レビュー

楽天モバイル、auとのローミングを終えた吉祥寺駅周辺の繋がりやすさを体験してみた

 今春サービスを始めた“第4の携帯電話会社”である楽天モバイル。当初はauからのローミングサービスを活用する形だが、10月22日から、東京・大阪・奈良の一部で、ローミングが段階的に終了している。

 今回、ローミングを終えた地域のひとつである吉祥寺駅周辺を訪ね、 楽天モバイルの繋がりやすさ を体験してみた。

 筆者が体験した場所は、駅を中心としたごく限られたものでしかないが、繋がりやすい場所とそうでもない場所との違いがあった。手にしたのは楽天モバイルのSIMカードを装着したSIMロックフリー版の「Pixel 5」。電波の強さを示すスマートフォンアプリとともに歩いた。

auのローミング、終了した場所は

 楽天モバイルでは、MNO(モバイルネットワークオペレーター、自社で基地局設備を展開して携帯電話サービスを提供する事業者のこと)として、全国でのサービスエリア拡大に注力している。

 自社で基地局を設置し、全国各地にエリアを広げる中で、整備が済んでいない場所ではまずauのローミングを受けてきたが、人口カバー率が70%を超えた地域については、両社は継続・終了を決めることになっている。その最初の場所が、10月下旬になって初めて開示された。

 なお、23区内の屋外はもともと楽天モバイル自身が担うエリア。23区内、そして今回ローミングが終了したエリアでも、駅構内や地下鉄、大規模な商業施設ではauのローミングサービスが利用できる。

吉祥寺、まずは北側から歩く

 吉祥寺駅は、その周辺に数多くの飲食店、小売店、大規模商業施設がある一方、10分ほど歩けば住宅地にも面するという地域だ。

 今回は、JR吉祥寺駅の中央改札を出て、駅の北側から反時計回りでぐるりと歩くことにした。吉祥寺本町1丁目から、五日市街道を渡り、東町1丁目の住宅街を抜けた。西に転じて店舗の多い地域を目指した。

 駅の北東にあたる場所だが、電波は弱い傾向にあった。スマートフォンの電波感度測定アプリでは、感度の良さに応じて、高い場所から緑、黄色、赤で表示するようになっていたが、おおむね赤、といった形だ。

 おりを見て通信速度を測定(今回は、My楽天モバイルの機能、グーグル検索のスピードテスト、Fast.comを利用した)してみると、たとえば駅前では6.5Mbps。吉祥寺に向かう列車内で測定した際には、26Mbpsを超えていたこともあったので、やや拍子抜けした印象を抱いてしまう。

 特に厳しかったのは東町1丁目周辺だ。

 その直前の五日市街道に面した交差点では、下り17Mbpsと、手応えのある速度だった。

下り17Mbpsでいい感じと思ったが……

 しかしその後、住宅街に入ると、電波感度は厳しい。空き地のある場所では10Mbpsとそこそこの速度だったが、細い道をいくと、五日市街道に入る直前で圏外になってしまったところもあった。実際に近辺にあるコンビニエンスストア内では、手狭な店でも奥のほうでは圏外になった。

 こうした結果から、駅北東部は自宅内でも奥まった場所では圏外になるのではないか? と感じさせる状況だ。

北西の商業施設周辺は良好

 駅前に戻り、西側のにぎやかな街を歩いてみる。良い雰囲気のお店が多く、歩くだけでも楽しめるような場所だ。

 このあたりは全般的に電波が良好で、繋がりやすさに不安を覚えることが少ない。特に良好だったのは、駅北西にある東急百貨店の近くで、速度測定では30Mbpsを超えたところもあった。

東急百貨店のすぐそばで、この日最高の30Mbps

 大型商業施設の中はauのローミングサービスに切り替わるところが多かった。たとえばコピス吉祥寺、西友、東急百貨店、アトレといったあたりで、ユーザーからすると、高速通信時は通信量を消費するものの、繋がるという点では不安はない。

駅南の繋がりやすさは

 吉祥寺駅近くの人気スポットと言えば井の頭恩賜公園が挙げられるだろう。今回はごく一部を歩くに留まったが、屋外の開けた場所ということもあってか、楽天モバイルの電波環境はそれなりに良かった。

 その後、駅南東方面に行くと、電波感度は厳しくなった。圏外とまではいかないが、ぎりぎり繋がっているといった印象だ。

 ただ今回の調査は、駅北からスタートし、南東は最後に訪れたため、時間や体力の都合で、広く練り歩くことはできなかった。

基地局がまだまだ少なめか

 10月から、一部とはいえ、auとのローミングが終了するという一報を受けたときには正直とても驚いた。もっと率直に言えば「まだ早いのでは?」と感じたほどだ。だが、このエリアの拡がりの速さは、素晴らしいことだと思う。

 11月12日に開催された楽天の決算説明会では、楽天モバイルの基地局設置がとてもスピーディと紹介されていた。他社では数時間かかる立ち上げも、数分で済むというのだ。なるほど、実際に全国展開のスピードもアップしており、想像以上に楽天モバイルの奮闘がエリアカバーに表れているのだろう。

 とはいえ、今回、吉祥寺駅周辺を歩いてみた結果、これまで記した通り、「西は良好、東はいまいち」という電波環境だったという印象を受けた。もちろんこれは、駅周辺でもごく一部のエリアであり、そのまま楽天モバイルの実力というには早計だ。

 それでも東西で電波の強さが違うという点は、かなり明確に出ている。単純な考え方かもしれないが、西側には基地局設備があるものの、東側が手薄なのか……と思える。圏外になるまでには至っていないが、手薄なエリアを生活圏とする既存ユーザーにとっては、使いづらい場面が増えたように感じているのではないか? と想像が膨らむ。

 楽天モバイルには、現状の展開スピードは維持しつつ、さらに今後は、人口カバー率70%を達成した地域であっても、薄く塗るだけではなく、基地局をもう少し増やして、エリアカバーをもっと濃くして欲しい。アンテナは立っても、かつて「パケ詰まり」という表現が生まれたように、通信できないという状態に陥ってしまうこともある。世界最大級のO-RANでのヘテロジニアスネットワークと、アンテナと無線機が統合された設備などで1局あたりのカバレッジが、従来の技術と比べ30~40%増えるということだが、その恩恵をユーザーへもっともっと体験できる形にして欲しい。

11月12日の決算会見で示された資料

 これからしばらくの間、楽天モバイルには付与された4Gおよび5Gでの電波でしっかりエリアを構築することが求められるだろう。

 その一方で、筆者は楽天モバイルだけではなく、総務省のアクションにも期待している。たとえば、もっと携帯電話のエリア拡大に適した低い周波数帯を楽天モバイル向けに割り当てられるよう、確保することに取り組めないだろうか。もちろん、そんな周波数帯がどこにある? という指摘もあるだろうが、総務省が動かなければどうしようもない。1.7GHz帯でのエリア展開の難しさは、8年ほど前、ソフトバンクが強く強く主張したことからも、ある程度、察することができる。“楽天モバイルの努力”も必要なのは重々承知しているが、競争をもっと活発にさせるための一手が欲しい。

 もちろん総務省、そして国民を動かすためにも、楽天モバイルには、これまで以上にエリアカバーへの注力が求められる。通信サービスは、エリアの広さだけではなく、品質も重要だ。はたして楽天モバイルはどれほどのスピード感でさらなる品質向上を図るのか。数カ月後、また吉祥寺の街を歩いて、どう変化するのか、体験してみたい。

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