法林岳之: ソフトバンク インターネットマシン 922SH
ケータイの市場が大きく変動したと言われる2008年。特に、端末の販売については、昨年開始された新販売方式の影響を受け、全体的な売れ行きが低下したと言われる中、売れ筋にも少し変化の兆しが見えている。ユーザーが長く使うことを考え、普及モデルよりも高機能モデルが売れたり、ネットブックとの組み合わせで、商品そのものを極端な割安価格で販売することにより、データ通信アダプタが好調な売れ行きを示したりと、今までと少し違った傾向が見えている。
一方、2008年の端末を振り返ってみると、定番路線のケータイが着実に進化を遂げる一方、今までにない新しい路線のケータイも登場している。なかでももっとも話題性をあったものと言えば、やはり、『iPhone 3G』だろう。iPhoneについては2007年にGSM版が登場し、2007年秋からはほぼ同じユーザーインターフェイスを持つiPod Touchが国内でも販売されていたため、ある程度、予備知識があったとは言え、それでも7月11日の国内発売は今までのケータイ業界にはなかったほどの大きなインパクトを与え、IT業界全体で見てもWindows 95や初代iMac発売のときに匹敵するほど、歴史的な一日となった。ただ、端末そのものについては、非通知着信拒否など、ケータイの基本である『電話』機能が不足していたり、コピー&ペーストができないという今どきのデジタルツールらしからぬ仕様だったりと、革新的なユーザーインターフェイスの割に、基本機能が不十分だった感は否めない。今後の機能向上に期待したいところだ。
また、キャリア別で見た場合、NTTドコモは夏モデルまで従来路線を継承し、冬モデルからネーミングルールも含め、大きくラインアップ構成を変えてきている。4つの新ラインアップと新しいネーミングルールに対する評価は、今後のユーザーの反応を見るしかないが、この1年に登場した端末では、Style Changeという新機軸を打ち出した『N-01A』、CCD 8メガピクセルカメラを搭載した『SH-03A』『SH-01A』、歩数計連動グラフィックで楽しませてくれた『N706ie』、世界的なブランドとのコラボレーションを実現した『PRADA Phone by LG』などが印象に残った。
auは昨年末に発表したKCP+採用端末の開発が遅れ、発売した端末も不具合が続き、キャリアとしてもユーザーとしても試練の1年だった。しかし、そんな状況においてもauが従来から推し進めてきたライフスタイル路線が一段と具体化し、今までとは違ったテイストの端末も少しずつ増えている。ランニングやウォーキングというライフスタイルに特化した『Sportio』、au向け初の光学ズームを搭載した『Cyber-shotケータイ W61S』、ワンセグを搭載した防水タフネスケータイ『G'zOne W62CA』、外装パーツを丸ごと変更できる『フルチェンケータイ re』、業界最高峰の8Mピクセルカメラを搭載した『EXILIMケータイ W63CA』など、硬軟を取り混ぜたラインアップが印象的だった。また、端末ではないが、手軽にLISMO Videoを楽しめる『au BOX』も非常に存在意義があるエポックメイクな製品と言えるだろう。
ソフトバンクについては、iPhone 3Gばかりが注目されたが、実はそれ以外にも話題性のある端末をいくつも投入し、ユーザーの目を楽しませてくれた。たとえば、外見で今年最大のインパクトを残したケータイと言えば、これはもう『フォンブレイバー 815T PB』しかないだろう。テレビ東京系列で放映されているドラマ「ケータイ捜査官7」に登場する端末を再現したものだが、正面切って、これを発売できるソフトバンクの姿勢にはかなり驚かされた(笑)。堅実な路線としては、完成度を一段と高めた『AQUOSケータイ 923SH』やCCD 8メガピクセルカメラを搭載した『930SH』などがあり、新しい進化を感じさせるものとしては『AQUOSケータイ フルタッチ 931SH』も注目された。
しかし、最終的に筆者が「俺のケータイ of the Year」として選んだのは、ソフトバンクのシャープ製端末「インターネットマシン 922SH」だ。国内ではウィルコムのW-ZERO3登場以降、スマートフォンが注目を集め、今年の秋冬モデルではバリエーションもかなり増えた。しかし、スマートフォンはソフトバンクで言うところのYahoo!ケータイによるコンテンツ閲覧ができなければ、ワンセグも観ることができない。つまり、『日本のケータイらしい使い方』ができないわけだ。
これに対し、インターネットマシン 922SHは通常のケータイと同じプラットフォームを採用しながら、スマートフォンのようにフルキーを装備した端末を実現した。使い勝手の面も工夫されており、特に横画面をきちんと使えるようにした点は高く評価できる。最近、横画面での利用を可能にした通常デザインの端末が増えているが、分割表示した半分の画面しか利用できなかったり、機能によって、縦画面に切り替えなければならないなど、横画面を十分に活かし切れていない端末が多い。これに対し、インターネットマシン 922SHは横画面のまま、コンテンツ閲覧やメール作成ができるうえ、メールの受信ボックス画面も左にフォルダ一覧、右にメール一覧といった具合いに、きちんと横画面を活用できるようにしている。ワンセグの映像やフルブラウザの画面など、ケータイで利用できる機能に横画面に適したものが増えて来つつあるが、インターネットマシン 922SHはそれらを先取りする形で、しっかりとサポートしている。新しいケータイのカタチを創造しながら、基本的な機能を充実させ、これからのケータイの進化の方向性を見据えた端末として、ソフトバンクのシャープ製端末「インターネットマシン 922SH」に「俺のケータイ of the Year」を送りたい。
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