レビュー

iOS 13ファーストインプレション

ゲーマー必見のApple ArcadeとPS4コントローラー対応

 9月20日にiPhone 11が発売されるが、同日、iOS 13も配信される。iPhoneの場合、新製品に買い換えなくとも、毎年OSアップデートで新機能が追加されたりするのが恒例で、iPhone 11発売よりもiOS 13配信の方が影響を受ける人も多いだろう。

 今回はアップルからお借りしたiPhone 11とiPhone 11 Pro MaxでiOS 13を試すことができたので、大きな変更点をピックアップして解説レビューをお届けする。

iOS 13は9月20日配信。iPad向けのiPadOSは10月1日配信

 iOS 13は9月20日、iPhone 11の発売日と同じ日に配信される(時刻はアナウンスされていない)。例年は新iPhone発売より数日前に配信開始することが多いのだが、今回は新iPhoneとほぼ同時の配信となる。

 iOS 13からはiPhone/iPod touch専用となり、iPadには別の「iPadOS」が配信される。ベースは同じだが、いろいろ特性が違うので名前などを分けたということだろう。iPadOSはやや遅れ、10月1日配信予定となっている(編集部注:iPadOSの配信日は前倒しされ、9月25日となった)。ちなみにMacOS Catalinaは10月登場とアナウンスされている。

 iOS 13をインストールできるのは、iPhone SE/6s/6s Plus以降とiPod touch(第7世代)となる。iOS 12に比べると、iPhone 6/6 Plus/5sが足切りされた。

 今回、iOS 13のレビューにはアップルからお借りしたiPhone 11を用いているため、旧モデルでのパフォーマンスは検証していない。iOS 13の特徴として、アプリ起動の高速化やアプリサイズの縮小が上げられているので、旧モデルにもそこそこ優しいアップデートになると思われる。

 心配な人は1週間くらい様子見しても良いと思うが、可能なのにいつまでもOSをアップデートしないというのは、良い判断ではない。最新のOSでないと、新機能が使えないだけでなく、セキュリティアップデートが提供されなくなったり、動かないアプリが出てきたりもするからだ。最新OSに対応しない古いiPhoneは、それは製品寿命だと考え、新製品への買い換えを検討しよう。

 iOS 13へのアップデートは、例によってiPhoneの設定画面から簡単に行なえるが、例によって大容量なのでWi-Fiは必須で、可能な限り充電しながら行なおう。データは消さずにアップデートできるはずだが、トラブルに備えて事前にバックアップを取っておきたい。

ついにiOSも「ダークモード」をサポート

設定画面の「画面表示と明るさ」でダークモードを設定できる。コントロールセンターにオンオフアイコンを追加することも可能

 iOS 13では「ダークモード」がサポートされる。この機能をオンにするとiPhoneが闇の力に目覚めてバッテリの持ちが良くなる、なんていうことはなく、画面全体が「黒地に白文字」のような暗いデザインに変更される(有機ELならバッテリの持ちが良くなるかもしれない)。

 これは「暗い場所で使うときに目の負担を減らす」ことを狙った機能だ。macOSでは昨年から対応していて、筆者も愛用している。発表会や飛行機内など暗い場所でMacBookを使うときにも目が疲れないのと、やたら周囲が明るくならないので便利なのだ。

 ダークモードに切り替えると、「設定」や各種標準アプリが一括して「黒地に白文字」に変更される。時間帯に応じて自動切り替えすることも可能だ。サードパーティ製アプリも、ダークモードが実装されていて、iOS 13に対応していれば、一緒にダークモードに切り替わる。

 たとえばTwitter公式クライアントは、以前からダークモードに独自対応していた。Twitterアプリ内で設定変更する必要があったのだが、これがiOS 13だと全体の一括変更時に一緒にTwitterアプリもダークモードに変更される。

 しかし対応アプリはまだ少ない。Facebookはいつも新機能・新仕様への対応が遅いのでまぁ良いとして、筆者が気がついたところだと、たとえばテキストエディタアプリ「iA Writer」は独自にダークモードを実装しているのに、全体の一括変更に連動していない(ちなみに同アプリのMac版は一括変更連動する)。このあたりの対応はゆっくりと待つしかなさそうだ。

 ちなみに有機ELのiPhoneの場合、画面が暗いと電力消費が抑えられるため、ダークモードでバッテリーの持ちが良くなる可能性はある。焼け石に水程度の差しかないかも知れないが、やらないよりはマシだと思うので、有機ELモデル(iPhone X/XS/11 Pro)では試してみてはどうだろうか。壁紙を黒一色にするのもオススメだ。

「カメラ」「写真」アプリの強化

43歳オッサンwith無精ヒゲもこの通りすっきり。アップルは写真作例にいろいろな人種を使うが、もっとオッサンをフィーチャーして欲しいと思う

 標準アプリの「カメラ」と「写真」にもいろいろ変更が加わっている。

 まず「カメラ」アプリには、ポートレートモードのライティングコントロールや、ライティングに新種(ハイキー照明)が加わった。ただしこれはポートレートモード対応iPhoneでしか利用できない。

