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日本エリクソン マーケティング/カスタマー・ソリューション本部 コア・ネットワーク技術部長の本多 美雄氏
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WIRELESS JAPAN 2006の「次世代移動通信世界会議」というコンファレンスで、日本エリクソン マーケティング/カスタマー・ソリューション本部 コア・ネットワーク技術部長の本多 美雄氏は、「Harmonisation of spectrum and open global standards」と題した講演を行ない、国際電気通信連合(ITU)による次世代携帯電話への取り組みを解説した。
なお、同講演は元々、ITUのRadiocommunication Sector Vice-Chairman、Working Party 8F(WP8F)のHakan. OHLSEN氏が行なう予定だったもの。本多氏はその代理で、プレゼンテーション資料はすべて英文となっている。
本多氏はまず、ケータイマーケットの将来について、「現状、世界で22億の加入者がいるが、いまでも成長が著しい。2007年の終わりには30億くらいになると予測している。エリクソンの社内的な予想としては、今後はW-CDMA+GSMの加入者の割合が増えていくと見ている」と分析する。
3Gケータイについては、「現在、全世界で1億人くらいの加入者がいる。そのうちW-CDMAは7,800万。日本ではW-CDMAが3,500万くらい、CDMA2000が2,300万くらいなので、世界の3Gの半分以上は日本ということになる。これは日本での3Gの立ち上がりが早かったため。現在では海外でもW-CDMAの加入者が伸びているので、今後は日本が大半を占めるという状況ではなくなるだろう」とし、今後は世界全体で3Gが伸びるとの考えを示した。
本多氏は、ケータイ向けテレビの将来についても言及する。「これもエリクソンで予想したものだが」と前置きしつつ、「今後、W-CDMAをベースとしたブロードキャストやマルチキャスト機能を持った端末がでてくる。標準化は3GPPである程度やっているが、2008年くらいから登場するだろう。デジタルテレビ放送のDVB-Hの端末もある程度は普及するだろうけど、ハードウェアを新たに開発する必要がない、W-CDMAのインターフェイスを使ったサービスが普及すると予測している」として、放送ではなく、通信ベースのマルチメディア配信システム(MBMS)が普及するとの考えを示した。
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方式別のケータイ利用者数の予測
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モバイル向けテレビに対する予想
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■ 増加するトラフィックに対応するため、まず標準化団体が4Gの周波数を決める
本多氏は、今後ケータイの加入者数が増加するとともに、トラフィックの中身も、データ通信が年率11%程度の速度で増えていくと予想する。こうしたことを背景として、「無線インターフェイスを見ると、新しい周波数が必要となる。ITUとしては、2007年に行なう会議のWRC-07で、次世代システム(IMT-Advanced、いわゆる4G)に対する周波数割り当てを行なう」と語った。
周波数割り当ての重要性について本多氏は、これまでのケータイ技術の進化を例に挙げて説明する。「アナログ通信だった第1世代は、国際的に共通化されていなくて、国ごとに開発していた。第2世代でデジタル化すると、GSMが欧州から世界のスタンダードになった。これが、GSMケータイにおける国際ローミングや端末の量産化などに貢献できた。第3世代では、最初からグローバルにあわせていきましょう、という考えに基づき、IMT-2000で標準化を行なった」と3Gまでの経緯を語る。さらにITUの役割については「ITUではWRC-92で全世界共通化の周波数をIMT-2000に割り当てた。完全にグローバルなものではないが、ほぼグローバルに割り当てられた周波数を使っている。いまのところ3Gは成功を収めているが、その成功の一因は、周波数をグローバルに割り当てられたことだと思っている」とし、周波数割り当ての重要性を訴えた。
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今後のトラフィックの予測
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世代別のケータイ通信方式の概要
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本多氏は、共通化された周波数を使うことのメリットについて、「端末メーカーにすると、どの国でも同じ周波数なら端末を作りやすく、マーケットも大きくなる。周波数を先に決めれば、キャリアもベンダーも協力して、周波数にあったものを作るなど、早くから動くことができる。ユーザーの観点からしても、国際ローミングが使いやすくなる。端末の調達価格が安くなるというメリットもある」と述べた。
一方で、ITUには強制力がないとも説明する。「ITUのようなところで、IMT-Advancedをこうやって使おう、と提案しても、欧米ではマーケットに任せた方がよいのではないか、という議論がある。マーケットでいろいろなシステムが登場するので、その中から需要があるシステムに周波数を割り当てよう、という議論だ。私たちはそうではなく、ITUなどの国際機関で、この周波数を使いましょう、と決めるほうがよいと考えている。国がマーケットベースでやると決めれば、ITUがどう決めようと関係ないが、それでも先にITUが周波数の使い方を決めるのが大事だと考えている」とし、ITUが決めることの重要性を語った。
本多氏は、具体的なケータイの今後の進化についても言及する。「3GPPのW-CDMAがあり、今後はHSDPAがでてくる。さらにアップリンクの強化版も登場する。その次にはMIMOのような技術を使ったものが登場するだろう。標準化機関の3GPPではこういった、現在の周波数の中で、どうやって3Gを進化させていくかを議論している。W-CDMAならば、当面、たくさんの周波数を必要とするわけではない。しかし、トラフィックが増えれば、新しい通信方式と、新しい周波数が必要になってくる。日本では少し早いかも知れないが、2014年くらいのタイミングで現在の周波数では足りなくなるだろうと考えられていて、そのためにIMT-Advancedなどが検討されている」と語った。
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3Gの今後の進化について
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通信方式の今後を語る上でしばしば引用される「バン・ダイアグラム」
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現在の周波数帯にIMT-Advancedを導入するのは不可能
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WP8FがIMT-Advancedの候補として挙げる周波数帯
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IMT-Advancedの開発について本多氏は、「3Gの例から、国際的な協力開発が不可欠」と持論を述べる。本多氏は、「オープンに開発すれば、いろいろな技術をいろいろなベンダーが提供できる。そうすれば、サービスや端末にバラエティがでて、経済スケールも大きくなる。3GPPでも同じだが、いろいろな人が提案すれば、よいものができる。実際にどの標準化団体が行なうか決まっていないが、エリクソンとしてはオープンでグローバルにやって欲しいと考えている」と述べ、開かれた標準化作業の必要性を強調した。
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オープンな標準化に関わる団体
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ITUによるIMT-Advancedの標準化スケジュール
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■ URL
ITU(英文)
http://www.itu.int/
日本エリクソン
http://www.ericsson.co.jp/
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