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【WIRELESS JAPAN 2006】
ウィルコム河合氏、次世代PHS技術の優位性をアピール
ウィルコムの企画開発部 部長の河合 浩氏
WIRELESS JAPAN 2006の「4Gと将来NW構想フォーラム~総務省/キャリアの戦略と要素技術解説~」と題されたコンファレンスで、ウィルコムの企画開発部 部長の河合 浩氏は、「OFDMA次世代PHSシステムの展望」と題した講演を行ない、次世代PHSの技術概要を解説した。
まず最初に河合氏は、次世代PHSを概要を説明する。次世代PHSでは通信速度が3Gを上回る20Mbpsを目指していて、それでいて現行のPHSと共存するよう、基本的な部分を共通としている。また、「マイクロセル」や「自律分散型システム」といった現行PHSの特徴も継承しつつ、一部すでに導入されているスマートアンテナ技術を活用する。
次世代移動通信システムに向け、高速化が求められる中で、河合氏は周波数効率の限界について指摘する。周波数利用効率とは、帯域幅1Hzあたり何bpsの速度が得られるかを示すもので、数字が大きいほど、周波数を効率的に利用していることになる。周波数は有限な資源のようなもので、その有効活用が今後必須になるとされているが、周波数利用効率は、物理的に「シャノン限界」と呼ばれる限界が存在している。
次世代PHSの特徴
さまざまな携帯電話方式における周波数利用効率
そのような限界がある中で、通信の容量を上げる手段として、河合氏は「空間多重(SDMA)」と「マイクロセル」の2つの技術を挙げる。さらにこれら2つの技術を持つPHSを、3Gや4G、WiMAXといった技術と比較してみせる。普通、移動通信システムを比較する場合、「移動速度」と「通信速度」の2つの軸を取った2次元のダイヤグラムで比較することが多い。しかしウィルコムの場合、3つ目の軸に「容量」を取って比較する。
周波数を有効活用するための最新の手法の1つである空間多重
ウィルコムでは通信方式の比較に、「容量」という指標も加える
マイクロセルネットワーク型であるPHSの場合、マクロセルの携帯電話に比べ、面積あたりの容量が大きいことがメリットとなる。たとえば10mおきに並んだ人が同時に通信をする場合、半径1kmをカバーするマクロセルだと、1つの基地局に200人が接続する。しかし半径20mをカバーするマイクロセルだと、1つの基地局に4人しか接続しない。河合氏は「1ユーザーあたりの速度を最大化させるのがマイクロセルの特徴。マクロセルだと1ユーザーあたりの速度が下がりがちの傾向がある」とし、携帯電話に対するPHSのメリットをアピールする。
一方で河合氏は、マイクロセルの欠点についても、「マイクロセルの場合、たくさんの基地局が必要になるので、ネットワークの構築に時間がかかる。ウィルコム(DDIポケット)は人口カバー率を99%にするまで、10年かかった。携帯電話は3年くらいで人口カバー率を99%にすることができる」と指摘する。しかし「ウィルコムは10年かけてマイクロセルネットワークを構築できた」とし、エリアの拡充が難しいという欠点が、ほとんど過去の問題であると語る。ネットワークを更新することについても、「普通、基地局を新しく建てるには、地権者との交渉に3ヶ月くらいかかり、合計で半年くらいかかる。しかし一度設置した基地局を交換するのならば、1週間くらいで済む。ウィルコムは、すでに構築した基地局ネットワークという財産を使い、次世代PHSに関しては非常に素早くエリアを広げることができる」とし、次世代エリアの拡充が困難ではないという考えを示す。
マイクロセルとマクロセルの違い
マイクロセルでは、複数のユーザーが集中しても1人あたりのスループットが低下しにくい
マイクロセルのPHSでは、エリアを拡充するのに時間がかかった
赤点がマイクロセルの基地局(あまりに多すぎて点に見えないが)。マクロセルの基地局は黄色い格子に1つあれば済む