 プロカメラマンによるスタジオ撮影では、人物にやたら光を当てて肌のトーンをフラットにする、という基本ワザがある。iOS 13のライティングコントロールはそれをソフトウェア処理でやってしまおう、というものだ。Androidスマートフォンによくある美肌モードに似た効果がある。美肌モードと言わないあたりがアップルらしくもある。

QRコードスキャナ。画面内にQRコードを入れると画面遷移してしまうのでスクショが撮れない問題

 あとはQRコードスキャン機能が若干変更された。iOS 12では「カメラ」アプリ起動時、QRコードがフレームに入れば自動でスキャンし、通知をタップすればWebページが表示されるという形式で、コントロールセンターのQRコードアイコンでも普通のカメラが起動していた。しかしiOS 13ではコントロールセンターのQRコードアイコンから独自のQRコードリーダーアプリが立ち上がるようになっている。こちらのアプリの場合、フレーム内にQRコードが入ると、タップ操作なしにWebサイトが自動表示される。このアプリ、タスクスイッチャでは呼び出せないし、地味に正体不明な存在でもある。

写真アプリ。サムネイルサイズが大小様々になっててわりとカオスに見えてしまう

 「写真」アプリは標準的な写真サムネイルの表示方法、アプリ内で言うところ「写真」タブの表示方法が変わった。従来は撮影地と撮影日時から複合的に判断して写真をグループ化し、同じサイズのサムネイルをずらっと並べていたが、iOS 13ではグループ化法則が変わり、サムネイルサイズも写真ごとに変わるようになっている。写真のグループ化については、正直なところいまいち法則性がわからない。しばらく使ってみないことには便利なのかどうか、ちょっと判断しづらいところでもある。

Apple Arcadeだけじゃない! PS4コン/箱コン対応でiPhoneがゲーム機化?

Apple Arcade。App Storeのタブの一つとして追加される。代わりにアップデートのタブがなくなっている

 iOS 13と同時にアップルによるゲーム配信サービス「Apple Arcade」が開始される。これはApp Store内のストアのようになっていて、月額600円を支払うと、Arcadeのゲームがすべて追加課金なしでプレイし放題になるというものだ。ネットフリックスのゲーム版みたいなイメージだろうか。

 サービス開始時点でArcadeでは、100以上の新作タイトルが配信されているという。ミニゲーム的なものがメインかなと思っていたのだが、ちょっとストアを見た感じ、けっこう本格的なタイトルもいくつかあるように見えた。今後、タイトルが拡充されていくかは、Arcadeの契約者数が増えるかどうか次第だが、とりあえず現時点でも、タイトルの質・量ともに月額600円の価値は確実にあると思う。例によって初月無料なので、興味がある人はまず試してみることをオススメしたい。

「Oceanhorn 2」というアクションアドベンチャー。DUALSHOCK 4でプレイすると、家庭用ゲーム機とほぼほぼ同等のプレイフィールになる

 1976年生まれのオッサンゲーマーである筆者は、幼少期から「5000円払ってクソゲーを掴まされる」などの経験を繰り返してきた。それなのにいまや月額600円で遊び放題、クソゲーアプリは消すだけで損はせず、そもそもどのゲームのクオリティもそこそこ高いなんて「前世でどんだけの功徳を積んだらこんな快適なゲームライフを送れるんだよ」と感じるくらいだ。

 とはいえ、ゲーマー視点で見ると、やはり2000円くらいの買い切りタイトルや基本無料タイトルの方が実績もあるし、クオリティが高いものもあるので、Arcade登場後もArcade以外のゲームも引き続き重要だろう。しかし有名タイトルがArcadeに登場するようになれば、状況は変わるかなとも思う。すでにセガの「ソニックレーシング」のような有名IPを使ったゲームもArcadeで配信されているが、こうした大手メーカーの動きに注目したいところだ。

 あと、iOS 13ではPlayStation 4のコントローラー(DUALSHOCK 4)やXboxのコントローラー(一部モデル)を利用できるようになった。人によっては意味のわからないアップデートだが、大きな機能追加である。

 もともとアップル向け(MFi)のゲームコントローラーというのがあり、一部のゲームはコントローラーでプレイ可能だった。しかしMFiゲームコントローラーは製品数も取扱店舗も少なく、価格はやや割高(たいてい6000円以上する)で、あまり普及していない。普及していないものだから、ゲームコントローラーに対応したゲームも少なかった。

DUALSHOCK 4。PSボタンとSHAREボタンの同時長押しでペアリングモード。ただし従来のMFiコントローラーもなのだが、どうにも初期接続が不安定でもある

 しかしDUALSHOCK 4はPS4所有者ならばすでに持っているし、家電量販店などでも購入しやすい。価格は6000円くらいするが、PS4だけでなくWindowsパソコンでも使える。以前よりもiPhone/iPadでゲームコントローラーを使う人は増えそうで、そうなると対応タイトルも増えることが期待できる。タッチパネルディスプレイだけでプレイするのと、ゲームコントローラーでプレイするのでは、ゲーム体験に天地ほどの差があるので、対応タイトルの増加に期待したいところだ。

