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【WIRELESS JAPAN 2003】
携帯コンテンツのディスカッション、「コンテンツが日本経済を救う」

MCF 事務局長 岸原 孝昌氏
 7月16日より、東京ビッグサイトでワイヤレス関連イベント「WIRELESS JAPAN 2003」が開催されている。最終日の18日、サイバード、ドワンゴ、ネットプライス、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)の首脳が集まり、「最新モバイルビジネスの可能性~マルチメディア化とマスメディア化はモバイルビジネス産業へと昇華させるか~」と題したパネルディスカッションが行なわれた。

 今回のパネルディスカッションは、モバイルコンテンツフォーラム(MCF)事務局長の岸原孝昌氏がモデレーターを務め、コンテンツプロバイダを代表する企業のトップが集まって、コンテンツビジネスの行方を議論するというもの。ネットプライス社長の佐藤輝英氏、サイバード専務取締役の岩井陽介氏、ドワンゴ社長の小林宏氏、KCCS専務取締役の北村寛氏が出席した。

 パネルディスカッションは、出席した各氏がそれぞれの業務内容を簡単にプレゼンテーションするところから始まった。それぞれの内容について、ここでは詳しく触れないが、ネットプライスの佐藤氏は共同購入ECサイト「ちびギャザ」、サイバードの岩井氏はコンビニのPOSシステムと連動したソリューション「すぐメル」、ドワンゴの小林氏は着信メロディサイト「いろメロミックス」、KCCSの北村氏はデータセンター業務、画像変換サーバーなどのソリューション開発について、各々の代表的な業務を紹介した。


急速に伸びたモバイルコマース市場

 ディスカッションに入ると、モデレーターの岸原氏が、「モバイルコマースの発展と広がり」をテーマに各氏に質問を投げかけた。まず、「モバイルコマースがこれでいける、と思ったポイントは?」と尋ねられたネットプライスの佐藤氏は「立ち上げてから3カ月で月商1000万円を超え、カラー液晶端末が物品の販売をさらに押し上げたのを見てこれはいけると思った」と答えた。

 また、サイバードの岩井氏は「モバイルでコマースするやつなんているのか、こんな小さい画面で何をするんだ、という人がいたが、Javaや画面の大型化、さらには普及が進み、携帯電話が当たり前の時代になった。ただ、あまりにも短期間でここまで来たので、やらなきゃいけないなと思いつつも、まだやっていない人が多いのではないか」と述べ、これまでの発展を振り返ると同時に、まだまだ今後も成長の余地があるとの見解を示した。


ネットプライス 代表取締役社長 佐藤 輝英氏 サイバード 専務取締役 岩井 陽介氏

着メロは“自分はこういう人間です”という主張だ

ドワンゴ 代表取締役社長 小林 宏氏
 岸原氏は各出席者の事業に深く切り込み、各氏の見解を引き出すような形でディスカッションを進行。ドワンゴの小林氏に「ほかのメディアと携帯はどういった違いがあるか」と質問すると、同氏は「コミュニケーションとファッション性が携帯電話においては重要なポイントだ。これらは本質的な欲求に根ざしたものだからだ。話のネタになるようなコンテンツが、さらなるコミュニケーションを生む。着メロのようなものは、電話がかかってきたときにさりげなく『自分はこういう人間だ』と自己主張できるツールでもある。話題になるような面白いコンテンツを開発していきたい」と、芸能人の着信ボイスやアレンジ可能な着信音など、常に新しい要素を着信メロディに取り入れてきたドワンゴならではの見解を示した。


モバイルは“ながら族”をとらえる世界一速いメディア

KCCS 専務取締役 北村 寛氏
 また、ネットプライスの佐藤氏にはコマースビジネスを手がける上でのポイントを質問した。佐藤氏は「1つはスピード、もう1つはインタラクティブ性、この2つが重要。欲しいときが買い時、というようにタイミングが一番大事だ。いかにスピーディに商品を揃え、提案できるか。携帯電話はいつでも身近にあるので、モバイルインターネットは世界でもっとも速く顧客に近づけるメディアであると思う。また、商品を売るだけではなく、それ自体がコンテンツとして捉えられるように、ギャザリングという仕組みが、1つの驚きになっており、サイトの成長につながったのではないか」と分析した。

