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【第5回 ケータイ国際フォーラム】
ウィルコム八剱社長、「逆転戦略」を語る
ウィルコム八剱社長
3月15日と16日の2日間、京都のパルスプラザにおいてケータイ関連の展示会「第5回 ケータイ国際フォーラム」が開催されている。同会場で行なわれているカンファレンスの中でウィルコム 代表取締役社長の八剱洋一郎氏は「ウィルコムの逆転戦略」と題した講演を行なった。
まず八剱氏はウィルコムの成り立ちを説明した後、ウィルコムの特徴として通信インフラに「マイクロセル式ネットワーク」を使っていることと説明する。「通常の携帯電話は1本のアンテナ(基地局)で広い範囲をカバーしようとする。電波の到達距離は5kmくらい。そのメリットは、少ないアンテナで広いエリアをカバーできること」と通常の携帯電話の「マクロセル式ネットワーク」を説明。それに対して「PHSはパーソナルハンディホンシステム、コードレスデジタルホンの思想の延長として作られた。そのため電波が微弱でアンテナ(基地局)が最寄にあることが前提に作られており、アンテナの数が多い。NTTドコモは3万本とかいわれているが、ウィルコムは16万7,000本持っている。アンテナを密集させることで、ユーザーの最寄にアンテナを持っていっている」とマイクロセルの特徴を示し、さらに「この思想がケータイが進化・普及した今頃になって、音声定額やデータ定額などトラフィックの多いシステムに適していることがわかった。当初設計したときはそのようには想定されていなかっただろう」と語る。
マイクロセルの一つの利点は電波出力が小さいこととあげる。電波の人体に与える影響、SAR値でいうと携帯電話の30分の1程度になり、病院内でも使えるレベルだという。さらに「ペースメーカーに影響を与えることもほとんどない」とも説明する。
マイクロセルとマクロセルの違い
SAR値の違い
八剱氏は、このマイクロセル式ネットワークが携帯電話で採用されていないのは、エリアを広げるのが大変だというデメリットがあるからだとする。同氏はここで東京の地図を示し「2kmおきの基地局でカバーするマクロセル式ではこのようになる」と地図上に格子状に並べられた赤い点を示す。さらに「それに対してマイクロセル式を採用するウィルコムのアンテナ(基地局)はこうなっている」といって地図の表示を更新させると、赤い点で地図が見えなくなるほど埋め尽くされてしまう。
マクロセルネットワークのイメージ
マイクロセルネットワークのイメージ
八剱氏はこのように多数のアンテナ(基地局)を持つマイクロセル式ネットワークのメリットとして、つながりやすさがあるという。「マクロセル式はユーザーが少ないときにはパフォーマンスがよいが、一つの基地局につながるユーザーが増えると1人あたりの転送速度がスローダウンする。データ通信ならば速度を下げられるが、音声はゆっくりにできない。ある一定の速度が確保できなくなると話中扱いになる、いわゆる輻輳が発生する。PHSでも輻輳は発生しうるが、マクロセルのほうがアンテナ1本で広い範囲をカバーするので、輻輳が発生しやすい。またPHSではアンテナが密集しているので、通話できるアンテナを探しやすい」と説明する。
マクロセルで複数ユーザーが同時使用した場合
マイクロセルで複数ユーザーが同時使用した場合
同氏はマイクロセルをさらに発展させたナノセルについても紹介する。「千人規模の建物をカバーするには外からのアンテナだけではフォローできない」と説明。秋葉原に先日オープンしたUDXビルを例に挙げ、「地下や低層は壁が少ないので基地局数は8個で済む。しかし上層は壁が多いオフィスなので160個のナノセルを設置している」と紹介し、ナノセルがきめこまかく設置できていることをアピールした。
こうしたマイクロセルの特徴について八剱氏は「車にたとえると3GはF1」と説明する。「3Gは速度は速いが車線が少ないので渋滞しやすい。それに対してマイクロセルは乗用車みたいなものだが車線が多く渋滞しにくい」と語る。
秋葉原UDXビルのナノセル
3GとPHSの比較イメージ
こうした特徴を持つPHSだが、日本では撤退する企業が増えている。しかしウィルコムだけがPHSを継続できている理由について八剱氏は「ウィルコムのアンテナと宇宙探査機ボイジャーには共通点がある」として説明する。ボイジャーは打ち上げから探査対象の惑星に着き、活動開始するまで何年という時間がある。打ち上げ時にソフトウェアが未完成でも、あとで書き換えて完成させたり、機能を追加させることができる。八剱氏は「実は1995年にDDIポケットがサービスを開始する際、基地局のソフトウェア開発が遅れていて、やむを得ずソフトとハードを分離し、あとでインストールできるようにした」と明かし、「今年で11年目だが、最新の基地局のハードは3世代目、ソフトは36世代目になっている」とも説明する。八剱氏 「ハードとソフトを分離するほうがコストは高くつくので、開始当初ソフトが完成していたら分離の施策はとらなかっただろう。しかしハードとソフトが分離したおかげで、バージョンアップが簡単にできるようになった。これが成功の要因の1つだろう」と語った。
