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KDDIコンテンツ・メディア事業本部 コンテンツ推進部長の竹之内 剛氏
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4月26日、BREW開発者向けイベント「BREW JAPAN カンファレンス 2005」が開催された。auのコンシューマー向けサービスを手掛けるKDDIコンテンツ・メディア事業本部 コンテンツ推進部長の竹之内 剛氏の基調講演では、定額制がもたらしたコンテンツビジネスの現状や、auの今後の展開が語られた。
■ 若年層ユーザーが牽引するコンテンツ
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ダブル定額ユーザーの6割弱が10~20代だ
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竹之内氏は、同社が展開している定額制サービス「ダブル定額」のユーザー層のデータを示しながら、「約58%が10~20代の若年層ユーザー。ARPUを1Xユーザーと比べれば、3月時点で約2倍に達している。コンテンツのみのARPUでは3.5倍となり、4月時点では4倍になっているのではないか。約6割の若年層が全体を牽引し、auのARPU全体を押し上げる格好となっている」と分析した。
コンテンツの売れ筋をジャンル別に見ると、ここ数年、断トツで1位となってきた着信メロディを昨年末時点で着うた・着ムービーが抜き去り、名実ともにauの看板コンテンツと言える状況となっている。また、BREWアプリの代表格とも言えるゲームコンテンツは、昨年まで3位だったエンターテイメント情報系コンテンツを抜いて、着実に売上を伸ばしている。このほか、昨秋スタートした着うたフルは、急速に成長していることが明らかにされた。
同氏は、「ユーザーの総数は増加しており、横ばいの着信メロディは1人あたりの単価は下がっているのではないか」と述べ、急速に成長している着うた・着ムービーに対する需要増は、数値以上のものがあるとした。
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ARPUを見ると定額制ユーザーのほうが伸びている
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着うた・着ムービーが一番の売れ筋に
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■ 1.5MBアプリはゲームのクオリティを高めるため
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例外的措置という位置づけの大容量アプリ
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有料の審査コースも開設されるという
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KDDIと沖縄セルラーは26日、auの新たなEZアプリ(BREW)のラインナップとして、最大1.5MBという大容量のアプリケーションを配信すると発表した。
これに触れた竹之内氏は、「携帯向けアプリは、限られたファイルサイズの中に高品質で使い勝手の良いモノをいかに入れていくか、各コンテンツプロバイダーの方々は努力されてきた。1.5MBというサイズは、クオリティを高めるために“どうしても今の容量では足りない”というケースへの対処。基準を設けて、それを超えるものに対しては大容量サイズでの配信という形になる」と説明し、全てのBREWアプリが大容量化するのではなく、あくまでも例外的な措置との見方を示した。
同氏は、「ダウンロードされるBREWアプリのうち、81%がゲームコンテンツ。コンテンツプロバイダとしては、なるべくラインナップを強化して数を揃えていく戦略が多いかもしれないが、携帯電話側は、機種によって想定しているターゲットが異なる。年齢や性別だけではなく、職業や趣味といったユーザーのセグメントにあわせて、BREWアプリを展開していくことが、今後重要になるのではないか」とも語った。
竹之内氏は、5月1日から定額化されるPCサイトビューアーに関連して、「音楽系のコンテンツが定額制の中心にある。では情報系コンテンツはどうか。どの端末からアクセスしたかわかるように、プロキシーモデルを現在開発中だ。インターネット上で提供されているサービスで、携帯からアクセスする場合は課金できるようなネットワーク構成を検討している」と述べた。同氏によれば、本機能がリリースされるのは、まだ先の話であり、2006年になる可能性もあるとのこと。
コンテンツプロバイダーがBREWアプリを配信するためには、一旦KDDIの審査を受ける必要がある。これはBREWそのものが携帯電話の根幹に関わる機能と連携できるようになっているためだ。
このため、審査から実際にコンテンツ配信までは相当時間がかかるとのことで、同氏は「たとえば季節やイベントにあわせたコンテンツを配信したい、というケースに対応するため、現状、申込順で審査しているコースに加えて、有料の“特急コース”を設けたい」と述べた。年内にも導入を予定しているという特急コースは、コンテンツプロバイダーの申込からBREWアプリカタログの掲載までを最短日程で実施することになるという。
■ BREWの開放路線・共通化
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FeliCa対応携帯は今秋登場予定だ
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既に同社から投入の予定が明らかにされているFeliCa搭載の携帯電話については、予定通り、今秋のリリースになるという。竹之内氏は「JR東日本のモバイルSuicaについても、開始と同時に対応していく考えだ」と述べた。
FeliCaにBREWを活用していくとした同氏は、BREWのオープン化についても言及し、「もうちょっと自由に使わせて良いんじゃないかという話もある。しかしオープンなOSではウィルスが出現した。メッセージ系サービスでも、ユニークIDを埋め込んだURLを送付し、クリックするとサービスに加入したことになるというケースもある。KDDIとしては、そういったものを1つ1つ潰している状況だ。アプリについても、端末に影響を与えないものは開放するが、ネイティブと連携するものについては全て開放するのはユーザーのためになるのか。一部分は開放するかもしれないが、完全解放は考えていない」と明確にオープン化を否定した。
また同氏は、新機種がリリースされるたびに、BREWアプリを調整しなければならない現状を踏まえて、「端末の差をいかに抑えていくか。これまでBREWは、ダウンロードアプリ用のプラットフォームという形だったが、一部のユーザーインターフェイスやブラウザ、メーラーといった部分までもBREWでカバーしようと考えている。つまり“KDDI共通プラットフォーム”というべきもので、年内のできるだけ早い時期に商用化すべく、端末メーカーやアプリケーションベンダーと開発を進めている」と語り、コンテンツプロバイダーの負担を軽減していきたいとした。
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BREWの共通プラットフォームが導入される予定
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PCサイトビューアーに対しても手を加えていくという
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■ 3つのキーワード
竹之内氏が所属するコンテンツ推進部では、あるキーワードがスローガンとして掲げられているという。それは、「音」「連携」「シナリオ」の3つだ。
1つ目の「音」について同氏は、「単に音楽コンテンツというわけではない。BREW 3.1からは音データを利用できるようになった。たとえば韻を踏むといったことも可能になる」と述べ、2月にオープンしたゲームポータル「EZ Game Street!」でも、アイコンという視覚面に加えて、アイコン選択時の効果音などにもこだわったと述べた。
2つ目の「連携」とは、FMラジオを聴いて着うたを購入し、さらにCDまで購入するといったケースを指している。「“1”で終わらないで、2、3、4とメディアや物販につなげていきたい。そういった連携」(竹之内氏)をイメージしているとのことで、現在auが展開している書籍やゲーム、音楽のポータルはこの考えを具現化したものという。
最後の「シナリオ」について同氏は、「個々のコンテンツを提供しているが、ユーザー自身がいろんなことを考えながら使わなければならない。そこへ、『これ買ったら次はこれ行こう』とマニュアル本のような流れを提供したい。1日の生活で趣味の分野や旅行など、自然にシナリオ化されているということだが、ユーザー自身がシナリオを描いて、購入していくという形もある。つまり、ユーザーの生活に密着していくということ」と語り、KDDIの戦略として、「携帯電話で何でもできる」という情報機器の姿を描いた。
■ URL
BREW JAPAN カンファレンス 2005
http://www.brewjapan.com/seminar/report/
KDDI
http://www.kddi.com/
(関口 聖)
2005/04/26 18:52
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