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【WIRELESS JAPAN 2006】
ドコモ中村社長、「MNP導入で総合的な魅力度が問われる」
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NTTドコモ社長
中村維夫氏
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WIRELESS JAPAN 2006の初日、携帯電話・PHS事業者の経営トップが相次いで講演を行なった。先陣を切ったのは、NTTドコモ代表取締役社長の中村維夫氏。「ケータイの今とこれから」と題して、同社の携帯電話事業戦略と、今後の携帯電話の方向性などについて語った。
中村氏は冒頭、「社長に就任してから2年が経ったが、携帯電話を巡る業界の進化の早さを痛感している」と前置きして、「携帯電話事業を取り巻く環境の変化」と「ドコモの取り組みについて」という2つの観点から話を進めた。
■ 携帯電話を取り巻く環境の変化
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燃料電池の応用と発展
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携帯電話を取り巻く環境の変化としては、規制関連の動向、技術の動向、サービスの動向の3点から説明。規制関連では、今年10月下旬にもサービスが開始されるナンバーポータビリティ制度について触れた。
同氏は、「最もインパクトがある出来事と言え、最長でも数時間単位で事業者を変更できるなど、お客の利便性は向上する」とした上で、「メールアドレスや携帯端末が継続して使えないこと、コンテンツや電子マネーが継続できないことや料金プランが違うといった問題もある。事業者としては、自ら提供するサービスをはじめとして、総合的な魅力度がこれまで以上に問われるものとなり、顧客の視点でサービスを創出するなど、改めて気を引き締めていく必要がある」と述べた。
また、新規事業者の参入にも触れる中で、ソフトバンクによるボーダフォン買収に対しても言及。「ソフトバンクは、ヤフーが持つコンテンツや、ADSLでの実績、固定との連動など、さまざまな手を打つだろう。競争が激化するのは明らかで、いろいろなことを想定して準備したい」と話した。さらに、「MVNOの在り方についても、今後議論が活発になるだろう」とし、「MVNOと、当社のような回線を持つ事業者との協力は新たな付加価値を提供するという意味で、お互いのWin-Winの関係を模索できるはず。だが、接続を法的に義務化することは行なうべきできない」と、同社のスタンスを明確にした。
技術革新への取り組みでは、FeliCaチップやメガピクセルカメラ、QRコード、ワンセグ放送、モバHO!、赤外線、GPSといった最新技術を背景にした各種機能を端末機に搭載してきた経緯に触れながら、「ハードウェアの進化だけでなく、ソフトウェアの進化も重要な要素となっており、アプリケーション容量の拡大やフルブラウザ機能など、リッチコンテンツを利用できる環境が整ってきた。今後も、ハード、ソフトの両面での進化が続くことになるだろう」と語った。
具体的な取り組みとして、燃料電池の動向を挙げ、「テレビ電話やリッチコンテンツの閲覧、地上デジタル放送の閲覧など、携帯電話を使用する時間が長くなっている。また、複数の機能を同時に使うといった利用も増え、時間あたりの消費電力が増加している。いまのリチウム電池では限界があり、マイクロ燃料電池の開発は不可欠。WIRELESS JAPANのドコモブースでも展示しているが、世界最小の充電方式の燃料電池の試作に成功し、従来の技術に比べて、1/4のサイズで2倍以上の性能を発揮できる。将来的には、充電方式ではなく、本体に組み込む形で利用できるようにしたい」と述べた。
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3Gから、スーパー3G、4Gへ
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また、移動通信の高速化としては、今年夏に導入を予定しているHSDPAを紹介。「下りではFOMAの約10倍となる3.6Mbpsを実現でき、将来的には14Mbpsまで拡張できる。まずは、都内23区内からサービスを開始し、2006年度内には人口カバー率70%を目指す。FOMAの料金体系とは変化がないのに加え、高速性を利用した新たなミュージックチャネルも用意する。端末は900iXシリーズと、カード型の2501シリーズを用意し、今後、対応機種を増やしていきたい」などとした。
