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クアルコムジャパン代表取締役社長の山田純氏
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5月9日、BREW開発者向けの講演会「BREW JAPAN Conference 2006」が開催された。午後の講演では、クアルコムジャパンの代表取締役社長の山田純氏がスピーカーとして登壇。「クアルコムの技術ロードマップ」と題して、講演を行なった。
■ MediaFLOをアピール
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最適な無線通信技術を提供
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無線技術のロードマップ
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山田氏は、クアルコム社の概要を説明する中で、自社について「いつでもどこでも、人やマシンが通信できる技術を提供する技術開発会社」と説明。「数ある無線通信技術は、それぞれの用途に合わせて最適化されなければならず、環境やサービスに応じた異なる通信技術の開発が必要だ」とした。
同社が開発・研究を進めている無線技術は、広域エリアをカバーするCDMA2000系のEV-DO Rev.A/B、W-CDMA系のHSDPA、HSUPAのほか、無線LANの802.11nなど多岐に渡る。講演の中で山田氏は、携帯電話向けの放送技術として米国で導入が進められているFLOに注力していると述べた。
この無線技術は、MediaFLOの名称で同社が開発を進めている放送型の新たな無線方式で、山田氏は「日本で言うと、ワンセグのようなもの」と表現した。国内では、4月1日にモバイル向けの地上デジタル放送「ワンセグ」がスタートしたばかりだが、同氏は「ワンセグは現在の家庭向けテレビから発展した技術を、モバイルでも利用できるようにしたもの。つまり、家庭用テレビの技術使うということで、そのためにバッテリーの問題や受信品質の部分で開発の余地がある」と語り、MediaFLOが携帯電話向けに特化された新無線方式だとアピールした。
また、同方式の特徴について、コンテンツの蓄積が可能な「蓄積型クリップキャスティングコンテンツ配信システム」であるとし、「PodCastのようなもの。携帯電話で自分の視聴したい番組をセットすれば、自動的にダウンロードしていつでも見られる。究極の暇つぶしツールだ」と説明。
このほか、携帯電話事業者がサービスしやすいビジネスモデルあると述べた。同氏は、ワンセグが放送事業者主導のサービスであるのに対し、MediaFLOは「携帯電話事業者のビジネスになるもの」とし、キャリアが有料サービスとして提供できる点を強調した。「伝送方法は放送でありながら、コンテンツの届け方やレベニューシェアリング(収入を分けること)は、現在の携帯コンテンツの仕組みを使う。モバイルの業界では、非常に理解しやすいのではないか」(山田氏)。
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MediaFLO概要
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通信事業者側がサービス提供できる
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なお、MediaFLOは、米ベライゾンが2006年末にも米国主要都市において、放送サービスを開始する予定。クアルコムでは、国内でもMediaFLOの導入を目指し、KDDIと合弁会社「メディアフロージャパン企画株式会社」を設立した。
ただし、MediaFLO導入には、携帯電話と異なる帯域で周波数を確保しなければならない。山田氏はこうした現状に、「日本での成功は、周波数帯の獲得如何。いつごろ取得できるかわからないが、もし仮に取得できれば、ワンセグと統合して提供したいと思っている。サービスが開始されたばかりとはいえ、ワンセグに慣れているユーザーもいるので、これに加える形にするのが筋だろう」と語った。
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米国のビジネスモデル
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サービス案
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■ 山田氏、WiMAXは「まだまだ時間が必要」
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高い周波数の利用効率がもっとも重要
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このほか、山田氏は、無線通信技術を開発する上で、高い周波数の利用効率が重要だとした。
この理由について、同氏は「いかに無線技術が発展しても、無線回線は細く、劣悪な環境だからだ」とコメント。厳しい環境の中で開発するために、同社では、新たな技術を導入した場合に、既存の技術と比較してどれほど有利かをスーパーコンピュータを使ってシミュレーションしているという。
また同氏は、WiMAXについても言及。「最近、WiMAXが次世代ブロードバンドで3Gを凌駕すると言われている。我々も研究しているが、3Gと比べると1つの基地局から端末に届くまでの距離が小さく、3G携帯電話の2倍程度の基地局が設置する必要がある。収容数も劣るので、まだまだ時間が必要と考えている」とした。
山田氏は、こうした次世代通信技術を上回るものとして、IEEE802.20という無線ブロードバンド規格をIEEEの委員会に提案していることを報告した。
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山田氏は、WiMAXにはまだ課題があるとの見方を示した
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IEEE802.20の状況
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■ 次世代BREWに言及
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BREWの進化
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講演の後半には、今後のBREWの展開についても触れた。
クアルコムでは、現在開発中の次世代BREWにおいて、携帯電話をアーキテクチャの部分から見直し、BREWそのものを携帯電話のOSのような役割にするという。山田氏は、Windows OSを例に挙げて、「Windowsのアプリケーションだけでなく、デバイスドライバのようなものも開発できるということ。いわゆるユーザーインターフェイス(UI)のあるアプリだけでなく、周辺デバイスをコントロールできるようなドライバまで開発できるようにする」とした。
完成までには1年程度の時間が必要とのことで、「実際に使える環境して見せられるのは、おそらく来年になるだろう。期待していて欲しい」と述べ、講演を締めくくった。
■ 米QUALCOMMチャンダー氏、海外BREWの状況を説明
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米QUALCOMMのアービン・チャンダー氏
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なお、カンファレンスの最後の講演には、米QUALCOMM Internet Servicesのバイスプレジデントのアービン・チャンダー氏が登場した。同氏は「BREWの海外市場」と題して、BREWのソリューションが海外で導入されている状況を説明した。
同氏は、BREWのプロダクトとして、UIをカスタマイズしてパーソナライズ化できる「uiOne」、コンテンツ配信システム「deliveryOne」、コンテンツのホスティングサービス「marketOne」を紹介。BREWのソリューションが世界的に拡大しているとし、BREWに対応するキャリアが、昨年4月の41社から、今年4月には66社に達したことを説明した。
チャンダー氏は、「2005年6月にBREWのコンテンツプロバイダーに対し、3億5,000万ドルの収入を生んだと発表したが、今年の6月にこれを更新したい」と話した。同氏は、海外キャリアのBREWの導入状況を複数紹介するの中で、中南米やインドの通信事業者の状況を紹介し、いずれもダウンロード数が拡大していると説明。現時点で小さな携帯電話市場でも、確実に拡大している状況をアピールした。
なお、講演の最後には、5月31日~6月2日にかけて米サンディエゴで開催される「BREW 2006 Conference」の概要なども紹介された。
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BREWを導入するキャリアが拡大
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ブラジル、ベネズエラ、メキシコなどのラテンアメリカでもBREWのダウンロードが拡大しているという
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■ URL
BREW JAPAN Conference 2006
http://www.brewjapan.com/seminar/report2006/
クアルコムジャパン
http://www.qualcomm.co.jp/
(津田 啓夢)
2006/05/09 21:45
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