「Wireless Japan 2006」のコンファレンスで19日、アイピーモバイルの杉村五男代表取締役社長が登壇し、同社が提供を予定しているTD-CDMA技術を利用したデータ通信サービスについての説明を行なった。
■ TD-CDMAはデータ通信向けの通信技術、将来的には100Mbps以上に
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アイピーモバイル
代表取締役社長
杉村五男氏
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杉村氏はまず、TD-CDMA技術の概要について解説した。TD-CDMAは、上りと下りの通信をミリ秒単位で切り替える時分割方式を利用した通信技術で、上下回線のリソースを柔軟に設定できる点が特徴であると説明。インターネットサービスでは、下り回線に割り当てるリソースを多くし、下り回線の通信速度を高速化するといった効率的な伝送が可能になり、将来的に上り回線の速度が必要なアプリケーションが普及した場合にも、簡単に対応できるとした。
また、TD-CDMAはパケットによるデータ通信での利用を基本としており、アイピーモバイルでは基地局までのすべてのネットワークをIPで構築すると説明。移動性にも優れており、規格では時速120kmでの移動中の通信に対応しているほか、海外の実験ではヘリコプターにより時速250kmで移動しながらの通信が可能であることが確認されており、「日本においては新幹線の車内からでも利用できる可能性がある」と語った。
現時点で、TD-CDMAを利用した通信サービスでは、セクターあたり最大10Mbps以上のスループットを実現しており、今後は複数のアンテナを同時に用いるMIMO技術や、周波数利用効率を高めるLTE(Long Term Evolution)と呼ばれる技術の導入により、100Mbps以上の通信が可能になることが見込まれていると説明。こうした技術は2007年から2008年頃から順次導入されていく予定で、これにより「無線でも光ファイバと同等の通信環境に近付ける」ことを目指していくとした。
また、TD-CDMAでは端末同士が直接通信を行なうアドホック型の通信にも対応するほか、特定のチャンネルを利用して同じ情報を複数のユーザーに配信する放送型のサービスにも対応できるとして、こうした技術を活用したサービスの開発も進めていきたいとした。
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TD-CDMA技術の概要
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TD-CDMA技術の高度化に向けたスケジュールマップ
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■ 「持ち歩ける無線LANスポット」を早期に投入予定
アイピーモバイルは、TD-CDMA技術を利用したデータ通信サービスについて、2005年11月に総務省から特定基地局開設計画の認可を受けており、2006年10月から東名阪でのサービス展開を予定している。2005年11月時点の計画では、通信速度は下り最大5.2Mbps、上り最大848kbpsとしている。
アイピーモバイルのサービスイメージとしては、「いつでも・どこでも・だれとでも、ポケットの中のブロードバンド」であると説明。サービスで提供する端末については、PCのデータ通信カードとして利用できるカード型端末のほか、バッテリーで駆動する「持ち歩けるアクセスポイント」をイメージした携帯型端末、据え置きで利用するモデム型端末、自動販売機などの機械に組み込むモジュール型端末などを想定している。
このうち携帯型の端末については、TD-CDMAによるアイピーモバイルのサービスを利用したインターネットへの接続機能と、無線LANのアクセスポイントとしての機能を併せ持つ「モバイルブロードバンドゲートウェイ(MBG)」を投入していくと説明。MBGはバッテリーで駆動し、かばんやポケットに入る程度のサイズを想定している。MBGを持ち歩くことで無線LAN対応のPCやゲーム機などをどこからでもインターネットに接続できる「持ち運べる無線LANスポット」というイメージになるという。
杉村氏は、「無線LAN対応の機器が増える一方で、無線LANスポットは場所が限られるといった問題がある」として、この問題を解決するのがMBGであると説明。移動中や訪問先などでのインターネット接続に利用できるMBGの用途は幅広く、PCカード型端末とともにMBGも早期にサービスとして提供していきたいと語った。また、MBGの端末側インターフェイスは当初は無線LANのみだが、Bluetoothや有線LANにも対応していく予定だとした。
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投入するサービス・端末のイメージ
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TD-CDMAをアクセス回線に用いる「持ち歩ける無線LANスポット」の投入を予定
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■ URL
アイピーモバイル
http://www.ipmobile.jp/
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