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【BREW JAPAN Conference 2006】
KDDIが描くBREW戦略、共通プラットフォームによる進化と未来
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都内で9日、デジタルハリウッド主催、クアルコム共催、KDDI特別協賛によるイベント「BREW JAPAN Conference 2006」が開催された。基調講演ではKDDI、クアルコムからBREWを利用した戦略が明らかにされた。
■ ターゲットではなかった層が使い始めた
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au商品企画本部 プロダクト戦略開発部長の酒井 清一郎氏
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基調講演では初めに、KDDI au商品企画本部 プロダクト戦略開発部長の酒井 清一郎氏が「au端末におけるBREW展開」と題した講演を行なった。
同氏は冒頭で「最近、少し変化が起こってきている」と切り出し、「ARPUは中長期的には低下傾向にあるが、それでも他社と比べると維持しているほう。ところがその中で、今までデータ通信を使っていなかったユーザーが使い始めているという傾向が出てきた」と述べて、全体として低下傾向にあるARPUの推移においても、新たにパケット通信などのデータ通信を使い始めたユーザー層の登場を指摘した。
「例えば安心ナビ。これまで1X端末を使い、データ通信では家族とCメールをするぐらいだった母親が、安心ナビで子供の位置を確認するようになった。地図で確認するとパケット通信が発生するので、WIN端末を使うようになる」と一例を紹介。また「店頭での販売実績でも明らかになっているが、ワンセグ端末は中年男性にも使われている。主に野球中継を見るためで、データ放送と関連するデータ通信も、中継が始まると伸び始める」と新たなユーザー層の拡大を分析した。
同氏はこれらを踏まえた上で、「アプリを多様化していくなかで、これまでターゲットではなかったユーザー層もパケット通信を使い始めた。今後はこういった傾向がキャリア提供ではないダウンロード型アプリでも広がっていくだろう」と述べた。またこれとともに、日本市場全体で端末普及台数が9,000万台を超えてもなお増加傾向にあるデータを示し「必ずしも1人1台の時代ではなくなるだろう。今よりももっと伸びる」として、幅広いユーザーが1台以上持つことでさらに市場が拡大するとした。
■ 共通プラットフォーム採用によるメリット
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BREWにより春モデルは全機種LISMO対応を実現
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機種差分を低減しつつ、共通プラットフォームを導入
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ソフトウェア開発コストは低減したとした
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端末の展開については、常に新しい展開をしていかなければならないとの方向性を示した上で、「端末開発の効率化もしていかなければいけない」として、KDDIが提供するBREWを利用した携帯電話向け共通プラットフォーム「KCP」(KDDI Common Platform)を紹介。「2006年春モデルの7機種では、全機種がLISMOに対応した。メーカー・端末もバラバラのなかで、BREWが大きな役割を果たした」と述べ、「今後、auの端末はKCP対応として出ていくことになるだろう」との方針を示した。
端末開発におけるBREWの強みについては、「バージョンアップにより、端末を買い替えなくてもソフトが更新でき、EZナビウォークなどはこまめなバージョンアップで使い勝手を改善することができた」としたほか、「ワンセグ対応端末などの比較的開発期間の長い端末におていも、発売される時点での最新サービスを搭載できるのはBREWによるメリット」とした。
しかし一方でBREWにける課題も明らかにした。端末機能の深い部分まで制御可能なBREWアプリでは、「機種差分が発生する」ことを指摘。そのため最終的な提供までに時間を要するなどの問題が発生しており、ここを「苦労している部分」とした。これらの問題に対し同氏は、「テストアプリを提供し、これを動くような仕様にしてもらう。また端末のチップのバリエーションをなるべく揃えてもらい、KCPを採用してもらうことで機種差分をなるべく減らしていきたい」と具体的な対策を明らかにした。
端末におけるソフトウェア開発費の増大についても「うまくマネージメントしていかなければいけない」とした酒井氏は、イメージとして以前の端末と最新端末の開発コストの内訳などを紹介。「2006年春モデルは、端末価格は上がっているか、ソフト開発費はKCPの採用などで抑えられており、ユーザーに対する販売価格も下げられた」と述べ、共通プラットフォームの採用による効率化とコスト低減の効果をアピールした。
■ 3D機能は飛躍的に向上
同氏はまた、主にゲームにおいて高い性能が要求される3Dグラフィックスについても、「ゲームも3D機能を中心に引き続き重要。ミドルレンジの端末において、3Dパフォーマンスのバラつきを抑えてミニマム値を保証するのが課題」と述べるとともに、今後はハイエンド端末以外でも一定の水準で3D機能を提供していくとした。
3Dゲームなどの開発環境の拡充についても言及したほか、クアルコムが示しているハードウェア面での今後の展開を紹介。2007年にも投入される予定のATIのグラフィックス機能を統合したMSM7500では、「最低でも現在のMSM6550の2倍、最適化を進めた環境では10倍ものパフォーマンスが得られる」とした。
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次期3D環境では開発ツールも拡充
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3Dパフォーマンスは飛躍的に向上する見込みだ
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同氏は最後に、「キャリアがインセンティブで端末を配る時代は厳しくなっている。ユーザーが価値を感じなければ、手にとってもらえない。ユーザーを中心とした開発が重要」と語り、講演を終えた。
■ 好調なデータARPU、コンテンツも多岐に
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コンテンツ・EC本部 コンテンツ推進部長の竹之内 剛氏
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ワンセグ、聴かせて検索など、生活の中のきっかけを行動に結びつけるサービスもBREWで実現
