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【ワイヤレス・テクノロジー・パーク2006】
広帯域無線アクセス技術を各社がアピール

 4月27日~28日にかけて、神奈川県横浜市にあるパシフィコ横浜では、無線技術のイベント「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2006」が開催されている。そのセミナー「グローバル・スタンダードを目指す『世界の無線通信方式と規格最前線』」でNECやWiFi Aliance、Intel、クアルコムジャパン、京セラ、PHS MoUがそれぞれ、無線アクセス技術に関する講演やパネルディスカッションを行なった。


 まずNECのモバイルワイヤレスネットワーク事業部 ワイヤレスアクセス技術プロフェッショナルの藤本 芳宣氏が「WiMAXにおける標準化推進活動と今後のゆくえ」と題した講演を行なった。

 WiMAXはもともと標準化団体のIEEEが802.16として1999年に標準化した仕様から始まった無線アクセス技術。藤本氏は「標準化してから鳴かず飛ばずだったが、移動通信に進出したとたんに注目を集めはじめた」と語る。WiMAXというと802.16の技術を一通り含んでしまうがそれにはいくつかの種類があり、移動体向けに特化した802.16eのことはモバイルWiMAXと呼ぶ。

 WiMAXは、無線LANなどの「LAN(Local Area Network)」と携帯電話などの「WAN(Wide Area Network)」の中間にある「MAN(Metropolitan Area Network)」に位置づけられる。変調方式にOFDMを使う802.16e-OFDMの場合、最大データレートが75Mbps(帯域幅20MHz時)と無線LAN並になり、セルサイズ(基地局のカバーするエリア)は1~2km程度と携帯電話より少し小さい。

 WiMAXは現在、相互接続認証プロファイル作りやプロモーション、上位レイヤーやローミング、QoSの仕様作りをしている段階だという。藤本氏は今後はITUの勧告にもWiMAXが含まれ、2007年ごろには世界展開が可能になる状況になる、との見通しを語った。


無線アクセス技術の概観 IEEEの802で検討されている無線アクセス技術

OFDM変調方式を使った802.16eとCDMAの比較 携帯電話の技術と802.16eなどとの比較

携帯電話を含めた無線技術の今後の展開 802系の課題

パネリスト。左からWiFi AlianceのHanzlik氏、IntelのKnudsen氏、京セラの福村氏、PHS MoUの近氏、クアルコムジャパンの山田氏
 続いて「OFDM技術を採用した各IEEE標準化推進技術、新システムの優位性と比較」と題されたパネルディスカッションが行なわれた。参加パネリストは、WiFi AlianceのManaging DirectorのFrank Hanzlik、Inter CorporationのWiMAX Solution Division CTOのChris Knudsen、クアルコムジャパンの代表取締役社長の山田 純氏、京セラ 機器研究開発本部 本部長の福村 由紀雄氏、PHS MoU テクニカルワーキンググループ議長の近 義起氏の5人。モデレータは電波産業会 常務理事の佐藤 孝平氏。

 WiFi Alianceは無線LANの相互接続認証などを国際的に行なう非営利団体。Hanzlik氏は「世界300社以上が加わっていて、いままで認証した製品は2,500以上。無線LANはパソコンで普及してきたが、今後はケータイにも適用分野が広がる。これまで1億5,000万ユニットを出荷したが、今後数年で4億ユニットを出荷する見込み」と語った。今後のテクノロジー展開については、IEEE802.11a/b/gの次世代に当たるIEEE802.11nを紹介。802.11nは来年IEEEで批准される見込みであることが語られた。

 IntelのKnudsen氏はまず、低コストで高いパフォーマンスを得られるWiMAXの技術的優位性を語る。さらに市場としても、3GPP/3GPP2やブロードバンドワイヤレスアクセスの市場からもWiMAXへの注目が高まり、市場規模も拡大する見込みだと説明する。


WiFi AlianceによるIEEE802.11nについて Intelは4つの市場について、WiFiとWiMAXの2つに分化すると想定

 クアルコムジャパンの山田氏はまず「モバイルでは固定回線ほどの高速は望めない。モバイルにあったアクセス技術を設計しないといけない。モバイルブロードバンドアクセスなどといわれているが、それがどういったものなのかをこれから検討していかなければいけない」と語り、クアルコムが推進するIEEE802.20という通信方式について説明する。広い周波数帯域を前提とした高速無線アクセス技術としては、モバイルWiMAXなどと競合している。そこで山田氏はモバイルWiMAXとの特性比較を説明し、802.20の技術的優位をアピールする。今後の見通しとしては2007年にフィールド実験を行ない2008年に商用試験を開始する見通しだと説明する。標準化については2006年12月に仕様が完成する予定で、3GPP2にも提案していくという。


クアルコムが想定する無線技術のロードマップ 802.20とWiMAXの比較

 京セラは同社が推進するiBurstという無線アクセス技術について紹介する。iBurstはインテルが推進する無線アクセス技術と同じIEEE802.20に分類されるもので、携帯電話並みのエリアと無線LAN並みの通信速度を持つ。京セラの福村氏は「2年前にサービスを開始していて、ほかのシステムに比べると先行している。海外では5MHzのもともとはGSMのガードバンドだった帯域でサービスを開始しているところもある」とアピールした。基地局側の複数アンテナから端末位置で適切な合成される伝送波を送信する「アダプティブアレーアンテナ」などiBurstの技術的な優位性も紹介した。また福村氏は「いま基地局・端末を作っているのは京セラだけ。iBurstはもともとはPHSをベースにした日本生まれの技術なので、みなさんのご支援をいただいて普及させていきたい」と語った。


iBurstの位置づけ iBurstのシステム概要

 PHS MoUはPHSの標準化団体。ワーキンググループ議長の近氏はウィルコムの執行役員 CTOでもある。近氏はまず、ワイヤレスのブロードバンド化により通信容量を1,000倍にする必要があるとの考え方を示す。現在のケータイにおける音声とデータトラフィックをみると、月平均ダウンロード容量は数十MB。これがブロードバンド化により1,000倍になるという考えだ。大容量のためには周波数利用効率を上げる必要があるが、そのための新技術があるとも説明する。しかしそれもシャノン限界と呼ばれる理論的な限界に近づいていて、近氏は「周波数利用効率と周波数帯の増加をあわせても、1,000倍は無理」と語る。しかし一方で「もう一つ容量を増やす方法、セルサイズを小さくする方法がある」とも説明する。セルサイズを小さくすればカバーするべき利用者数も減り、効率が上がる。近氏は「セル半径を10分の1にすれば効率は100倍。ワイヤレスブロードバンドを進めていく場合、マイクロセルが重要な分野になるだろう」とし、ウィルコムの首都圏におけるマイクロセルネットワークを紹介。「こういったネットワークをブロードバンドなシステムに取り替えていけば、もしかするとたった1つのシステムでワイヤレスブロードバンドに対応できるのではないか、とわれわれは意気込んでいる」と語り、PHSのポテンシャルの高さをアピールした。今後のPHSの展開については、変調方式をOFDMに変更して速度を向上させるなどの方向性を紹介した。


現状のブロードバンドとワイヤレスの回線容量 現行および将来の携帯電話技術における周波数利用効率

首都圏におけるPHSの基地局。黄色いグリッドは携帯電話の一般的なセルサイズ 次世代PHSのコンセプト


URL
  ワイヤレス・テクノロジー・パーク2006
  http://www.wt-park.com/

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(白根 雅彦)
2006/04/28 12:10

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