 モバイルインターネットの“速さ”に関してさらにサイバードの岩井氏はこう補足する。「ケータイはメディアを補完するツール。テレビでURLが表示されてもパソコンに電源を入れる人は少ないだろう。また、入れたとしても、視聴者をパソコンに取られるので、補完するどころかテレビとは競合してしまう。ケータイならば『アクセスしたい、この商品を買いたい』と思った瞬間に利用できる。いろいろなメディアを補完できるのが大きな特徴だと思う」。

 一方、データセンターとしてバックボーンを受け持つ立場としてKCCSの北村氏が「アクセスのピーク時間がパソコンのインターネットより長い。学校が終わる時間から25時くらいまでずっと続いている。かつては1時間番組が終わるとトラフィックが急に増えたが、今はその傾向がなく、テレビを見ながら携帯電話を操作する“ながら族”という層が多いのではないか」と語り、コンテンツ側の発展に従って、ユーザー自体も変化していることを指摘した。


モバイルコンテンツ成長のカギは、メディアミックス

 岸原氏は「モバイルは、表現力においてテレビや雑誌にはかなわない。となると、メディアミックス(複数メディアの連携)がモバイルビジネスを語る上でキーファクターになるのではないか」と問題提起すると、佐藤氏は「ケータイの中だけでモノを買う顧客はまだ全体の過半数に達していない。雑誌などと連携し、メディア同士の相互補完が必要になる。読者アンケートのようなものをわざわざ取らなくても、夜のこの時間にこのコーナーが読まれている、といった傾向分析がアクセスから取れるというのも、モバイルと既存メディアによるメディアミックスによって生まれたメリットではないか」と語り、既存メディアとの連携の重要性を協調した。

 また、サイバードの岩井氏も「情報を得る手段としてはまだ既存メディアの方が上。ただケータイはすぐ(インターネットに)繋がっていける強みがある。常に持ち歩くというメリットもあるので、雑誌の情報からサイトにジャンプし、さらにその情報を外に持ち出す、といった連携が考えられる」と佐藤氏と同様の意見を示した。

 一方、積極的にテレビCMを打ち出しているドワンゴの小林氏は、「テレビCMの効果は大きいが、ガバッと入って、ガバッとやめられると元が取れない。退会されないようにコンテンツの中身の充実を図ることも必要だ。コマーシャルを見て“あ、そういえばやめなきゃ”といって退会者が増えるケースもある。事実、CM放映初日は退会者が多くて困った」と語り、会場を笑いで揺らした。


シンガポール進出は下地作りの段階

 また、コンテンツビジネスの海外展開について、いち早くシンガポールに現地法人を設立し、法整備や事業者との交渉など、下地作りを進めているKCCSの北村氏は「まったく比べものにならないほど遅れている」とバッサリ。「毎月20%ずつ増えているが、いかんせん分母が小さい。まず、著作権を守るような仕組みが用意されていないことが大きい。違法コピー防止機能がない端末も多い。しかし、シンガポールにも著作権を管理する組織がようやくでき、端末メーカーも防止機能に対応しだしたので徐々に環境が整ってきている」と語った。また、その内容についても「占いは思想統制と見なされて禁止になったり、グラビア画像はトリミングをうまくやらなければ許可が下りない。あらゆる面でノウハウを蓄積している段階だ」と語った。

 最後に“締め”の言葉を求められた北村氏が、「日本経済は依然厳しい状況にある。IT業界も、(サーバーや通信技術など)上流の方はアメリカに、下流のほう(ハードウェアなどの製造業)は中国に持っていかれ、真ん中に挟まれている状況にある。このような状況下で日本経済を救うのはキャラクターなどコンテンツビジネスしかないと思っている」と語り、ディスカッションは終了となった。



URL
  WIRELESS JAPAN 2003
  http://www.ric.co.jp/expo/wj2003
  ネットプライス
  http://www.netprice.co.jp/
  サイバード
  http://www.cybird.co.jp/
  ドワンゴ
  http://www.dwango.co.jp/
  京セラコミュニケーションシステム
  http://www.kccs.co.jp/


(伊藤 大地)
2003/07/18 20:19

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