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【Freescale Technology Forum Japan 2005】
ドコモ永田氏、基調講演で今後の展望を語る

NTTドコモ プロダクト&サービス本部 プロダクト部長 永田 清人氏
 9月8日に都内でフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの主催で、「Freescale Technology Forum Japan 2005」が開催され、この基調講演の1つにNTTドコモのプロダクト&サービス本部 プロダクト部長 永田 清人氏による「3G端末のプラットフォーム戦略」と題した講演があった。

 「Freescale Technology Forum」とは、携帯電話をはじめとする機器の設計者やキャリア事業者の技術部門を対象としたイベントであり、従って永田氏の講演もこうしたNTTドコモを支えるメーカーに対するドコモからのメッセージという意味合いが強い。そんなわけで、この講演の内容を簡単にレポートしたい。


FOMAを取り巻く状況

 まず現在のFOMAの契約者数は、8月末で1,500万の大台を越えており、来年3月には2,400万に達するという予想が示されている。また契約者の1/4は定額制(パケ・ホーダイ)を契約しているということも示された。

 ドコモの契約者数全体では、まだムーバが圧倒的に多いが、端末販売台数ではFOMAがムーバを上回る状況になっており、今後のマーケットはFOMAの側にあることを示した。

 もっともここまではドコモ内部の話であって、他のキャリアと比較するとまた別の展開が見えてくる。FOMA発売以降から純増シェアはしばらく下降の一途を辿り、auに抜かれてしまったのは周知の事実。やっと最近では何とか互角といったところに落ち着いてきたが、まだauにちょっと負けているとしている。

 また、今後の展開としてもナンバーポータビリティが始まると他の事業者に流れ出す可能性もある上、新周波数割り当てで新事業者が出現する可能性があるといった2点がまずは大きな懸念事項だとしている。


FOMAの契約者数は、8月末で1,500万を超えた 端末販売台数はちょっとデータが古いが、おサイフケータイなど、最近の魅力的なサービスはFOMAの側に集中している

またツーカーはともかくボーダフォンに関しては別の問題がある(後述)ため、純増シェアで引き離しているからといって安心はできないとのこと 1.7GHz帯および2GHz帯については、他事業者のことは判らないとしながらも、仮に実現不可能な計画を立てて走られて、やっぱり駄目でしたなんてことがあったとしてもそれに引きづられてしまうことが考えられるという話もあった

新機能への展望

まずはプラットフォームの標準化を行ない、携帯ベンダーの負荷を減らさないと機種数の増加は見込めないと語られた
 こうした懸念事項に対する対策、まずは来年から始まるナンバーポータビリティ対策としては、FOMA自体の魅力を増やしていくしかなく、対auへの施策としては端末機種数の増加やVOD(Video On Demand)を含むサービスの連携や拡充を実現するための標準化が必要で、このためにはプラットフォームの共通化が必要としている。また対ボーダフォンという観点では、端末価格とローミングサービスの強化が必要と見なしている。

 また、新周波数帯解禁による新事業者対策として、FMC(Fixed Mobile Convergence)の充実が必要とみている。NTTドコモはFMCのソリューションとして「PASSAGE DUPLE」というサービスを既に開始しているが、対応機種は今のところNEC製の「N900iL」のみであり、また機能的にも制約は多い。1.7GHz帯・2GHz帯に新規参入すると予想される事業者は、いずれもFMCを実現した上でVoIPを全面的に利用する形でコスト削減を図ってくる可能性があり、当然これらと互角に勝負できる土壌が必要、ということだ。

 こうしたことを見据えた上で、NTTドコモはFOMAを「生活インフラ」と位置付け、機能の強化を図っている。おサイフケータイはその一例であるが、QRコードや赤外線通信機能などもこうした一環と言え、徐々にその活用範囲は広がってきた。実際901iSシリーズは、機種毎に機能の差違が多少はあるものの、機能面では非常に充実を見せている。


「PASSAGE DUPLE」は、構造的にはSIPサーバーを利用したVoIPでもあるが、運用は企業内のサーバールームなどにSIPサーバーを置いて、社内のアクセスポイントからVoIPで通話、外に出たらFOMAで通話するというレベル 最初は通信機能を入れるだけで精一杯だったのは、次第に高機能・高性能化していく過程でその他の機能を付け加える余地ができた、と考えるべきであろう

おサイフケータイが既に560万台というのもなかなか凄い数字である 現状のドコモのラインナップで、最もハイエンドな901iSシリーズ

海外の展望

海外と比較した携帯電話の契約者数と出荷台数のデータ。単純に人口の違いが利いている
 ここで話は一転、海外事業者との比較に移る。新機能は、言ってみればauと新事業者対策で、ここからはボーダフォン対策と言っても良い。まず携帯電話の契約者数や端末出荷台数を比較すると、日本の数字は世界の1/10、あるいは1/20といった数字になる。ただ、そういう総論の数字ではなく、細かくみていくと、日本の携帯電話は他の地域と比較してかなり先進的な機能を持つものが多い、という傾向が見えてくる。

