CES会場では、PDA関連の展示も目立っていた。米国では、Palm OS搭載マシンのシェアが高いが、会場ではそれ以外にもユニークな製品が見られた。そこで、Palm OS搭載PDAとそれ以外のPDAの2つに分けて、紹介していくことにしたい。まずは、Palm OS非搭載機編である。
■ Windows CE搭載PDAとケータイを一体化したPC-EPHONE
今回のCES会場で展示されていたPDAの中でも、異彩を放っていたのが、Futurecom Global社が展示していたWindows CE搭載PDA一体型PC-EPHONEである。PC-EPHONEは、2000年11月に開催されたCOMDEX/Fall 2000でも出展され、c|netとzdnetのエディターが選出するThe Best of COMDEX/Fall 2000のWireless/Mobile部門で、Finalist(最終選考)に残った製品だという(筆者はCOMDEX/Fall 2000に行ってないので、実物を目にするのは初めてである)。
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Futurecom Global社のPDA一体型ケータイPC-EPHONE。Windows CEを搭載しており、256色表示可能な4インチTFT液晶(VGA)を装備している。本体のサイズは、PDAとしてはともかく、ケータイとしてはかなり大きい
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スタイラスはハンドセット(受話器)としての機能も兼ねており、ダイヤル用のボタンも装備している
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PC-EPHONEは、VGA表示可能な4インチTFT液晶を装備したタブレット型PDAで、OSとしてWindows CEを搭載している。もちろん、Windows CEの標準アプリケーションであるPocket WordやInternet Explorer、Adderess、Scheduleなどを利用することが可能だ。コンセプト的にはKyocera WiressのSmartphoneに似ているが、Smartphoneは形状が通常のケータイに近く、ケータイにPDA機能を一体化していたのに対し、こちらはタブレット型PDAにケータイの機能を一体化したという印象を受ける。PC-EPHONEは、Bluetoothに対応しており、スタイラス兼ハンドセット(受話器)との間をBluetooth経由でワイヤレスで接続して利用できることも特徴だ。CFスロットも装備しており、機能拡張も可能である。
ケータイの方式としては、CDMA、GSM、PCS、AMPSのそれぞれに対応した製品が登場する予定で、米国内での出荷開始は2001年3月、価格は700~900ドル程度になるとのことだ。本体のサイズはやや大きいがスタイラス部分だけで通話ができるので、本体をカバンにいれたままスタイラス部分を胸ポケットに入れておくなどすれば、スマートに使えるだろう。
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クレイドルに載せて、バッテリの充電とPCとのデータリンクがおこなえる
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PC-EPHONE本体とスタイラスの間は、Bluetoothで結ばれ無線で音声データが転送される
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■ セイコーインスツルメンツの腕時計型PDAが初登場
SII(セイコーインスツルメンツ)のブースで展示されていた腕時計型PDA「Wrist Companion」にも注目が集まっていた。展示されていたのはプロトタイプ(試作品)であり、そのままの形で製品化されるわけではないが、モックアップではなく、ワーキングサンプルとして実際に動作するという。
今回展示されていたプロトタイプは、CPUとして32bit RISCチップを採用し、2MbitのSRAMと16Mbitのフラッシュメモリを内蔵している。液晶パネルの解像度は128×92ドットで、モノクロ4階調である。Bluetoothに対応し、WAP browserも装備している。Bluetooth対応ケータイと組み合わせることで、Wrist Companionからのダイヤルや通話が可能になる(メールなどの送受信も可能)。また、ケータイだけでなく、Bluetoothに対応したCD/MP3プレイヤー、ビデオデッキなどをコントロールすることが可能だ。PIM機能やゲーム機能なども内蔵しており、ソフトウェアも自由にインストールすることができる。今回展示されていたプロトタイプと同程度の機能を持つ製品に関しては、2001年中にも何らかの形で製品として発表したいとのことであった。その場合の価格は数万円程度になりそうだ。
また、2003年頃や2005年頃を目標としたコンセプトモデルも展示されていた。2003年頃に登場が想定される製品では、ケータイの機能も内蔵し、単独でケータイとしても機能するようになるとのことだ。2005年頃に登場が想定されている製品は、要素技術の進歩により、さらに薄く軽くなっている。セイコーでは、Wrist CompanionをWearable Pesonal Gatewayとして位置付けていきたいとのことである。つまり、腕時計がさまざまな機器を制御したり、データを閲覧したりするための窓口となるわけだ。「我々はずっと腕時計をやってきましたからね。左腕を他(ケータイなどのメーカー)に渡すわけにはいきませんよ」という担当者のコメントが印象的であった。
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SII(セイコーインスツルメンツ)ブースで展示されていたWrist Comapnionのプロトタイプ(試作品)。手を触れることはできなかったが、ワーキングサンプルで実際に動作するとのこと
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Bluetoothに対応しており、Bluetooth対応ケータイと組み合わせることで、Wrist Companionからの通話が可能になる
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こちらは将来のコンセプトモデルで、2003年頃の登場を想定しているとのことだ。このモデルでは、ケータイとしての機能を内蔵し、単体で通話も可能になるという
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さらに将来のコンセプトモデル。2005年頃の登場を想定。2003年頃登場予定のコンセプトモデルに比べて、厚みが薄くなり、さらに自然な形状になっている
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一番奥が、現行のワーキングサンプル、真ん中が2003年頃の想定モデル、手前が2005年頃の想定モデル。厚みが薄くなっていっていることがわかる
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現行のワーキングサンプルは、かなり厚みがある
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■ GPS内蔵PDAや電子ブックとしても利用できる低価格PDAが登場