さらに、スーパー3Gや4Gに関しても言及。「スーパー3Gは、下りで100Mbps以上、上りで50Mbps以上の速度が可能になる。すでに標準化が策定されており、基地局や携帯電話端末の開発に着手しようという段階にある。2009年には開発が完了し、2009年から2010年にかけてサービスを開始できるだろう。また、4Gに関しては、実用化することを目安に研究を進めており、下りで1Gbpsの速度となり、W-CDMAの6,000倍の速度が実現できる」と語った。ただし、「4Gは、すべてのネットワークを張り替えることになる。できることと、やることとは違うといえ、4Gの標準化に対して世界がどう動いていくかを見ながら、世界の異端児にならないようにしていきたい」とした。
FMCについては、「1つの番号、1つの端末、1つの請求書が望ましい」として、「無線間の速度が向上したことで、固定との連携がしやすくなった。まずは法人需要が注目されるが、NTTグループとの連携に展開していく」と語った。
放送と通信の融合では、携帯端末に放送を閲覧する機能が備わってきたことを示しながら、「4月からのワンセグ放送開始では、単に受像器としての使い方しかできないが、2008年には通信事業者がいまとは違う形で放送事業に携われる可能性もある。ここで通信と放送の関係に大きな変化がもたらされるだろう」と予想した。
■ ドコモの取り組み
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生活・ビジネスに役立つケータイの実現
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一方、ドコモの取り組みについては、「生活・ビジネスに役立つケータイの実現」に取り組んでいることを提示し、「携帯電話がコミュニケーションツールだけでなく、生活アシスタントとしての利用へと進化している。コミュニケーションツールと生活アシスタントの2つの側面から強化を進めていく」と語った。
同氏は、人口1億2,000万人に対して、すでに9,000万台の携帯電話が普及しているとしながらも、「一部では飽和状態という指摘もあるが、キッズやシニアでの導入が進むといった予測もあり、私はそう遠くないうちに1億台まで到達すると見ている」と予想してみせた。
携帯電話の契約者数の増加に関しては、物と物、人と物といった通信が増加すると見ており、モジュールをさらに安価に、さらに小型化することで需要は促進するとみている。具体的には、JTが導入を検討しているたばこの自動販売機で20歳以上であることを携帯電話を利用して認証する機能の搭載や、モジュールをより小型化することで、荷物1つ1つにこうした機能を搭載することも可能であることを示した。
また、携帯電話事業は、契約者数×ARPUによって収益が計上されることを示しながら、「まだ7割のユーザーが、音声通話とメールしか利用していない。ARPUを増やすという点では、こうしたユーザーはいかにデータ通信やインターネット利用をしてもらうかが鍵。これは当社に関わらず、携帯電話会社3社に共通したものといえる」などと語った。
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新たなビジネスの創出
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生活アシスタントとしては、おサイフケータイの利用が最大の成果として、これまで1,300万台のおサイフケータイ機能搭載の端末が市場に導入されたことを示し、「これが年度内には1,800万台になると予想している。さらに、国内の3,000円以下の少額決済市場は、57兆円に達すると予想しており、ここをおサイフケータイで開拓することができる」とした。
さらに、昨年12月に発表したiDへの参加企業が増加していること、この技術を活用したDCMXサービスを開始したことを説明。「1万円までのクレジットが利用でき、通話料の請求書で決済するDCMX miniは、4月28日のサービス開始から2カ月で約30万契約を獲得。スタートしてはまずまずの滑り出し」と自己評価した。
最後に、中村氏は、「決済・商取引、放送、コンテンツ・インターネット、グローバル、携帯電話に関連する周辺技術の5つの領域で、出資および提携戦略を進めており、これらはいずれもコアとなる携帯電話事業に影響を及ぼすものばかりだ」として、今後の投資、提携戦略の方向性を示した。
■ URL
NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/
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(大河原克行)
2006/07/19 14:01
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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