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【技研公開 2005】
携帯端末向け地上デジタル放送を一般公開

 NHKは、5月26日~29日に、同社が研究開発している内容を一般公開する展示会「技研公開 2005」を開催している。公開は都内にあるNHK放送技術研究所にて行なわれ、入場は無料。ハイビジョン技術から高感度カメラまで、テレビ放送に関係する技術が多数展示されているが、本稿では携帯端末向けの地上デジタル放送を中心にレポートする。


来場者の注目度が高い携帯端末向け地上デジタル放送

 2006年春より携帯端末向けの地上デジタル放送(いわゆるワンセグメント放送)が開始される。番組内容は固定テレビ向けの放送と同じだが、ビットレートが小さい別の放送信号を用いるため、画質は固定テレビと比べると劣る。

 展示会場では実際のサービスに近い放送を携帯電話型の端末で受像するというデモが行なわれていた。来場者が試験端末を操作できるコーナーには順番待ちの列もあるくらいで、携帯端末向けの放送への注目度の高さがうかがえた。ちなみに同様のデモは「愛・地球博」にて行なわれている。


ボーダフォンによる試験端末での地上デジタル放送受像デモ auによる試験端末での地上デジタル放送受像デモ

地上デジタル放送の仕組み。1個のチャンネルの放送波が13個のセグメントに分割されている。NHK総合テレビで見ると、固定テレビ向けのハイビジョン放送ではセグメントを12個を使っているが、携帯端末向け放送ではセグメントを1個のみを使う 展示デモでの放送スペック。1セグメントで使える帯域幅の多くをエラー訂正コードに使用するため、映像・音声・データを合わせて250kbps程度となり、映像ビットレートだけを見るときわめて小さくなっている

来場者が試験端末に触れるデモの画面。チャンネル操作ができるわけではなく、放送と同時に配信されるデータ部分(画面の下半分)を操作できる デモで触れる試験端末の側面にはフルスクリーン切り替え専用ボタンがある

携帯端末向け地上デジタル放送を使った緊急警報放送

 会場では緊急警報放送の展示も行なわれている。これは、地震や津波などの警報情報を携帯端末で受信し、ユーザーに警報を知らせるという機能。テレビが起動していない状態でも、警報信号受信と同時に本体を起動させ、警報を発するといった使い方が想定されている。

 元々、固定テレビ向けを含めた地上デジタル放送には、緊急放送用のデータ領域は確保されているが、誰が緊急警報を発令するかなどの整備が行なわれていないため、実用には至っていない。携帯端末向けにもまだ整備は進んでおらず、展示の担当者によると、来春に携帯端末向けの放送が開始されても、最初の世代の携帯端末には緊急放送受信機能は搭載されない見込みだという。


業務向けのリアルタイムエンコーダ

 また、携帯電話向けの映像を作るリアルタイムエンコーダも展示されている。映像のエンコードは放送局側が行なうもので、この展示は業務向けのものとなる。

 携帯電話向け放送で用いられるのは、昨年規格が制定されたばかりのAVC/H.264という映像フォーマット。展示の担当者によると、同フォーマットでは同じビットレート・解像度でもエンコーダを改良すれば画質を向上させられる余地が大きいという。


従来のエンコーダと新開発のエンコーダの画像比較。同一ビットレートでも画質が向上している エンコーダのシステム。Windowsマシンで動いているが、DSPチップに搭載することも技術的には可能だという

データ放送部分を検証するための仮想ブラウザ

 地上デジタル放送にはBMLという言語で記述されたページがデータ放送で同時に配信される。そのBMLで記述されたページの検証用ブラウザも展示されている。すでに固定テレビ向け放送対応の検証用ブラウザは存在するが、こちらは携帯端末向け放送向けに作られている。


携帯端末でサーバー型放送を活用するための技術

 地上デジタル放送では、放送局のサーバーや家庭内のビデオサーバーと連動した「サーバー型放送」という視聴形式も想定されている。携帯端末向けの機能としては、録画して携帯端末に取り込んだビデオを、ネットワークからダウンロードしたメタデータに従って切り出すというシステムが展示されている。携帯端末では見にくい部分を省いたダイジェストの形で視聴したり、メタデータに字幕を埋め込んで、携帯端末では見にくい字幕を補ったりすることもできるという。


携帯端末向けのサーバー型放送サービスの概要 デモで展示されていたホットモック。画面は表示されているが、実際に中身が入っているわけではない


URL
  技研公開 2005
  http://www.nhk.or.jp/strl/open2005/

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(白根 雅彦)
2005/05/26 20:35

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