その他、会場で目に付いたPDAとしては、韓国JTEL CoporationのCellvicシリーズが挙げられる。Cellvicは独自のCellvic OSを採用したPDAで、初代Cellvicはすでに韓国で販売されているが、今後投入予定の新製品がいくつか出展されていた。Cellvic GPSは、GPS受信機を内蔵していることが特徴である。韓国のビットマップの地図データを内蔵するほか、マルチメディアカードで供給されるベクトルベースの地図データを利用することもできる。韓国では2001年2月に250ドル程度で発売され、日本では2001年秋を目処に日本語版の投入を予定しているとのことだ。また、VisorのSpringboardモジュールのような拡張モジュールを装着できるCellvic XGも展示されていた。
また、電子手帳(Electronics Organizer)などのメーカーとして有名なFlanklin Electronic Publisherのブースでは、電子ブック(eBook)リーダーとしても利用できる低価格PDA「eBookMan」が展示されていた。eBookManは、240×200ドットの液晶パネル(モノクロ4階調)を備えたPDAで、本格的なPIM機能はもちろん、音声の録音再生機能(MP3の再生も可能)なども装備している。eBookManシリーズには、内蔵メモリが8MBで、バックライトなしのEBM-900、内蔵メモリ8MBで、バックライト付きのEBM-901、内蔵メモリ16MBで、バックライト付きのEBM-911という3つのモデルがあり、価格はそれぞれ129.95ドル、179.95ドル、229.95ドルの予定だという。マルチメディアカードでメモリを増設できるほか、PCとUSBでリンクして、データシンクロなども行なえる。日本での発売予定はないようだが、コストパフォーマンス的には優秀な製品だ。なお、米国での発売は2001年2月の予定である。
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GPS受信機を内蔵したCellvic GPS。サイズはPalm OS搭載マシンと同程度である
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独自の拡張スロットを装備したCellvic XG
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手前にある2つのモジュールがCellvic XG用拡張モジュール。BluetoothモジュールやCDMAモジュール、デジカメモジュールなどの登場が予定されている
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韓国ではすでに発売されている小型モデルCellvic i。手のひらに収まるサイズだが、ケータイに繋いでメールの送受信やWebブラウズなどが可能だ
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Cellvic OSの各国語へのローカライズも進んでいるようで、日本語版の完成度は80%といっていた
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Flanklin Electronic PublishersのeBookMan。Palm OS搭載マシンに比べると、液晶の解像度は約1.87倍である
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側面にはジョグダイヤルを装備しているので、文書を読む場合なども片手でスクロールできて快適だ
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液晶の解像度が欧米向けの製品としては比較的高いので、画面に一度に表示できる情報量は多い
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■ Windows CE搭載Pocket PCやLinux搭載PDAなども
Palm OS陣営にやや押されている感はあるが、カシオブースでは、積極的にWindows CE搭載Pocket PCを展示していた。EG-800は、防沫(水しぶきがかかっても大丈夫)仕様のPocket PCで、日本国内ではNTTドコモから発売されているGFORTに相当する製品である。EM-500は、日本国内ではE-700として販売されているモデルに相当するが、日本よりもカラーバリエーションが豊富に用意されている。
その他、業務用途向けのテンキー付きPocket PC「IT-700」(国内ではDT-5000に相当)なども展示されていた。
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防沫仕様で衝撃にも強いEG-800。オプションでCFスロットに装着するワイヤレスモデム(CDPD方式)も用意されている
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E-700相当の製品だが、レッドモデルは日本国内では発売されていない
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全部で5色のボディカラーが用意されている
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業務用途向けのテンキー付きPocket PC「IT-700」
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Microsoftのブースでは、COMPAQのPocket PCであるiPAQ H3600(日本では未発売)も展示されていた。ビル・ゲイツが基調講演でPocket PCが進化したものとして示したPocket PC Plus(音声認識機能などを実現)も、iPAQをベースにしたものであった。
また、Agenda Computingのブースでは、COMDEX/Fall 2000でも展示されていたLinuxベースのPDA「Agenda VR3」を出展していた。現在、開発者向けバージョン(Developer Edition)はすでに出荷を開始しており、一般向けバージョン(Consumer Edition)に関しては2001年3月の出荷を予定しているとのことだ(予価199ドル)。
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COMPAQのPocket PC「iPAQ H3600」。なかなかスタイリッシュである
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Linux搭載PDA「Agenda VR3」。MIPS系CPUを搭載とのことだが、展示されていたバージョンでは、アプリケーションの呼び出しにやや時間がかかるという印象をうけた
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フタを閉じたところ。右下にLinuxのマスコットであるペンギンの絵がある。Developer Editionの文字にも注目
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本体のサイズは約11×7.6×2cm。液晶の解像度は160×240ドットで、Palm OS搭載マシンより縦方向の解像度が高い
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■ URL
2001 International CES
http://www.cesweb.org/
2001/01/12 17:00
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