「WIRELESS JAPAN 2006」のコンファレンスで19日、YOZAN代表取締役会長の高取直氏が「WiMAX/Wi-Fi ワイヤレスブロードバンドとしての無線通信」と題した講演を行なった。同社が構築している無線インターネットインフラやWiMAXフォーラムの最新情報などを紹介した。
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YOZAN代表取締役会長の高取直氏
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同社が構築しているWiMAXサービス
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現在YOZANは、4.9GHz帯のWiMAXを利用した法人向け無線ブロードバンド接続サービス「WiMAXダイレクト」や、WiMAXと2.4GHz帯のWi-Fiを組み合わせた個人向け公衆無線LANサービス「BitStand」を提供している。ただし、4.9GHz帯という高い周波数を用いているため、基地局と端末の間に障害物がある場合などに電波が届かないケースが出てくる。
そのため、YOZANでは「当時いろいろ言われたが確信犯として」(高取氏)ポケットベル事業を5年前に買収。電波が届かない地域には、280MHz帯のポケベル(ページャー)を利用した呼び出しシステムを構築し、WiMAXとポケベルを併用したワイヤレスブロードバンドサービスを提供している。
WiMAXの利用推進を図る業界団体「WiMAXフォーラム」では、2.5GHz帯、3.5GHz帯、5.8GHz帯を世界共通の電波割当としている。そのため、同社のWiMAXサービスで使用している4.9GHz帯は、WiMAXフォーラムでは推奨していなかった。しかし、高取氏によれば、米国のサンディエゴで7月11日から開催されていた同フォーラムでは、4.9GHz帯を今後協議の対象にすることが決定したという。
今回開催されたWiMAXフォーラムではこのほか、WiMAXの規格名称が統合されたことも注目すべきことだという。これまでWiMAXフォーラムでは、固定無線(FWA)系のWiMAXを「IEEE802.16d」、移動無線系のモバイルWiMAXを「IEEE802.16e」として区分していたが、今後は「IEEE802.16e-2005」にまとめられる。
ただし、IEEE802.16e-2005では、携帯電話に似たインフラでモバイル用途のWiMAX規格を策定する「MTG(モバイルタスクグループ)」と、発展型のFWAや屋内外問わず高速データ通信を行なう「ノマディック通信」のWiMAX規格を策定する「ETG(エボリューショナリタスクグループ)」という2つのタスクグループを設置する。4.9GHz帯の周波数を協議の対象にするのはETGである。
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「802.16e-2005」のタスクグループである「MTG」の代表的インフラ
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「802.16e-2005」のタスクグループである「ETG」の代表的インフラ
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■ WiMAXは「国際スタンダードであること」が最も重要
高取氏によれば、WiMAXで最も重要なことは「国際スタンダードであること」だ。例えば、日本では携帯電話は普及しているが、デジタル携帯電話の事実上の世界標準であるGSM方式の携帯電話は使えない。一方、WindowsやIntelを搭載するPCであれば、世界中で利用できる。PCと同じように、「世界で利用できる無線環境がWi-FiやWiMAX」(高取氏)という。
ネットワーク構成の潮流としては、Wi-Fiの無線が過密している部分は、相互ローミングするようになると予測する。高取氏によれば、新宿駅西口では少なくとも6、7社の電波を観測でき、各社の電波が干渉してサービスが停止することがあるという。今後は、過密部分は相互ローミングにより無線LANの干渉を避け、ユーザーの利便性を優先する時代が来るとした。
また、住宅地のネットワーク構成は、1本の光ファイバに接続された1つのWi-Fi無線機を親として、周辺のWi-Fi無線機を自動的にメッシュ化する一方で、郊外やデジタルデバイド地域では、1本の光ファイバに接続された1つのWiMAX無線機を親として、周辺のWiMAX/Wi-Fiコンバータによる無線メッシュを構築することになるとの考えを示した。
「あと5年もすれば、世界中の至るところでWi-Fiが利用可能になるほか、世界の主要都市に行けばWiMAXが使えるようになる。両者は、世界の先進都市はWiMAX、どこにいってもWi-Fiというように、いつまでも共存していくだろう」
今後の課題では、各社の無線網における総合的な課金手段を挙げる。その対策としては、携帯無線網ではGSM方式による課金、インターネット無線網ではポケベルの電波を使った課金が有効であるとの考えを披露した。
■ URL
WIRELESS JAPAN 2006
http://www.secretariat.ne.jp/wj2006/
YOZAN
http://www.yozan.co.jp/
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