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【WIRELESS JAPAN 2004】
国内キャリア大手3社の「法人向け戦略」とは

左からボーダフォン 業務執行役員 営業本部 法人営業統括部長のマイク・ベナー氏、KDDI モバイルソリューション事業本部 モバイルソリューション国内営業本部営業企画部長の桑原 康明氏、NTTドコモ 法人営業本部 プロダクトビジネス部 担当部長の矢澤 寛氏
 「WIRELESS JAPAN 2004」のコンファレンスで、初日最後に行なわれた公開座談会「携帯電話キャリア3社 法人営業責任者が語る ライバル企業に差を付けるモバイルIT最前線」は、NTTドコモ、KDDI、ボーダフォンそれぞれの法人担当者が出席し、ビジネスシーンにおけるモバイル活用の実態や、各社が展開するソリューションなどについて語られた。

 出席者は、NTTドコモ 法人営業本部 プロダクトビジネス部 担当部長の矢澤 寛氏、KDDI モバイルソリューション事業本部 モバイルソリューション国内営業本部営業企画部長の桑原 康明氏、ボーダフォン 業務執行役員 営業本部 法人営業統括部長のマイク・ベナー氏。

 座談会は、「企業の現状」「活用事例の紹介」「各社の企業向けサービスの紹介」「さらに普及するための課題」と4つのテーマで進められた。


企業導入は全体の10%か

 モバイルサービスを活用する企業の現状については、まずKDDの桑原氏から独自調査によるデータが示された。それによれば、携帯電話市場全体では加入者数が8,000万を超え、約9兆円という市場規模となっている。一方、法人市場は総加入の10%程度、つまり800万回線程度の加入と推定されているという。

 法人利用が増えるかどうか、という観点から同氏は「就業者人口は約6,300万人と言われており、そのうち常用の雇用者は3,000万人程度、そして外勤者は3割。内勤者向けの新たなサービスがでてくれば6500万まで行くだろう」との見通しを明らかにした。

 また法人向けモバイルサービスの位置付けについて同氏は、これまでは経費削減を念頭におかれていたものの、徐々に業務効率の向上、ひいては売上増加に貢献するものとしてイメージされつつあるとした。

 また、企業の規模別によるモバイルサービス利用動向は、「超大企業」で26%、「大企業」で13%、「中企業」で7%、「小企業」で5%と規模に応じた動向になっているとしたものの、「今後活用したい」「業務に応じて活用したい」といった積極的な利用ニーズは、どの規模においても5割前後を占めており、大きな潜在需要があるという。また具体的な利用スタイルへの需要については、メールの送受信やスケジュール確認などに加えて、携帯電話を内線として利用したいというニーズがあるというデータが示された。

 KDDIからのデータを踏まえて、ドコモの矢澤氏とボーダフォンのベナー氏はともに「個人名義でもビジネスに利用しているケースがある。これを判別するのは難しい」と述べ、実態把握の困難さを訴えた。


法人市場はまだ成長余地があるという これからは業務効率改善などがメインになる

利用意向はかなり高い メールやスケジュール確認といったニーズのほか、内線電話としての需要もあるようだ

建設現場で弁当手配という業務が大幅に改善

ドコモ矢澤氏が示したユニークな導入事例
 具体的な活用事例については、ドコモの矢澤氏から建設関連企業に導入されたというユニークな事例が紹介された。

 その企業では、工事現場で働くスタッフそれぞれに弁当を手配するため、事務所にいるスタッフから現場スタッフ一人一人に確認の電話をしていたという。しかし携帯電話を既に各スタッフが持っていることから、弁当の希望をブラウザ経由で注文するシステムに変更したところ、従来は確認完了まで2時間かかっていたものが、15分に短縮されたという。

 同氏によれば、これはドコモからの提案ではなく企業からのアイデアで実現した事例とのことで、各企業のケースにあわせたコンサルティングのような働きかけが重要と指摘。また製薬会社の営業スタッフに対する事例なども紹介した矢澤氏は、モバイルサービスの導入によって通信費は増加する可能性があるとしても、交通費などの経費が削減され、全体的なコストが削減されるとアピールした。


各社が展開する法人向けサービス

ボーダフォンをはじめ、各社からさまざまなソリューションが紹介された
 ドコモ、KDDI、ボーダフォンの各社は既に多くの法人向けサービスを提供している。ボーダフォンのベナー氏は、法人向けアプリケーションの開発において、コンテンツプロバイダなどのパートナー企業と協力して、通信事業者としてプラットフォームを整え、柔軟な体制を作り上げていると説明。また企業が設定したグループ内の携帯電話間の通話を定額制で提供するサービスやW-CDMA方式の通信カードなどを紹介した。

 ドコモの矢澤氏からは先日発表されたばかりの「N900iL」が紹介され、プレゼンス機能やインスタントメッセンジャー機能などがアピールされた。同氏は「Linuxを初めて搭載した端末だが、それよりも内線電話としても携帯電話としても利便性が高いという点を訴えていきたい」と述べた。


普及への課題は幹部社員の認識を改めること

 今後、さらに法人向けモバイルサービスが発展するために必要な点については、3者ともに「幹部社員の認識が低い。これを改める必要がある」という意見で一致した。ドコモの矢澤氏は「とある金融系企業では、エンドユーザーに対してインターネットを利用したサービスを提供している。しかし社内ではスケジューラも活用しておらず、毎週開催されるという会議は急な変更もできない体制。ここを指摘して、“そんなに遅れているのか”という意識を持たせた」と述べ、ネットワークを商売道具として利用されている現状を改善していくには、顧客に対して提案してく営業が必要と指摘した。

 KDDIの桑原氏も「携帯電話の能力が非常にあがっているということを知ってもらいたい。もはやPDAと同じことができると思って欲しい」と述べ、携帯電話が法人向けサービスにおいて高い可能性を秘めるとした。

 このほか質疑応答の際には、JavaやBREWといったアプリケーションを法人向けサービスでどのように扱っていくのかという問いが投げかけられた。ドコモの矢澤氏は「Javaだけでソリューションを作るのではなく、一連の流れの1つとして捉えている」と述べ、あくまでもシステム全体における一部の役割を担うものとの位置付けを示した。

 また病院など医療機関で、携帯電話をどうアピールしていくのかという点について矢澤氏は「ページャーとPHSどうしていくのか。この2つをダメというところと、違う方法でも良いんじゃないかというところで両極端に分かれている。非常に悩ましい点で、もう少し検討していく。多くの医療機関から質問を寄せられているが、医療機器に対する影響は、『このへんなら平気』『どの辺まで安全か』といったデータを示して、啓蒙活動していく必要があるかどうか決めていく」と述べ、今後の大きな課題とした。

 KDDIの桑原氏は「構内PHSのマーケットを取りに行こうと考えている。ドコモのPHSやDDIポケットのシェアを取りたい」と述べ、医療機関を含め、今後法人ニーズへ積極的に展開していくと宣言。またボーダフォンのベナー氏は「ボーダフォンはW-CDMAで行く。個人的にはPHSは消えていくのではないかと思っている。(ソリューション提供の案として)無線LANと併用するという考えもある。それぞれの場所に適した、最も安価な通信手段にしていきたい」と語った。



URL
  NTTドコモ
  http://www.nttdocomo.co.jp/
  KDDI
  http://www.kddi.com/
  ボーダフォン
  http://www.vodafone.jp/
  WIRELESS JAPAN 2004
  http://www.ric.co.jp/expo/wj2004/


(関口 聖)
2004/07/22 11:51

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