CommunicAsia2005では、世界的に活躍するメジャーな企業のみならず、各国のIT関連企業が多数出展している。こうした中、アイルランドのブースでは、通信関連企業が興味深い技術などを紹介していた。話を聞くと、極西の島国アイルランドと極東の日本の意外な接点も発見。今回は、同ブースから携帯電話関連企業を紹介しよう。
■ valistaとTango、決済や一括請求ソリューションを展開
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valistaのMarkething Communications DirectorのEvanna Kearins氏
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valistaは、携帯電話や固定回線向けのオンライン決済プラットフォーム「PaymentsPlus」を提供しているグローバル企業だ。同サービスは、通信事業者が自社サービスへと名前を変えてサービスを展開しているため、あまり知られることはないが、日本でもNTTドコモのモバイル決済サービス「DoCommerce」(ドゥコマース)として提供されているほか、タイトーなどもこのサービスを導入している。また、海外では、ハチソングループの3、フランステレコム、ボーダフォングループ、T-mobile、Orangeといった有力キャリアでも採用されている。
同システムを利用することで、通信キャリアはコンテンツなどの少額決済が可能になる。JavaやBrewもサポートし、認証や決済だけでなく、サポートも含めた統合決済ソリューションを展開している。
このほか、ボーダフォンのプリペイド端末などで採用されている「TopupPlus」も彼らのサービスだ。同サービスは、プリペイド端末のリチャージをネット上から行なえるというもので、リチャージを他の端末から行なうことも可能となっている。チャージ残高が不足すると通知する機能なども用意されている。
ブースのスタッフに、日本のモバイル決済市場と欧州の状況について聞くと、日本の携帯市場は、着メロやコンテンツのダウンロードを積極的に利用しているが、欧州ではこうした傾向はあまり見られないと話していた。また、ドコモのiモード FeliCaについては、スーパーマーケットなどの生活の中で携帯電話を使った決済が拡大することで、モバイル決済サービスに大きな変化が起こるのではないかという。
料金関連ではこのほか、Tango Telecomのブースにおいて、異なるネットワーク間で利用料を一括請求できる通信事業者向けソリューションを紹介していた。
「Converged Charging Node(CCN)」と呼ばれるこのソリューションは、携帯電話の利用料と固定回線の利用料をまとめて請求できるというもの。携帯と固定の利用料を一括して請求するサービスは、KDDIが「KDDIまとめて請求」という名称でサービスインしている。CCNでは、携帯と固定の料金だけでなく、例えば、プリペイド端末とポストペイド(料金後払い方式)や、CDMAとGSM、SMSとGPRSといったように、さまざまな料金の一本化がリアルタイムに可能となる。
プリペイド端末が多くを占める欧州携帯電話市場では、ポストペイド方式へ移行する際に長い期間を要するビッグプロジェクトとなってしまう。このソリューションでは、コストを抑えてこうした移行が可能となるという。同社は現在、GSM圏で事業展開しているが、今後世界的に3Gが普及し、各国とのローミングがさらに重要となれば、キャリアや通信方式、VoIPといった新サービスとの利用料の一本化が必要となってくるかもしれない。
■ ChangingWorldsやAnam、パーソナライズ技術や新SMSを紹介
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ChangingWorldsのProduct Marketing Director John Doyle氏
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会場では、パーソナライズ関連技術についての展示も行なわれていた。
ダブリンに拠点を置くChangingWorldsでは、ユーザーが欲しい情報やコンテンツにたどり着くまでのアクセスを短縮するパーソナライズ技術「ClixSmart」を展開している。
同社では、ユーザーが目的のコンテンツにたどり着くまでのクリック数が多いために、多くのコンテンツがユーザーの目に止まらない状況にあるとしている。ClixSmartでは、Javaベースの個人用ポータルサイトによって解決するもので、ユーザーは目当てのコンテンツにすぐにアクセスできるだけでなく、嗜好に合わせた情報がポータルサイトで確認できるようになる。
また、通信事業者にとっても、これまでブックマークから目当てのサイトに直接アクセスしていたユーザーに、お薦めコンテンツの紹介などが行なえるほか、ARPU上昇にも期待できるとしていた。
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ClixSmartのパーソナライズ技術をデモ
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現在、海外ボーダフォングループ向けに提供されており、3GやGPRSなど、ネットワークに依存せずに利用できる。同社のProduct Marketing Director John Doyle氏は、クリック数や1ページあたりのナビゲーション時間が半分に短縮されることで、サイトのアクセス数や、サイトの印象が約3割上昇すると話していた。
このほか、Anam Mobileのブースでは、SMSをEメールのように利用できるソフトウェア「SMSX」が紹介されていた。「SMSX」は、SMSを利用してEメールのような返信・転送・オートリプライといった機能が利用できるもの。ユーザーは、自由にオートリプライメッセージを作成可能で、インターフェイスなども変更することができる。
■ Arantech、ユーザーのリアルな使用感がわかるソフト
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ArantechのVise President Worldwide salesのColin Brown氏
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なお、今回ブースの出展はなかったものの、携帯ユーザーの生の動きをつかめる通信事業者向けソフトウェア「Customer Experience Management(CEM)」を展開するArantechにも話しを伺う機会を得た。同社のサービスも紹介しよう。
「CEM」は、携帯ユーザーの正確な動向をリアルタイムに把握できる通信事業者向けソフトウェア。これまでシステム管理やマネジメントシステムでユーザーの動向を把握していた通信事業者に、ユーザーが体感する実際のネットワーク接続可否や、コンテンツのダウンロード速度、メールが送信者側に表示されるまでの時間といった、使用感に近いものをリアルタイムに把握できるというもの。3GやGSM、CDMAなど各通信方式をサポートしている。
無線通信は、さまざまな環境の影響やネットワークの状況によって、サービスエリア内であっても実際にはサービスが利用できない場合もあるベストエフォート型のサービスだ。CEMでは、ユーザーがリアルに受けているサービスの状態を掴むことが可能で、通信事業者はその結果を問題解決に繋げることができる。
同社のVise President Worldwide salesのColin Brown氏は、「通信事業者にはユーザーの実際の通信状態が把握できない。CEMでは、実際のネットワーク品質が確認できる」と話す。現在、海外ボーダフォングループを中心に導入が開始されており、日本での展開について同氏は、3Gサービスを展開する事業者と話しを進めていることを明かした。同社では今後、数値化しにくいユーザーの使用感や経験値といったものも通信事業者側に提供していきたい考えだ。
■ URL
アイルランド政府商務庁
http://www.enterprise-ireland.or.jp/
valista
http://www.valista.com/
Tango Telecom
http://www.tango-tele.com/
ChangingWorlds
http://www.changingworlds.com/
Anam
http://www.anam.com/
Arantech
http://www.arantech.com/
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