標準アプリでは「ファイル」アプリがUSBドライブなどに対応

「Discord」アプリが早くもミー文字貼り付けに対応していた。画像添付できるアプリなら使える模様

 このほかにもiOS 13ではいろいろな標準アプリや標準機能が強化・改善されている。

 コミュニケーション系ではミー文字と「メッセージ」アプリが強化され、ミー文字を「メッセージ」以外のアプリに貼り付けられるようになったり、「メッセージ」のプロフィール画像を作れるようになった。サードパーティアプリでもミー文字を使いやすくなったのは面白い。

 「ヘルスケア」も強化され、UIが改善されたほか、月経周期トラッキングや音・耳や口腔などのデータを扱うようにもなっている。また、過去の長期的なデータの閲覧性も向上しているようだ。

 実用系アプリは多数の強化があり、とくに「リマインダー」はメッセージ内容から自動でサジェストしたり、写真などを添付できたりと、大幅に改善されている。「メモ」アプリはサムネイル表示や共有フォルダなどが追加された。

「ファイル」アプリでUSBメモリが読めるように。パソコンのEFI書き換えに使ったUSBメモリだったけど、普通に読み込めてしまった

 「ファイル」アプリは大きく進化していて、外付けUSBドライブやNASなどのファイルサーバーに直接アクセスできるようになった。USBドライブは別売りの「Lightning - USBカメラアダプタ」(純正品、2800円)などで接続できるが、USBドライブによっては電力不足で動かないこともあるので注意しよう。

 かつてiOSは自由なファイル管理ができないと言われていた。現在もiPhoneローカルストレージ内は、iCloud Drive対応アプリの共有フォルダしかアクセスできないものの、iOS 13ではiPhoneで開けないファイルをUSBドライブから読み出し、アプリやAirDropで共有するといったこともできるようになるので、かなり自由度が高まったと言えるだろう。

アプリ以外の基本操作や基本機能も多数改善

長押しでサブメニューを表示するように。3D Touchはなくなっていきそう

 テキスト編集関連では、スクロールバーのドラッグ、テキスト選択の改善、コピペの3本指ピンチジェスチャ、UNDOの3本指スワイプジェスチャなどが加わった。3本指ジェスチャは正直、6.5インチモデルでも若干ツラいので、これは慣れるまで苦労しそうだし、どちらかというとiPadOS向けとも思われる。

 基本操作では、最新モデルで3D Touchが廃されたことに伴い、ホーム画面のアイコン長押しは3D Touchのプレスと同じ、サブメニュー表示になった。アイコン移動・アプリ削除をするときは、長押しから指を離さずにドラッグする操作となる。

 システム関連では、iPhone XR以降でDolby Atmosに対応する。てっきりiPhone 11独自機能かと思ったのだが、ワイドステレオ対応機種ならOKなようだ。

iPhoneはわりと長期使い続けやすいが、製品寿命に対しバッテリが先に劣化しがちなので、劣化を抑える機能追加はありがたい

 2年3年とiPhoneを使い続ける際にバッテリ寿命を延ばす最適化機能も追加されている。これは毎日、どの時間帯に充電しているかを学習し、必要がない限り、80%以上の充電をしないようにするというものだ。リチウムイオン二次電池は100%状態で自然放電を防ぐ充電、いわゆるトリクル充電が続くとバッテリ劣化を起こすとされているので、それを防ぐための機能とみられる。同様の機能はAndroidスマートフォンの一部機種でも導入されている。iOS 13では設定の「バッテリー」-「バッテリーの状態」からオン・オフを切り替えられるが、デフォルトではオンになっているようだ。

省データモードはWi-Fiアクセスポイントごとに設定できる

 あとはモバイル通信・Wi-Fiともに「省データモード」というのが追加されている。各アプリによる通信を減らすという機能で、Wi-Fiについてはアクセスポイントごとに設定できる。たとえば根元が4Gのルーターに接続するときは、データ通信を減らす、といった設定が可能なわけだ。どのアプリがどのくらいデータ通信を停止するか、詳しくはわからないが、たとえば写真アプリが一時的に同期されなくなったりするようだ。

 セキュリティ関連では、新たに「Sign in with Apple」という、他社のサービスにApple IDでサインインするという機能が追加される(要2ファクター認証)。これはオンラインサービスでもあるので、まだ試せていないが、サービスごとにランダム文字列のメールアドレスを作成できるというのがユニークなポイントだ。

 このほかにもプライバシー保護とセキュリティ関連では、各アプリの位置情報使用許可が細かくなったりと、引き続きアップルは力を入れているところなので、サードパーティのアプリやサービスがどう対応してくるかを含め、楽しみにしたいところだ。