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左からjig.jp 福野泰介氏、カシオ日立モバイルコミュニケーションズの嶋是一氏、東京工科大学の田胡和哉氏
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6日からパシフィコ横浜で開催されている「Internet Week 2005」初日には、jig.jp 代表取締役社長 CEO兼CTOの福野泰介氏、カシオ日立モバイルコミュニケーションズの嶋是一氏、東京工科大学の田胡和哉氏の3氏による携帯電話のフルブラウザに関するプレゼンテーションが行なわれた。
■ jig.jpの福野氏、「jigブラウザ2でケータイの世界もWeb2.0へ」
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福野氏による「フルブラウザ実現の背景」
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フルブラウザ実現の最大のキーはやはり「定額制」とのこと
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福野氏のプレゼンテーションではフルブラウザ普及の背景とjigブラウザの未来などについて語られた。
まず福野氏は冒頭にjigブラウザの概要を述べた後、なぜフルブラウザが普及したのがこの時期かとして4つのポイントを挙げた。まず1点目はパケット通信料の定額化だ。福野氏は「パソコンのインターネットがダイヤルアップの時代から定額ブロードバンドに変わったときと同じインパクトがケータイにももたらされた。できるだけ使わないでおこう、の非定額から、定額でいかに使い倒すかにユーザーの意識が変わったこと」とした。
2点目は携帯電話の高性能化だ。「iアプリ登場の4年前から比べると計算速度で100倍、描画速度で10倍の差がある。フルブラウザではCPUパワーがいる」。
3点目は液晶技術の向上による高精細化だ。「PC用サイトは情報量が多いので液晶の解像度を要求する。iモードが出た当初の120×160ドット、今は4倍のQVGAになった。来年はさらに4倍のVGAになろうかとしている」と語った。
そして最後は通信速度の高速化だ。「数年前の9.6kbpsではPC用サイトを見るのはつらい。3Gの普及によって実用的な速度になった」とし、現在のフルブラウザの普及の要因を指摘した。
そして福野氏はjigブラウザの未来形として、現在β版を公開している「jigブラウザ2」を紹介。jigブラウザ2はプラグイン形式で機能を追加できるのが特徴。プラグインの仕様が公開され、好みのツールが自由に開発できる。福野氏はjigブラウザ2について、「ケータイ専用のサイトを書くためのCompact HTMLの世界がケータイのWeb 0.5ならば、HTMLが見れるようになったjigブラウザ1はWeb 1.0の対応ブラウザ。今後はjigブラウザにさまざまなアプリケーション、サービスを取り込んで、ケータイのWeb 2.0の世界を築きあげたい」と抱負を語った。
■ カシオ日立の嶋氏、「フルブラウザの実装はデバッグが大変」
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カシオ日立モバイルコミュニケーションズの嶋氏のプレゼンテーション。実装に当たって苦労した点
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続いてプレゼンテーションを行なったカシオ日立モバイルコミュニケーションズの嶋氏は、W21CAなどOpera搭載のCDMA 1X WIN端末を開発した経緯から、その苦労や問題点などを語った。
まず、ケータイにフルブラウザを実装する際に問題となる点について、嶋氏は「CPU、メモリなどハードウェアの限界」と指摘。特に問題となるのがプログラムが確保するメモリ容量(ヒープサイズ)だとし、「W21CAはBREW 2.1ベースで、ヒープが最低2MB必要になる。今はBREW 3.1世代で、ヒープは3MB以上、実際には4MBほど確保しなければならない。iモードが開始された時期の端末は全体のメモリサイズが500KB程度だったので、ハードウェアの進化がフルブラウザの実装を可能にしたといえる。今後もメモリサイズが大きくなっていけば、Flashを動かしたりもできるようになるだろう」とコメント。またCPUについても、「2000年には20MHz程度。今は200MHzくらいになっている」とした。
次にフルブラウザの実装に苦労した点として挙げたのは「デバッグ環境の乏しさ」だ。実装のメドが立ってから、実際に製品化するまでには、不具合の洗い出し作業(=デバッグ)が不可欠だが、そうした作業をする環境が整ったパソコン用ソフトと異なり、ケータイに実装されたフルブラウザのデバッグは、作業工程自体が確立されていなかったため、困難を極めたという。嶋氏は「製品になる直前の段階まで、既知のバグをつぶす作業をしなければならない。携帯電話では『リセットすれば直る』不具合も許されない品質が求められるので、もっともコストがかかる工程だ」と語った。
製品化のメドが立った後も業界でささやかれていたのが、既存のモバイルコンテンツのビジネスをフルブラウザが破壊しないか、という懸念だ。嶋氏この点について「はじめは相当キャリアさんも悩んだと思うが、今は、顧客に喜ばれるならやっていこう、という方向性になっている。我々も現在の方向性を継続したい」と、明るい見通しであることを示し、プレゼンテーションを締めくくった。
■ 研究用に開発したLinuxケータイはMozillaブラウザでGoogle Mapも閲覧可能
最後に、研究機関としてビジネスから離れた現場でLinux搭載携帯電話を開発している東京工科大学の田胡和哉氏がプレゼンテーションを行なった。
開発された携帯電話は、Windows CEベースの端末にLinuxのブートローダを追加したもの。インテルのPCA272プロセッサやQVGA液晶、64MBのメモリ、CFスロット、USBなどを搭載する。VNCを使ったパソコンのリモート操作が可能。WebブラウザはFireFoxにも搭載されているMozillaエンジンを採用し、オープンアーキテクチャーをベースにした仕様になっている。ユーザーインターフェイス部分はXMLによって記述され、Mozillaエンジンでレンダリングされるため、大幅な開発リソースの削減や細かなカスタマイズが可能だという。
MozillaベースのブラウザではJavaScriptを利用したGoogle Mapのスクロール機能なども利用できるという。田胡氏は「携帯電話のさらなる発展にはオープンアーキテクチャーの採用も必要では」と問題提起し、プレゼンテーションを締めくくった。
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東京工科大学の田胡和哉氏が開発したLinuxフォン
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QVGA液晶やCFスロットなどを搭載する
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■ URL
Internet Week 2005
http://internetweek.jp/
(伊藤 大地)
2005/12/06 18:13
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