 つまり単純な通話機能を持つケータイと比較すれば確かに見劣りする数字だが、高機能ケータイというマーケットで見れば日本はメジャーマーケットであるというわけだ。加えて、それを支えるiモードサービスも、十分グローバルなサービスであると永田氏は主張する。

 こうした高機能なサービスを利用できる範囲にある契約者数を見れば、iモードは他のサービスと比較しても十分競争力がある、というのが主張の骨子であり、これはつまりiモードをサポートすることで、ワールドワイドでのマーケットが開けてくるというNTTドコモのメッセージでもあると考えれば良いだろう。


機能面で海外と比較したデータ。契約者数とは逆に、国民性の違いが出ている部分と言えようか ハイエンドサービスを利用できるユーザー数で見ると、iモードは競争力があると説明。ただし、もう少しサービス内容を比較する必要はありそうだ

国内外で仕様統一も

ツーカーのツーカーSなどを勘定に入れると「Japan」が100%、という数値はありえないが、ドコモだけではなく、auの全製品は高機能携帯に分類できるし、ボーダフォンも一部のプリペイド機種を除けばほぼ高機能携帯だから、大まかには100%といってもそれほど間違ってはいないとも言えるだろう
 いよいよ起承転結の「結」である。2005年の出荷台数を比較すると、日本はほぼ全てが「高機能端末」にカウントされるのに対し、ワールドワイドでは40%程度でしかない。そこで、国内向けと海外向けで仕様を統一することで、開発のコストを下げる事を計画しているという。

 また、ハードウェアとソフトウェアをなるべく統一させ、1つのプラットフォームでハイエンドからローエンドまで統一して動作できることが重要、としている。まずハードに関しては、チップセットではかなり欲張りな要求が出されており、今後3G→3.5G→Super3G/4Gと進化していく中で、さらに要求が高くなってくることが見えており、ハードもさることながらソフトウェアの側へも要求が厳しくなってくる。

 ただ、ソフトウェアは今でも開発負荷が高すぎる状態であり、これを軽減するためにサポートするOSを限ることで、作業量の低減とライブラリ類やドライバ類の再利用化による開発効率向上を狙う事を明確にしている。

 最後にフリースケールに対し、マルチバンド化やIOTの充実を図って欲しい、という希望が述べられて、永田氏の講演は終った。


90Xiシリーズは、やはり海外では明らかにオーバースペックということである。このあたりは、ハイエンド製品を好む日本人の国民性が明確になったというべきだろうか? ある意味、今までは共通プラットフォームを実現できるほど性能にゆとりがなく、結果として独自ハードウェアを毎回作る結果、ソフトウェアも毎回異なるという状況に陥っていたわけだが、ここに来てハードウェアの性能が上がってきたことが、プラットフォーム化に踏み切らせた動機の1つであろうと思われる

チップセットに必要とされる項目をまとめた図。このあたりはやはりフリースケールに配慮した感じである。実際MXCプラットフォームは、この全ての要求を満たせるスペック(というか設計方針)を持った製品だからだ 2010年代にドコモが実現したいとしている主要な機能。リアル連携やセキュリティに関しては今でもある程度のレベルは実現しているが、超リアリティ通信やフルカスタマイズに関してはまだ実装の方法論(技術的なバックボーン)すら無い状態で、このあたりは夢というか願望のレベルとも言える

 大まかに言えば、永田氏の講演の骨子は「FOMAのビジネスは今後も発展していく」「携帯を各社が個別に開発する時代ではない。基本的な機能やプラットフォームは、フリースケールなどのベンダーに提供してもらい、携帯メーカーはその上に載せるアプリケーションなどで差別化を図るべきである」という2点である。

 実際これを受けるように、午後のセッションでは、フリースケールのMXCプラットフォームでいかに携帯を開発していくかという内容のものが5つ用意され、盛況ぶりを誇っていた。もちろん、MXCプラットフォームを今すぐ導入したとしても、製品がリリースできるのは早くて2006年後半、現実問題としては2007年以降に投入される製品からであろう。従って、今すぐフリースケールの製品がケータイに入るというわけではないが、水面下での動きを感じさせる内容であった。



URL
  フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン
  http://www.freescale.co.jp/
  Freescale Technology Forum Japan 2005レポート(PC Watch)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0909/ftf01.htm


(大原 雄介)
2005/09/12 13:20

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