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【WILLCOM FORUM & EXPO 2007】
近氏、次世代PHSの強みをアピール
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近氏
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PHS誕生に繋がる考え方がマイクロセル実現の基礎になった
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「PHS beyond 3G」と題し、執行役員 副社長の近義起氏が行なった講演では、ウィルコムの定額サービスを実現した技術的な背景や、今後の通信技術について紹介された。
昨年10月の副社長就任までCTOを務めていた近氏は、「もともとPHSは、“将来、1人1台という時代”が訪れたときに周波数の逼迫、固定網との融合の必要性という2つの懸念材料を払拭するために設計された。同様の考えに基づく通信技術は欧州・米国にもあったが、欧州版はコードレス電話やローカルサービスとしてまだあるものの、米国版は商用化されなかった」とまずPHSの歴史を振り返る。結局は「固定との融合サービスが花開くことなかった」(近氏)が、この設計思想は自宅でも外出時でも利用できるという形にするため、どこに親機があっても良いような規格になり、ウィルコムのマイクロセル実現の基礎になったという。
これまでの携帯電話の場合、基地局の配置は、周囲の基地局との干渉などの調整が必要で、無計画な設置はできない。しかし、現実的にはビルオーナーから基地局設置を拒否されたりするなど、六角形が並ぶような理想的なエリア設計は難しいという。親機がどこでも良いというポリシーは、つまり子機であるPHSが接続する基地局(親機)がどう配置されても干渉が起きにくく、低出力なPHSの面的カバーを数で補う際に役立ったという側面がある。
近氏は「無線ブロードバンド技術はいろいろと検討されているが、この基地局設計の部分が重要視される傾向が少ない。本当の無線ブロードバンドは基地局設計フリーで、過密な配置ができるかどうか、という点が成功のポイントになると実感している」と、過去の経験を踏まえた意見を示した。
全国で16万局というウィルコムの基地局は、人口カバー率が99%に達しているが、近氏は「開業から12年かけてやっと99%。課題はやはりエリア展開に時間がかかること。都市部では使いやすいと言ってもらえることもあるが、まだ携帯電話より広いエリアとは言えない。現在もエリアについてはネガティブなイメージで語られることがあると思っている」とも述べた。
■ ネットワークの進化
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PHSのロードマップ
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近氏は、今後のウィルコムのネットワークがどう進化するのかという点について、「現在、基地局のIP化を進めている。W-OAM typeGを開始したが、今年度中に最大800kbpsを実現できるが、現状はまだ512kbps。これは、一部の基地局とバックボーンを結ぶラインがISDN網になっているため。ISDN4本使って500kbpsを実現できるが、今年度より光ファイバーへの置き換えを進める。ISDNから光ファイバーへ置き換えれば、コストダウンと遅延改善が進む。無線部に比べ、バックボーンは一足先にNGN化すると言える」と説明した。
また音声品質について「音声のハーフレート化を検討している。規格上はクォーターレートも実現できる。これが実現できれば、1チャネルあたりの単価が半分になり、空いた容量はデータ通信にまわせる」と述べた。
IP化の進展にあわせて、2009年頃には制御系にもNGN相当のIMSを導入し、同時期に無線部に次世代PHSを導入することが同社のロードマップとして掲げられているという。
こうしたIP化がもたらすものとして、近氏は「かつて固定電話は、インフラも電話機も音声通話サービスも全て一事業者が提供していた。しかしIP技術が導入されるとインフラとインターネットサービスの提供者は別々になり、分離していった。ワイヤレスでもIP化が進めば、同じことが起きる。それがオペレーターにとって良いことかどうか不明だが、そこに飛び込んでいくのも1つの生き方だと我々は思っており、前向きに進めてきたつもり。“Everything over IP”と言われることもあるが、当社は、さらに“IP Over PHS”と呼ばれるようにしていきたい」と意欲を見せた。
■ 次世代PHSの特徴とは
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携帯の進化によるモビリティと速度の関係を示した図
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「容量」という軸を加えた図
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携帯電話の世界では、3.5G、3.9Gとも呼ばれる通信方式の導入・研究開発が進められている。一方、ウィルコムでは次世代PHSの開発を行なっているが、どのような違いがあるのか。
近氏は、まず固定通信の利用動向を示し、「ADSLや光ファイバーといった有線ブロードバンドでは、月間5~10GBほどダウンロードすると言われている。ちなみに、ウィルコムのサービスでは、408kbpsの利用者は月間1GB程度で、256kbpsだと500MB程度。つまり速度が倍になると、トラフィックも倍になる」と述べ、通信速度とユーザーのネット利用傾向には、因果関係があるとした。
同氏は「音声通話を見た場合、携帯電話ユーザーは月間で2時間程度の利用だが、携帯のコーデックは8kbpsほど。iモードのような通信サービスでのトラフィック量は月間10MBくらいではないか。ユーザーニーズと比べると、同じ料金で100倍の性能を実現しなければならないことになる」と述べた後、3Gから3.5G、3.9Gへ携帯電話が進化することでモビリティ(携帯性)と通信速度の関係を示した図を紹介した。
それによれば、3.5Gまで携帯電話はモビリティを備えつつ、通信速度も高速なシステム。しかしその後は、「モビリティは落ちるが高速なシステム」「モビリティはあるが、スピードはそこそこ」という2つの流れに分かれる。近氏は「この組み合わせでのシステムは。全国ではなく、まずは都市圏中心に展開していくのだろう。要するに技術的な限界を示すもの。本当に4Gへ進化するというのならば、モビリティも高速性も備えたまま進化すべき。最高速度は速いかもしれないが、容量が足りないということだ」と説明した。
先に出した図は、縦軸がモビリティ、横軸が通信速度という2次元の図だったが、ここで近氏は容量という軸を追加し、3次元で表現した図を示す。同氏は「現在のPHSは速度やモビリティはそこそこだが、容量は携帯電話を遙かに上回る。大容量でなければブロードバンドとは言えない。次世代PHSではモビリティを確保しながら、高速かつ大容量を実現できる。(次世代PHSに)周波数は割り当てられていないが、ここにきて、ようやく16万局開設した甲斐があった、我々の時代がついに来たのかなと勝手に思っている」と今後の展開に自信を見せた。
最後に同氏は「4月8日、次世代PHSはITUでブロードバンド技術のリコメンデーションの1つとして、勧告をもらった。このシステムを担いで世界に伸ばしていく足がかりができたと思っているし。PHSに最適なチューニングが図られていると考えており。中国やタイ、台湾などで実際に使ってもらえればと思う。その日を夢見て、粛々と技術開発を進めている」と述べ、講演を終えた。
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「不都合な真実」として示された図
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次世代PHSの技術概要
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■ URL
WILLCOM FORUM & EXPO 2007
http://www.willcom-forum.jp/
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(関口 聖)
2007/04/12 21:42
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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