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【FPD International 2003】
ドコモ夏野氏「2.2~2.4インチQVGAはケータイ向け液晶の成熟形」
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10月29日~31日の3日間、液晶、有機ELなど薄型平面ディスプレイ(FPD)の総合展示会「FPD International 2003」がパシフィコ横浜で開催されている。2日目の30日には、NTTドコモ iモード企画部 iモード企画部長の夏野剛氏が「モバイルコンテンツ進化論~国民的インフラとなったiモードのさらなる進化」と題したスピーチを行なった。
■ 「液晶の進化とiモードの進化はシンクロしている」
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NTTドコモ iモード企画部 iモード企画部長 夏野剛氏
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夏野氏は講演開始直後、「液晶メーカーの方が毎日のように、“こういう液晶はどうですか”とお話があるが、“サービスとしてはどうなんですか、ふつうの人には、どうそれがウケるんですか”とお伺いすると、あまりはっきりした答えが出てこない。それは本末転倒だというのが私のメッセージだ」といきなり結論とも思える見解を述べた。
この講演中、幾度となく夏野氏は「サービスイメージなくしてどんな優秀な技術でも意味がない」と繰り返している。これは、自著やこれまでの講演でも、ことあるごとに述べられてきた夏野氏の持論だ。講演では、FOMAや505iSなどの新端末については触れられず、液晶デバイスメーカー関連の技術者が大半を占める聴衆に向けて、サービス、コンテンツの重要性を説得するような形で進められた。
この点について夏野氏はまず、欧州の携帯電話市場を引き合いに出し、「高解像度液晶という技術はもちろんヨーロッパにもある。しかし、26万色QVGA液晶搭載のケータイはヨーロッパには1台もない。なぜか。それはマーケットがないし、コンテンツがないからだ」と力説。さらに、「液晶の進化とiモードの進化はシンクロしている」述べ、502iでカラー化、503i、504iと解像度、色数の向上、さらに505iでQVGAへと進化した経緯を解説。特に502iでのカラー化については、「踏み切った大きな理由はバンダイさんの“キャラっぱ!”が501iのときにものすごく流行ったから。これを見て、どうせキャラを待受にするならカラーの方がいいに決まっている、これはもう行くしかないと思った」とエピソードを披露した。液晶の進化について夏野氏は、「コンテンツの進化があったから、高精細化していくという流れであって、決して逆ではありません。JavaやFlashが入ってくれば、解像度が必要になってくる」と総合した。
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液晶の進化とiモードの進化
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大きさの差が505iでは小さくなってることがわかる
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■ 「2.2~2.4インチQVGA液晶はひとつの成熟形」
505iでのQVGA化についても夏野氏は「メリット、デメリットの両方あった」と語る。夏野氏によれば、504i用に作られた画像をQVGA端末で見るとかなり見え方が小さくなってしまい、コンテンツプロバイダがQVGA用のコンテンツを新たに用意しなければならなかったのがデメリットで、逆に、メリットはいままで機種ごとに微妙な違いがあった解像度を一律にしたことでコンテンツプロバイダが複数のコンテンツを用意しなくても済むようになったことだという。
いずれにせよ、QVGA化にあたっても、常にコンテンツとのバランスやコンテンツプロバイダとの関係を重視する、いわゆる「iモードストラテジー」の考えが色濃く表われているのは間違いない。夏野氏はこれを、「いかに既存のコンテンツに影響を与えないようにするか、もしくは影響を少なくするかということに気を遣いながら、技術革新を行なっている。コンテンツがなくては新しい技術もまったく意味がない」と表現している。
また、QVGA液晶について「個人的な見解」と断った上で夏野氏は、「携帯電話という世界でいうと、505iで採用した2.2~2.4インチQVGAが1つの成熟形かなと思っている。人間は、手のひらのサイズより大きなモノを持ちたくないものだし、手のひらのサイズは変えられない。解像度にしても、ただ高解像度にしただけでは文字が小さくなって読みづらくなってしまうからだ」と述べ、当面の液晶の大幅なステップアップに関しては慎重な姿勢を見せた。また、「VGAや3インチ、4インチと進化するには、端末のサイズが大きくなってもその端末が欲しいと思わせるような、相当大きなアプリケーションがないと難しい」とも語った。
液晶とiモードの話題について、夏野氏は最後に「端末やネットワークは技術的に進化しているが、これはコンテンツの進化と同期していないと意味がない。また、ユーザーエクスペリエンス、ユーザーの進化もついてこないとダメ。ユーザーが使いこなせず、コンテンツが進化しないからだ。“進化スピードのシンクロナイゼーション”が重要だ」とまとめ、話題を接触ICカード技術「FeliCa」に移した。
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夏野氏の講演ではおなじみ「ポジティブフィードバック」の図
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こちらもiモードの戦略を図式化した「バリューチェーン」
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■ 「5年後には世界のiモードユーザー数が日本のユーザー数を超える」
ドコモはソニーとICチップ事業について提携することを発表したが、この件についても夏野氏は「非接触ICチップに注力する理由はかざすだけでいいから。どんなに一生懸命、ICチップのセキュリティや利便性を訴えたところで、“ケータイかざすだけで使えるんだよ”というアプリケーションとしての優位性をユーザーにアピールできないと意味がない」と語り、ここでも、ICチップだろうが、液晶デバイスだろうが、「まずサービスありき」の夏野氏の持論を展開した。
最後に夏野氏はiモードの海外進出について触れ、「ドコモが提携している事業者のユーザー数は5,000万。日本のiモードユーザーがおよそ4,000万。私の希望は5年後にはヨーロッパのiモードユーザー数を日本よりも多くすることです。皆さんの開発されるQVGA液晶はヨーロッパの市場でも大きく羽ばたきます。いっしょにがんばりましょう」と聴衆に呼びかけ、講演を締めくくった。
なお、講演終了後の質疑応答で「次のスタンダードになる液晶は?」との質問を受けた夏野氏は、「実は2.4インチでもどうかと思っている。2.4インチにすることでデザイン上の制約を相当受けるからだ。だから私は“2.4でもいいんですけど2.2で、よりかっこいいデザインにしてください”ということをメーカーさんにお願いしている。2.2と2.4の違いよりも、デザインがかっこいい方をユーザーは選ぶからだ。“次のスタンダードは”という観点ではなく、その液晶でなければならないコンテンツとはなんだろうか、という観点で考えていただきたい」と回答している。
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サービス、端末、そしてユーザーの進化のスピードが同期していなければいけないという
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FeliCaケータイの利用イメージ図
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■ URL
FPD International 2003
http://expo.nikkeibp.co.jp/fpd/
NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/
(伊藤 大地)
2003/10/30 14:26
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