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ウィルコムの執行役員 経営企画本部長の喜久川 政樹氏
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WIRELESS JAPAN 2006の2日目(7月20日)に、「ウィルコムDAY」と題されたビジネスコンファレンスが行なわれた。その中でウィルコムの執行役員 経営企画本部長の喜久川 政樹氏は、「ウィルコムのマーケティング戦略」と題した講演を行ない、同社のこれまでの販売戦略やW-SIMを使った「マイクロマーケティング」について解説した。
まず喜久川氏は、ウィルコム(当時はDDIポケット)がサービスを開始した当初を振り返り、「音は良いけど、それよりエリアが狭いよね、と音質は評価されなかった。その後データ通信にシフトして、音質の良さは忘れ去られた」とし、PHSの特徴が生かしきれていなかったことを明かす。しかし「携帯電話と通話すると音質の良さがわからなくなるが、ウィルコム端末同士の通話が多くなる音声定額導入により、音質の良さが再評価されるようになった」とも語り、PHSの特徴が活用できる土壌が整っていつつあることをアピールする。
音声定額については、2005年5月にサービスを開始して以来、130万人が利用していることを明かす。このようにユーザー数が増えた背景として喜久川氏は、定額で音声通話するために、友人同士で加入し、さらにその友人も加入するという、口コミ的な効果を指摘する。こうした口コミ効果は個人だけでなく、法人にもあるという。
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ウィルコムに対するイメージ。音質について再評価されている
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定額制の利用実績
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また、喜久川氏は「口コミという点では面白いデータがある」として、同社のウェブサイトに、どこのサイトのリンクから来るかを分析したデータを示す。データによると、上位3位はYahoo!やGoogleなどの検索サイトで、4位に本誌と続いているが、5位にSNSサービスのmixiが入り、そのほかにも上位10位にユーザーが作ったファンサイトが入っているという。喜久川氏は「もっとIT情報サイトが多いと思ったが、そうでもない」とし、ユーザーが発信する情報がマーケティングに大きく寄与している現状を紹介した。
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口コミによる定額利用者の拡大
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参考として示された、公式サイトへの訪問ルート
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■ 「マイクロマーケティング」を実現するW-SIM
喜久川氏は、ウィルコムが製品を展開するさまざまな方向性の中で、「マイクロマーケティング」というものについて説明する。
まず喜久川氏は、他社の携帯電話について、「携帯電話はマスマーケティングモデル。ワンセグなどの新しい機能を搭載し、ARPUの下落を抑えようとしている。しかし多数の機能を入れるので、端末開発費が膨大になっている。そうなると相当数の大量生産が必要になり、大きなマーケットをターゲットにするしかなくなる。その結果、過剰に機能が搭載される」と語る。
一方、ウィルコムの目指すマイクロマーケティングについては、喜久川氏はW-ZERO3を例に出し、「15万台だから、ケータイに比べると市場はミニマム。しかしパソコン向け機能を強化したWS004SHや、ケータイに寄ったW-ZERO3[es]など、小さなマーケットを指向して端末をカスタマイズして提供する」と説明する。さらにpapipoやnico.についても、「シンプルな通話に特化したプロダクト。これは数十万や百万のターゲットではないが、そこそこの数が出る。そういったターゲットに対しても端末を提供する」と語った。
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マスマーケティングとマイクロマーケティングの違い
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W-SIMにより実現した、マイクロマーケティングの端末
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マイクロマーケティングのイメージ
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マイクロマーケティングに必要とされるもの
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喜久川氏は、こうした小さなターゲットに向けて端末を作るためには、端末のカスタマイズの容易さやプラットフォームをオープンにすることが必要だと語る。「端末のプラットフォームをオープンにして、いろいろなパートナーがカスタマイズできるようにする。そのために、ハードウェア面ではW-SIMを導入した。W-SIMにより、これまで電話機を作ったことがないメーカーでもケータイを作れるようになった」とし、W-SIM導入の意図を説明する。さらにハードウェア以外にも、「ソフトウェア面では、W-ZERO3でオープンにアプリケーションを開発できるWindows Mobileを採用した。ビリング面でも、バンダイがウィルコムの決済環境を利用できるようにした」とし、さまざまな面でオープンに展開していることをアピールした。
実際のW-SIMによる効果として喜久川氏は、まずW-ZERO3を例に挙げる。喜久川氏は、「これはシャープのケータイ開発チームではなく、ザウルスのチームが作っている。通信機能部分はW-SIMに入っているので、あとはインターフェイスを作れば良い。そのため、W-ZERO3発売から6カ月で新モデルを作れた」と語る。さらに内藤証券の「Touchトレード」を例に挙げて、W-ZERO3自体がカスタマイズしやすい環境であることを強調した。
さらにバンダイのpapipoも例に挙げる。喜久川氏は、「バンダイには得意なカスタマー、つまり子どもがいる。バンダイとしては、W-SIMにより通信機器を販売するというビジネスモデルが作れたし、ウィルコムも通信を活用したコンテンツを提供できた。これもオープンなプラットフォームにより完成したモデルだ」と語った。
喜久川氏はまとめとして、「こういったソフトウェア・ハードウェアの両面でカスタマイズしやすい環境を整えるのが、ウィルコムのテーマである。カスタマイズしやすいプラットフォームをリリースすることで、いろいろなマーケットに進出する。一つ一つが小さなマーケットでもかまわない」と述べた。
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W-ZERO3[es]の例。短期間で開発できている
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細分化したニーズのマーケットを狙うW-ZERO3シリーズ
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papipoの例。料金回収プラットフォームもバンダイに解放している
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完成した端末をさらに小さなマーケットに向けてカスタマイズできる
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喜久川氏は最後に、MNPについても言及する。ウィルコムはいまのところMNPを開始する予定はないが、喜久川氏は逆に「MNPがないことを強みにする」と説明する。「MNPがないことを前提にビジネスモデルを作る。PHS事業者が撤退しているので、070番号はウィルコムだけになる。これにより、070なら定額だ、低電磁波だ、といえるようになる。そういった形でプロモーションして、ウィルコムを広げていきたい」と語り、ウィルコムの独自性を強化・追求していくことをアピールした。
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「MNPがないことが強み」と語る
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マイクロセルネットワークの独自性でマイクロマーケティングを推進し、さらなる進化を目指す
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■ URL
ウィルコム
http://www.willcom-inc.com/
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(白根 雅彦)
2006/07/21 11:56
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