NTTドコモ代表取締役社長の立川敬二氏は19日、PC EXPOと併催されているWORLD PC フォーラム2000で「モバイル・フロンティアへの挑戦」というテーマで基調講演を行なった。
■音声サービスから非音声サービスへ市場を拡大
基調講演で立川氏は、今年の3月に加入者数でアナログ加入回線を抜いた携帯電話市場のこれまでの成長の経緯を説明。1994年から倍々ゲームで伸びてきて、現在は利用者がPHSを含めて、日本の人口の約半分に達している。世界的には、携帯電話人口普及率で第8位(2000年7月末現在)で、第1位のフィンランドは約75%となっている。このことから、携帯電話市場は、人口比で約25%、現状から言うと1.5倍まで成長する余地がある、と述べた。
しかし、出生率の低下により利用者が減ることも考えられる上、人と人のコミュニケーション=音声通話だけのサービスでは、ある時点で成長は頭打ちになってしまう。現在の携帯電話のトラフィックは95%までが音声通話だが、PHSでは64kbpsと高速なこと、P-in comp@ctなどの製品により手軽に利用できることから、データ通信がトラフィックの約60%を占めるようになっていると解説。現在の携帯電話サービスの弱点である、セキュリティと高速通信への対応を、Javaの採用とW-CDMAの導入で強化し、音声通話以外のサービスを伸ばしていきたいと述べた。
立川社長は、「人と人」の道具から、「人と機械」「機械と機械」の用途へと、携帯電話の用途を広げていく方針を述べた。
「人と機械」とは、人が機械を利用する、データ配信サービスなどを指す。具体的には、iモードをはじめ、現在サービスを実験中のPHSを利用した音楽配信サービスや、最近ドコモがよく展示している映像配信サービス(映画の予告編などの配信を考えているという)、GPS、Webブラウズなどだ。
「機械と機械」とは、テレメトリングや遠隔操作、自動制御などで、例えば、物流に移動体通信を利用してPOSサービスのような在庫や売れ筋の把握のようなサービスがこれにあたる。こうしたサービスはすでに一部で実用化されている。
■ 2010年には、8000万人が平均3台の端末を持つ
立川社長は、「iモードの成功が注目されているが、いままでドコモが手がけたものが全部成功したというわけではない。ドコモではクルマ、自転車、ペットなどをはじめ、動くものはすべて移動体通信サービスの市場となり得ると考えている。また、自動販売機などの機械にもすでに一部で移動体通信端末が導入され始めている。これにBluetoothが導入されれば、携帯電話での料金清算などもすべて行なえるようになる。“いつでも、どこでも、誰とでも、何とでも”をコンセプトにいろいろなことをやっていく。その中で当たったものが残っていく、ということになるだろう」と述べた。
移動体通信の市場規模については「2010年には、約8000万人が常時携帯電話を持って歩くようになっていると考えている。現在の携帯電話だけでなく、自動車に内蔵されていたり、携帯機器に内蔵されていたりという形で利用が広がっていると考えられるので、8000万人の人が平均約3台の端末を持っていると予測している」と述べた。ただし、「8000万人が平均3台持つと2億4000万台になり、これは現在の約4倍にあたるが、市場規模としては、利用価格が下がっていくのでそのまま4倍にはならない」として、2010年の国内移動通信事業者全体の売上規模は約21兆円程度になるだろうとの見通しを示した。
■ URL
NTTドコモのホームページ
http://www.nttdocomo.co.jp/
WORLD PC EXPO 2000のホームページ
http://wpc.nikkeibp.co.jp/wpc/
(工藤 ひろえ)
2000/10/19 17:45
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