12月12日~14日にかけて、ラフォーレ六本木でTRONプロジェクトやT-Engineプロジェクトの最新成果が展示される「TRONSHOW2003」が開催される。これに先立ち11日、記者発表会と内覧会が行なわれた。
■ TRONの提唱者、坂村氏「世の中は間違いなくPCじゃない」
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実行委員長の坂村健氏
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記者発表会ではまず、開催に向けて、東京大学教授で今回のシンポジウムの実行委員長でもある坂村健氏より「ユビキタスコンピューティングのためのTRON」と題した講演が行なわれた。
坂村氏によれば、2002年になってユビキタスコンピューティングへの関心が世界的に高まっており、TRONの基盤技術としての認識が高まっているという。その理由として、UNIXやLinuxといったOSよりもオープンなアーキテクチャであること、全世界で最も使われているOSであることなどを挙げ、組み込み用OSのシェアトップであることを強調した。その中で、減少傾向にあるパソコンが1億4,000万台、増加傾向にある携帯電話が4億台、そして、組み込み用マイクロプロセッサが54億台と、コンピュータの94%が組み込み機器である点を指摘。TRONがされていることや、家電機器の組込マイクロプロセッサではデファクトスタンダードとなっているTRONが、PDC方式のNTTドコモ端末のベースバンドOSにも採用されている例を挙げながら「OSの約半分はTRONだろう」と語った。
また同氏は、2002年の成果として、ユビキタス環境構築のためのオープンな開発プラットフォーム「T-Engineアーキテクチャ」を提案し、同時にミドルウェアを流通させるためのOS「T-Kernel」を発表した点を挙げた。これに伴なって同アーキテクチャの仕様研究開発や普及促進団体として「T-Engineフォーラム」を発足したことを説明。11日現在、73社の企業が参加しており、今年度末にも100社を超えると予測している。
T-Engineの応用製品として、三菱電機製のモバイルIP電話「Mobile IP TALK」を取り上げ、同製品がμ T-Engineをベースに開発されたことを説明。携帯端末関連では他にも、KDDI研究所が開発したベクター方式の2次元画像を表示させる「SVG Mobileエンジン」や、アプリックスのT-Engine用の組み込みJava実行環境「JBlend for T-Engine」、エイチアイのT-Engine向け3Dレンダリングエンジンなども紹介された。坂村氏はその中で「世の中は間違いなくPCじゃない。PCじゃないものを作ることが大切」とアピールする場面も見られた。
このほか、「eTRON」と呼ばれる公開鍵暗号を使ったセキュリティ基盤技術も説明され、SIMカードと同じ形状をした「eTRONチップ」が紹介された。YRPユビキタスネットワーキング研究所では現在、同チップを使って無線LAN、PDC、PHS、3Gといった複数の無線チャンネルをシームレスに切り替えられるよう実験を行なっているという。こうしたチップなど電子タグを使って、将来的にはあらゆる“モノ”の認識を可能にさせるという。坂村氏は、そのためには読み取り装置も同時に標準化していく必要があるとし、携帯電話などあらゆる人の手元に読み取り装置を搭載したいとしている。
最後に同氏は、「組み込み用機械を作る人たちに元気を与え、世界に貢献していきたい」と希望を語った。
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壇上から降りて説明する場面も見られた
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三菱電機製のモバイルIP電話を説明する坂村氏
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KDDI研究所の「SVG Mobileエンジン」
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エイチアイの3Dレンダリングエンジンも紹介された
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SIMカードと同じ形状をしたeTRONチップ
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eTRONのリーダーも標準化させるという
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三菱電機製のモバイルIP電話
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MIPS、ARM、SHプロセッサを搭載したT-Engineボード。
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■ アプリックス、T-EngineとJBlendを使った情報家電の操作デモ
内覧会ということもあり、11日は準備中のブースも見られた。携帯電話関連のブースを中心紹介する。
アプリックスのブースでは、同社のJava実行環境「JBlend」を採用する各携帯電話の展示や、海外のJava対応携帯電話で今後採用が予想される携帯電話向けプロファイル「MIDP 2.0」に対応した組込向けJavaプラットフォーム「MIDP 2.0対応JBlend アーリーアクセス版」などが展示された。また、JBlendのT-Engine版も展示されたおり、2003年1月よ提供を開始するという。価格は145,000円
同ブースではこのほか、参考出品として、T-EngineとJBlendが搭載されたエアコンやビデオデッキなど情報家電を、携帯電話のJavaアプリを使って遠隔操作するデモが行なわれた。携帯電話はauの既存の携帯電話を使って、ezplusで風呂の湯沸し温度の設定などがデモンストレーションされた。
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JBlendを採用する携帯電話のラインナップ
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T-Engineのアーリーアクセス版
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T-EngineとJBlendが搭載されている情報家電は携帯電話から遠隔操作が可能(参考出品)
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家庭内での構成例
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■ 「SHマイコン」用のJava実行環境をデモンストレーション
日立製作所のブースでは、日立グループのT-Engineの開発環境などの展示が行なわれた。同社の組み込み用RISCチップ「SHマイコン」用のJava実行環境「SuperJ Engine」なども紹介されたほか、日立製の無線LAN内蔵のPDA端末を使って、中継装置が受けた命令をμTRON使用の赤外線遠隔操作システムで扇風機に送信し、扇風機を遠隔操作させるデモンストレーションなども行なわれた。
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「SuperJ Engine」の横には比較用に富士通製の端末
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動作は非上になめらかな印象だった
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開発用プラットフォームの展示
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PDA端末で扇風機が停止する
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■ KDDI、ベクター形式の2Dを表示させる「SVG Mobileエンジン」
KDDIのブースでは、T-Engine上でベクター形式の2D画像の表示させるミドルウェア「SVG Mobileエンジン」のデモンストレーションが行なわれた。同ミドルウェアは車載情報端末上の社名などからハイパーリンクが行なえるほか、ユビキタス環境においてアニメーションなどの画像や情報表示などにも利用できるとしている。
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「SVG Mobileエンジン」
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ベクター形式なので拡大しても画像のふちはなめらかに表示される
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■ エイチアイ、「T-Kernel」で動作する3Dレンダリングエンジンのデモ
エイチアイのブースでは、T-Engineに搭載される標準リアルタイムOS「T-Kernel」上で動作する3Dレンダリングエンジン「Mascot Capsule Engine Micro3D Edition」のデモンストレーションが行なわれた。同社では携帯電話市場だけでなく、T-Engineを採用する組み込み機器や家電市場に対し提供していくという。
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T-Kernel上で動作する3Dレンダリングエンジン
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■ URL
「TRONトロンプロジェクト」公式サイト
http://www.tron.org/
(津田 啓夢)
2002/12/11 22:10
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