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KDDI コンテンツ・EC本部 コンテンツ推進部長の竹之内 剛氏からは、「KDDIのコンテンツ戦略」と題した講演が行なわれた。
竹之内氏はまずコンテンツにおける現在の状況を説明。データ通信における収入が好調であるとするデータを示し、「WIN端末の普及とパケット定額制でデータARPUはどんどん上がっている。大容量コンテンツの増加で、昨年はデータARPUでドコモも抜いた」と述べて、コンテンツ利用の好調な様子を紹介。「大容量コンテンツの伸びもBREWのおかげ」と述べるとともに、最新のBREWアプリの動向を紹介した。
同氏はゲームアプリなどの定番コンテンツに加え、EZナビウォークやうたとものような特徴のあるアプリ、EZ・FMやワンセグのようなアプリなど、幅広いラインナップをアピールするとともに、引き続クオリティを高めていく努力をしていくとした。また、昨年同氏が提示したという“音”というキーワードは、EZトークコレクションなどのサービスとしても展開されているとし、「今年は音にこだわったコンテンツが花開くだろう」との見方を示した。
■ キーワードのひとつは“リビルド”
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リアルタイムの通信対戦も実現
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メダルアプリなどで、コンテンツの有効活用も促進させていく
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ゲームアプリについて「いろいろ進化の方向が見えてきた」とする同氏は、本格的なゲームを拡充していく方針を示し、リアルタイム対戦機能を備えたゲームについても「BREWと3Gネットワークがうまく合体して提供できた」として一層拡充していく方針を明らかにした。
ゲームアプリのラインナップを楽しく紹介できるように作られたという「EZゲームストリート」については、認証と課金がまだライトユーザーの障壁になっていると分析し、すでに提供されている「メダルアプリ」を「ゲームセンターのような感覚で遊んでもらおうというもの」と説明。メダルアプリについてもヘビーユーザーが多い傾向としながらも、「遊ばれなくなったゲームでも、ヘビーユーザーが遊ばないだけでまだまだ使えるものが多い。今年のキーワードの1つは“リビルド”。コンテンツは流行り廃りがあるものと言われるが、仕立て直してそれなりのユーザー層に売ればまだまだ使える」と述べ、メダルアプリなど新たな遊び方の提案次第で、新たなユーザーに向けてコンテンツがまだまだ有効利用できるとの見方を示した。
2つめのキーワードは“クリエイション”とした。同氏はコンテンツにおいて「今までは不動産屋のようなもので、回収代行の手数料が収入だった」としたが、「今年度はコンテンツプロバイダと一緒にコンテンツを作り上げていく」と語り、キャリアとしてさまざまなコンテンツを展開していく方針を示した。
最後のキーワードを“プラシーボ”(偽薬)とした同氏は、「ユーザーが喜んでお金を払ってくれるものは何か。メダルアプリはメダルをどんどん使ってしまうようなしくみを提供している。ただ、KDDIとしては使って良かった、となるようなシナリオを描いていきたい」と述べて、講演を終えた。
■ ケータイの進化はBREWとともにある
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モバイルソリューション商品開発本部長の山本 泰英氏。手にしているのはE02SA
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投資コストや開発生産性への取り組み
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ゲートウェイを通らない法人向け環境も提供
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KDDI モバイルソリューション商品開発本部長の山本 泰英氏からは、「モバイルソリューションの進化とBREWへの期待」と題した講演が行なわれた。
山本氏は法人向けのサービス展開が好調なことを示し、その要素としてソリューションとセットによる提供や個人情報保護法の影響を挙げた。また今後は、「団塊の世代が退職するが、彼らの経験や知識をいかに活用するかが重要。今後はテレワーク(オフィス以外で働く労働形態)が増え、またフィーチャーされていくべき」とし、「このようなワークスタイルの変化において、BREWが重要になってくる」と述べた。
同氏はBREWを活用した法人向けソリューションが投資コストや開発時の生産性にも考慮したものになっていることを紹介し、携帯を活用した優れた法人ソリューションを表彰する「MCPC award 2006」では主要な賞をKDDIの案件が独占したことを紹介。利用例を紹介してBREWの活用の幅をアピールした。
また法人向けに提供されているBREWアプリの開発ツールでは、ゲートウェイを通らず携帯電話とWebが直接接続する仕組みも導入されるとし、「BREWとともにケータイもWeb 2.0の世界に入りつつある」との見方を示した。
端末については、「子供向け端末があるなら、法人向けもあっていいだろうということでB01Kを開発した。7月には無線LANに対応し、すでにBREW上でVoIPも動いているE02SAが発売される」と端末のラインナップを示すとともに、さらにもう1機種も現在開発中であることを明らかにした。また、パソコン向けのPCカード型データ通信端末については、法人向けにデータ通信の定額制サービスを夏にも導入する予定であるとした。
同氏はBREWとテレワーカーへの期待として、「労働人口が減っていくなかで、企業は生産性を向上しなければいけない。そこでテレワーカー、そしてBREWが重要になってくる」と述べ、「ソリューションの進化はケータイとともにあり、ケータイの進化はBREWとともにある」として、ビジネスで求められるさまざまな携帯電話の利用シーンが、プラットフォームとしてのBREWで実現されしていくとした。
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テレワーカーへの期待
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BREWへの期待
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■ URL
BREW JAPAN Conference 2006
http://www.brewjapan.com/seminar/report2006/
KDDI
http://www.kddi.com/
(太田 亮三)
2006/05/09 20:58
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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