて3月から米国で商用サービスがスタートした、携帯向け放送「MediaFLO」のオペレーションセンターも報道陣向けに公開した。今回で3回目、商用サービスがスタートしてからは2回目の公開となるが、あらためて、安定した映像配信に向け、MediaFLOのシステム側が用意した管理システムの説明が行なわれた。また、コンテンツホルダーなどと同センターを結ぶ衛星通信用アンテナも公開された。
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オペレーションセンターの外観
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監視室
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全米の設備をモニタリング
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外には、受信用アンテナ(画面奥)と衛星送信用アンテナ(画面手前)が2基ずつ設置されている
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■ URL
BREW 2007 CONFERENCE
http://brew.qualcomm.com/brew/brew_2007/
(関口 聖)
2007/06/21 20:07
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