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【mobidec 2003】
パネルディスカッション「モバイルが変えていくものとは?」
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8月28日、29日の2日間、モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)および翔泳社主催による携帯電話関連のコンテンツ開発者向けイベント「mobidec 2003」が開催されている。29日最後のセッションとして、「モバイルが変えていくものとは?~メディア、チャネル、ライフスタイル……」と題したパネルディスカッションが行なわれた。
出席者は、ケイ・ラボラトリー 代表取締役社長 CEOの真田 哲弥氏、ミュージック・シーオー・ジェーピー 会長の佐々木 隆一氏、ギガフロップス 代表取締役 社長の増澤 貞昌氏、タイトー EW営業部長 兼 SB営業部 副部長の木村 潤氏の4人。司会はモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)事務局長の岸原孝昌氏が務めた。
ディスカッションというよりも、出席者各々の見解を披露するというスタイルで進行したため、話題は携帯電話が与えた影響のみならず、その将来像やデジタルテレビとの連携、著作権の話題など多岐に渡る内容となった。
■ 携帯の普及がリアルに変革をもたらす
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司会を務めたMCF事務局長の岸原孝昌氏
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冒頭、司会役の岸原氏は、「たとえば着信メロディだけの頃は、音楽業界との溝があったが着うたの登場によって、音楽業界は積極的に動くなど、携帯電話の普及が既存メディアやチャネルに変革をもたらしている」と述べ、それぞれの出席者に対して携帯電話の影響に対する意見を求めた。
ケイ・ラボラトリーの真田氏は、「既に起こり始めていることだが、リアルと携帯電話が融合するためには、技術面で3つのブレイクスルーが必要。それはBluetooth、そして非接触型ICカード、2次元コードだ。手間のかかるものは普及しておらず、店舗を訪れたときに携帯電話とレジが簡単に接続できるような技術が重要だろう」と述べた。またレコード会社に次いで着うたの提供を開始したミュージック・シーオー・ジェーピーの佐々木氏は「今までのビジネス構造とは全く違う。だからこそ過去の商慣習や法律などとの整合性を考えていかねばならない。どのように権利関係を処理していくか、壮大な実験中と言える」と語った。
ギガフロップスの増澤氏は、「携帯電話が今後もどんどん浸透していけば、たとえば、呼ばれたときにだけシステム構築に関わるなど、フリーランスのような働き方が可能になるだろう。またマーケティング面からすれば、携帯電話は1人1人が持つ“POS端末”になり得る。管理社会の可能性もあるが、ユーザーに直結するインフラは他にない」とユニークな見解を示した。
また、タイトーの木村氏はゲームメーカーの立場から「ゲーム専用機の市場は、圧倒的に男性ユーザーが多い。しかし携帯電話では女性もゲームをプレイするようになった。それにより、ライトなゲームコンテンツが増加している」としながらも、「現状はゲーム業界全体に携帯電話のゲームが何らかの影響を与えるまでにはなっていない」と述べた。タイトーは、実際にアミューズメント施設などを運営しており、携帯電話を利用してユーザーの囲い込みを試みているが、「店舗側のスタッフからすれば、なかなか数は増えていない」として、リアルと携帯電話の融合には課題が残されていると示唆した。
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ケイ・ラボラトリー 代表取締役社長 CEOの真田 哲弥氏
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ミュージック・シーオー・ジェーピー 会長の佐々木 隆一氏
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■ 携帯電話がメディアの媒介役に
デジタルコンテンツの話題に移ると、ケイ・ラボラトリーの真田氏は「携帯電話にはパケット通信料の問題がつきまとうため、単体で完結することができない。たとえば来年からトヨタがG-BOOKを全車種に搭載するとしているほか、デジタルテレビ放送の登場など、今後デジタルコンテンツは普及すると決定したも同然。では、その中で携帯電話がどのような役割を果たすのか。パソコンや車などで同じ個人情報を繰り返し入力して、サービスを利用させるよりも携帯電話が個人情報を管理する役割を果たすだろう。つまり、携帯電話が各メディアの媒介役になる」と明確に断言した。
同氏によれば、赤外線ポートやBluetoothなど近距離通信のインターフェイスを備える携帯電話は「ユーザーに意識させることなく、身近なメディアと接続できるデバイスとなり、コンテンツは電波に頼らずとも入手できるようになる」という。
さらに携帯電話のビジネスモデルに対しては、「通信料で収益をあげるというビジネスモデルよりも、プラットフォームだけを提供して、コンテンツプロバイダなどから収益を得るような形にすれば、現在は実現できないビジネスが生まれてくるのではないか」との見解を示した。
外部メモリカードについては真田氏が「現在は主に画像用途でしか使えない。コンテンツがやり取りできれば面白くなる」と述べると、タイトー・木村氏は「タイミングや海外との兼ね合いなどがあり、スムーズにはいかないだろうが、キャリアもメリットを感じて、いずれはメモリカードを自由に使えるようにするのではないかと思う」と期待感を表わした。
このほか真田氏は、デジタルテレビについても触れて「デジタルテレビで採用されているデータ通用のフォーマットは決して使いやすいものとはいえない。視点を変えれば、そこに大きなビジネスチャンスがあるだろう」と述べた。
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ギガフロップス 代表取締役 社長
の増澤 貞昌氏
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タイトー EW営業部長 兼 SB営業部 副部長の木村 潤氏
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■ デジタルコンテンツは、著作権処理が従来と大きく異なる
ミュージック・シーオー・ジェーピーの佐々木氏は、同社が音楽配信を手掛けるため、デジタルコンテンツと関連した著作権を詳細に説明。同氏によれば「たとえば書店で書籍を買うと、その後ユーザーが購入したコンテンツをどう扱おうと問題ではない。しかしデジタルコンテンツでは複製が容易で、電子書籍や音楽配信を行なうには、権利者もダウンロードは3回まで、というように新たな契約を結ぶ必要がある」と語った。
続けて同氏は、「最近の携帯電話は、映像コンテンツにも対応しているが、今の制度で実際にテレビ番組や映画を配信しようとしても、出演者や製作スタッフなど全関係者の承諾を得なければならず、スムーズにはいかない」と述べ、新たな仕組み作りに注力しているとした。
最後に司会の岸原氏が「携帯電話のビジネスには、いろんな可能性が出てきているが、既存のビジネスモデルとの調整が必要。可能性があってもなかなか踏み出すのは難しいだろうが、一緒に頑張っていきたい」と語り、パネルディスカッションは終了した。
■ URL
mobidec 2003
http://www.shoeisha.com/event/mobidec/
ケイ・ラボラトリー
http://www.klab.org/
ミュージック・シーオー・ジェーピー
http://www.music.co.jp/
ギガフロップス
http://www.gigaflops.co.jp/
タイトー
http://www.taito.co.jp/
(関口 聖)
2003/08/29 22:35
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