また河合氏は、「アダプティブアレイ技術」についても解説する。アダプティブアレイとは、基地局からの電波に指向性を持たせ、必要な方向にのみ飛ばすというもの。通常の基地局の場合、全方向に同じ電波を飛ばしていたため、隣接する基地局と同じ周波数を使ったとき、干渉を起こしやすいという欠点があった。しかしウィルコムのPHSではアダプティブアレイを2001年から導入していて、そういった干渉を減らし、より周波数を有効に利用できている。さらにこのアダプティブアレイ技術を改良し、同じ基地局が発する同じ周波数の電波を、発信する方向を分けることで、複数の移動機相手に使い分ける「空間多重」も実現しているという。
アダプティブアレイ技術と、その改良とも言える空間多重技術で周波数を有効活用できる
アダプティブアレイにより、干渉回避機能が起動せずに済むようになっている
基地局の同期についても、GPSを使うなどウィルコムが蓄積したノウハウが使われている
バックボーンのIP化など、さまざまな面で改良が行なわれ続けている
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高度化PHSと次世代PHS
河合氏は今後のPHSについて、まず高度化PHSについて説明する。高度化PHSとは、現在のPHSに改良仕様を加えて通信速度を向上させるというもの。具体的には、より高度な変調方式を仕様に加え、最適な変調方式に自動的に切り替える「W-OAM」という仕組みを利用するというものだ。電波環境の良い場所では、より高速な変調方式を用い、電波環境が悪い場所では、より安定する変調方式に切り替える。
変調方式としては、まず従来のQPSKに加えて、約1.5倍の通信速度になる8PSKというものが導入される。すでにQPSKと8PSKの両方に対応したW-OAM端末はデータカード型端末で提供されている。今後はさらに高速な変調方式である16QAMや64QAM、QPSKよりも安定するBPSKを追加していく予定だという。その一方で、マルチRF化も進め、現在の8Xから12X、16Xといった方向にも進化する。河合氏は、「今年度末くらいには、800kbps程度のサービスを提供した」とし、さらなる高速化を予定していることを明らかにした。
一方、W-OAMに対応したW-SIMについて河合氏は、具体的な登場時期には言及しなかったが、「今年末くらいには準備ができる、とイメージしてもらいたい」と語った。
高度化PHSで使われる変調方式の種類と通信速度
変調方式をダイナミックに切り替える「W-OAM」
こうした現在のPHSを高度化する一方で、新しい通信方式といえる次世代PHSの導入も予定している。次世代PHSではアクセス方式や周波数幅が変わるなど、現在のPHSとはだいぶ変わってくるが、一方で従来のPHSと両対応の端末を作りやすいようにも工夫されているという。
次世代PHS規格の仕様案
次世代PHSは高度化PHS技術の上に作られる
次世代PHSと他システムとの比較
バックボーンのオールIP化なども併せて改良される
次世代PHSについては、2006年の1月に第1次の実験が行なわれている。この実験について河合氏は「OFDMの伝送実験をやるのが目的だった」とし、「今年の夏に予定している第2次実験では、現在決まっている規格そのものを使い、2.5GHz帯で実験を行なう」とし、実験がより実際の技術に近づいてきていることを明らかにした。
次世代PHSの実験機
次世代PHSの実験スケジュール
河合氏はPHSの標準化について、標準化団体のPHS MOUで行なわれていると語る。国際的にいうと、中国が1億人と、もっともPHS利用者が多いが、現状では音声とSMSが主体で、データ通信はあまり活用されていない。しかし河合氏は「最近の国際会議で話を聞いたが、中国ではいまは音声中心でも、3Gが始まれば、いまのPHSでは先が見えない。なんとか次世代PHSで将来を築いて欲しい、といってくる。われわれとして、中国のPHSが音声通話や安いことだけでなくなることはありがたい。そういった中国などを意識して、次世代PHSを開発したい」とし、次世代PHSが国際的にも注目されていることをアピールした。
次世代PHSでは、WiMAX以上の速度とエリアを目指す
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URL
ウィルコム
http://www.willcom-inc.com/
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