WIRELESS JAPAN 2002のコンファレンスで、KDDI 代表取締役社長の小野寺 正氏が「KDDIのモバイル&IP戦略」と題した講演を行なった。
日本は「CDMA2000 vs W-CDMAのバトルフィールド」
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KDDI代表取締役社長 小野寺 正氏
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講演は現在の市場状況とKDDIのモバイル戦略から第3世代携帯電話の戦略を中心に語られたが、小野寺氏が終始強調していたことは、W-CDMAに対するCDMA2000のアドバンテージだった。
同氏はまず、CDMA2000 1xの話題から講演を始めた。世界におけるCDMA2000 1xの普及を表わすデータを示し、特に日本・韓国・中国の東アジア3カ国でCDMA方式が普及していることを指摘。「キーボード文化の欧米に対し、東アジアでは携帯電話が馴染む共通の親指文化があるのではないか」と述べ、「東アジアからの情報発信」が我々の使命だと述べた。
また、CDMA2000 1xが800MHz帯を使用していることから、はたして3Gと定義していいのか、という従来より指摘されていた問題についても、2000年6月にITUが示した「周波数は関係ない」という方針を根拠に挙げ、「CDMA2000 1xはれっきとした3Gだ」と述べた。
この後、同氏は「少々刺激的ですが」と前置きした上で、日本は「世界で唯一のCDMA2000 vs W-CDMAのバトルフィールド」だとし、日本の情勢が今後の第3世代携帯電話の行方を占う指標になるという考えを示した。この中で同氏は、CDMA2000 1xの加入者が6月末で115万1000台と、W-CDMA方式を採用したFOMAにつけた圧倒的な差を示した上で、「我々はたった数カ月でこれだけのユーザーを得た」と勝利宣言とも取れる発言をした。
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FOMAとの圧倒的な差を示した
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cdmaOneの苦労が今実ってきているという
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CDMA2000 1x成功の秘訣は「iモード・写メールのマーケティング」
しかし、CDMA2000 1xの成功の秘訣はなんと、「写メールやiモードと同じマーケティング戦略を採ったことだ」という。
同氏によれば、cdmaOneや64kbpsパケット通信サービスの開始時に取った技術力をアピールする戦略の失敗を踏まえ、一からマーケティング戦略を練り直し、大幅な方向転換を行なう決意を固めたのだという。その際に参考になったこととして、同氏は、J-フォンのカメラ内蔵端末は「写メール」というキャッチフレーズが現われる前にも販売されていたが、キャッチフレーズ以前は全然売れていなかったこと、iモードの売れ行きが発売後6カ月間伸びなかったのにもかかわらず、ドコモが辛抱強くマーケティングを展開したことを挙げ、ねばり強くサービス中心のマーケティングを行なうことが重要だとした。
その上で同氏はCDMA2000 1xの戦略を、「CDMA2000、3Gという言葉を使わず、今までのサービスの延長線上にあることを強調する」方針にしたという。また、「顧客からみれば、方式など関係ない。問題なのは顧客が使う端末でどういうサービスがどのくらいのコストで受けられるか、それだけだと思う」と述べ、技術ではなくサービスを前面に押し出すマーケティング戦略の一環として新ラインナップに「GPSケータイ」「ムービーケータイ」と名付けたのだという。
さらに、CDMA2000 1xを「さらに快適に使ってもらうための付加価値」と位置づけたのも、「端末を4種類同時に発売し、ユーザーに選択肢を提供した」こともすべて徹底したマーケティングを展開したことによる結果だとした。
無線LANとCDMA2000 1xEV-DO、CDMA2000 1xを1台の端末で
同氏はその後、3Gにおける同社の長期的な戦略に話題を移した。まず、来年の秋にサービスインする予定のCDMA2000 1xEV-DOについて触れ、「インフラの互換性が我々の大きなアドバンテージ」と述べた。同氏によれば、cdmaOneのサービス開始当初以来、インフラ・端末メーカー・販売店4年間ノウハウを蓄積してきたことがCDMA2000へのスムーズな移行に大きく役立っているという。また、「いくら新しくてもエリアが狭くてはだめだ。エリアは文字通り、我々の商品なのだから」と述べ、「レボリューションではなくエボリューション」が重要なのだとまとめた。
また、3Gにおけるアプリケーションについても、「料金の低価格化や非音声通信、(GSMにおける)国際ローミングなど、2Gでもおおかた実現してしまっている」と述べた上で、「GPS関連のサービスや動画メールなど2Gでできることを進化させていく方法でやる」と、あくまでも「エボリューション」を重視する方針を明らかにした。
さらに携帯電話の未来について小野寺氏は、「あらゆる個人情報がつまった“パーソナルゲートウェイ”になると思う」と予測し、「P2Pの普及など、個の力が重視されるインターネットの時代に移り変わったとき、携帯電話は一番重要なデバイスとなるのではないか」と語っている。
ユビキタス時代への第1歩は「ビット単価どれだけ安くできるか」がテーマだとし、将来的に無線LANとCDMA2000 1xEV-DO、CDMA2000 1xを1台の端末で使用できる端末を出すことが最もユーザーの利益になるだろうと述べた。
最後に、同氏は「KDDIは今後、ユビキタス・ソリューション・カンパニーとしてやっていきたい」とモバイル戦略に注力することを宣言し、講演を締めくくった。
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cdmaOneとCDMA2000 1xの互換性を示す図
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cdmaOneで蓄積したノウハウがそのまま活かせるのが強みだという
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KDDIの考えるユビキタスネットワーク
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ケータイは様々な個人情報を統合する「パーソナル・ゲートウェイ」になるという
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無線LAN、CDMA2000 1xEV-DO、CDMA2000 1xのすべてに対応した端末がカギを握るのだという
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2003年秋にはCDMA2000 1xEV-DOが始動する
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・ KDDI
http://www.kddi.com/
・ WIRELESS JAPAN 2002
http://www.ric.co.jp/expo/wj2002/index.html
(伊藤 大地)
2002/07/17 19:47
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