ウィルコムとボイジャーには共通点がある
ハードウェアとソフトウェアが分離している
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音声定額開始直後は2台購入者が74%いた
八剱氏就任当時の事業計画
音声定額についての説明に移ると八剱氏は4つのグラフを示し、「これが私が昨年社長に就任した際に見せられた当時のマスタープラン(事業計画)」と紹介する。個人と法人、それぞれの音声とデータの稼動量を示すグラフで、個人の音声が減っている。「データや法人音声が伸びているが、個人音声の減りがそれらを帳消しにしてしまう。これをトータルでプラスマイナスゼロ、もしくは純増にしたいのが、音声定額をやろうというそもそもの考えだった」と語る。
八剱氏は「音声は不幸だった」とも語る。「マイクロセル式ネットワークなので、多くのユーザーに同時に通話してもらえる。ということは、一人あたりが長くしても大丈夫だろう。ということで音声定額を発表した」のだという。
加入者推移をグラフで示しながら八剱氏は「広告などの大きなプロモーションは5月くらいまでしかやっていなかった。しかしその後も順調というか、むしろその後のほうが伸びている。これは音声定額の特徴だろう」と説明する。ウィルコムの音声定額はウィルコム同士の通話のみ適用される。つまり話をする相手と一緒に利用すると予想できる。八剱氏は「容易に想像できたのが恋人マーケット。ウェブでは複数台を同時購入できるようにした。その結果、4月の段階でウェブにおいて2台買う人が74%いた」と明らかにする。「現在では複数台購入者はほとんどいない。これはウィルコム利用者の輪が広がった結果だろう」と説明する。
最近の加入者数推移
DDIポケット開始以来の加入者数推移
八剱氏は音声定額のユーザー実績についても紹介する。「通常のケータイは毎月平均2時間半から3時間くらい。無料にしたらどうなるだろう、想定では5時間くらいだったが、14時間になった。実はユーザーは通話料金を気にしないのでよければ、もっと通話したかったというのがわかる数値」と説明。一方でインフラ負荷については、「技術陣は徹夜で電波監視していたけど、ほとんど変更はなかった」と語り、マイクロセルのメリットをアピールした。
音声定額の利用実績
参考として示されたデータ定額の実績
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今後のPHSの進化
今後のウィルコムの挑戦として、高速化・高度化があると説明する。その第1弾として先月から開始されたW-OAMについて紹介する。W-OAMは基地局からの距離に応じて通信方式を変化させ、近い距離ではさらに高速化させるという技術。一番近い距離では8PSKという通信方式になり、4xで203kbps、8xで406kbpsの速度を実現するという。「工夫すれば1Mbpsを超えるくらいまではいけるかもしれないが、これがいまのPHS規格のスピードアップ限界」とも語る。
一方でW-OAMでは電波状況が悪いときにも対応できる。八剱氏は「遅いBPSKのときスピードは半分になるが、かなりの距離届く。BPSKをそのまま音声で使えるようにすればエリアが広がるだろう。音声品質が若干落ちることがあるが、3倍の距離まで届く。BPSKのサービスは始まっていないが、今年中に開始するように準備中」とも明らかにした。
W-OAMについて
W-OAMのエリアイメージ
W-OAMで実現される通信方式別の通信速度
W-OAMで実現されるもの
さらなる高速化について八剱氏はWiMAXを例に挙げる。「WiMAXはマクロセルシステムを前提にしていて、携帯電話会社向けに開発されている。マイクロセルのPHSとは根本的に異なる。しかしOFDMという電波高率を上げる方式を使っている。このOFDMを使うのが、次世代PHSのチャレンジ。現在のインフラを活用しつつ、20Mbpsくらいのスピードを実現しようとしている」と語り、すでに行なわれているフィールド実験の様子を紹介。「現在は第1次実験の段階だが、WiMAXをしのぐスペックでやっていきたい」と将来の展望を語った。
最後にPHSの国際展開について「PHSユーザーは中国に多い」と説明する。「しかしPHSという日本生まれの技術を大切にして、世界をリードしていきたい」と語った。
次世代PHSでも現行のマイクロセルインフラを共有する
エリア・通信速度で他方式を上回る次世代PHSを目指す
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URL
ウィルコム
http://www.willcom-inc.com/
ケータイ国際フォーラム
http://itbazaar-kyoto.com/forum/
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(白根 雅彦)
2006/03/16 11:45
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