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かざして台風情報を表示する「ARカード」、観光に薬局検索も

“次世代ARアプリ”が今冬登場

 国連社とサイバネットシステム、エルバホールディングスは、AR(拡張現実)技術を搭載し、さまざまな分野のコンテンツを利用できるiOS/Androidアプリの提供を今冬に開始する。iOS/Androidに対応し、ダウンロードは無料。

「次世代型AR搭載アプリ」イメージ

 3社が開発中のARアプリは、ひとつのアプリ上でさまざまコンテンツを提供するプラットフォーム。3社はそれぞれのコンテンツ提供者向けにサービスを開発し、ARアプリ上で配信する。開発中のサービスは、「危機災害情報 ARカード」や「絵本AR」、「ヘルスケアAR」など。

 発表会で登壇したサイバネットシステム 執行役員の加苅政猛氏によると、今までのARアプリでは、提供する文字情報や画像や動画といったコンテンツを差し替えられるものはあったが、3者が開発中のARアプリはさらに踏み込んで、コンテンツの見せ方「シナリオ」もカスタマイズできる。

左から、サイバネットシステム 代表取締役副社長執行役員の野沢仁太郎氏、国連社 代表取締役会長兼社長の青山秀生氏、エルバホールディングス 代表取締役社長兼国連社 AR事業本部本部長の副島直子氏
加苅政猛氏

 コンテンツ提供者にとっては、ARエンジンやアプリのプログラム部分の開発は不要で、すでに提供されているサービスがあれば、その開発リソースを流用できるため、要望に応じたアプリを低コスト、短期間で開発できるという。

 基本的なプログラムは共通のものを使用するため、検証作業やアプリストアの審査も必要なく、3日~1カ月程度でサービスを提供できる。サービスの提供形態は、クラウド型とダウンロード利用型の両方を検討している。

 アプリ自体が多言語も対応しており、シナリオを多言語で用意すれば複数言語を切り替えられるため、訪日外国人への案内にも活用できる。そのほか、ARエンジンは空間認識を備えた従来より高度なものを採用している、アプリ利用時のリアルタイムログ機能を備えるといった特徴を持つ。

空間認識機能のデモンストレーション

危機災害情報 ARカード

 開発中のサービスのうち、「危機災害情報 ARカード」は、紙のカードをかざすことで、災害発生時の避難情報や、地域の観光情報を得られるというもの。3社が県単位で地域の自治体や協賛企業とともにサービスを提供する。

危機災害情報 ARカード

 サービス開始当初は、福岡県と、兵庫県、長野県、東京都で提供される。カードは各県ごとに、観光案内所や交通機関、協賛店などで無料配布される。カードの表面をスマホでかざすと、その場所での災害情報や、避難場所の情報を確認できる。

 例えば台風災害時には、地図上で発生中の台風をアニメーションで表示するほか、スマホを空間上にかざして発生中の台風が迫ってくる方向を確認できる。

 カードの裏面をかざすと、地域の観光情報を表示する。店舗のホームページや動画を再生したり、店舗のパノラマ写真を再生したり、地図上に表示して方向案内したりできる。

絵本AR

 絵本ARは、教育関連事業を手がけるS2と文溪堂が提供するサービス。紙の絵本の1ページにスマートフォンをかざすと、絵本に描かれたキャラクターが画面内で浮きだして、セリフを話す。複数の言語を切り替えて多言語で再生できる。

 さらに、録音機能を備えており、遠方に住む祖父母が録音して読み聞かせに利用したり、子ども自身が録音して将来再生するなど、その時に撮った音声を残せるのが特徴。

絵本AR

ヘルスケアAR

 ヘルスケアARは、日経印刷が提供するもの。悩んでいる症状を入力すると、症状にあった薬が一覧表示される。薬を選ぶとAR画面上で近くのドラッグストアを表示して案内する。各店舗の商品管理システムと連携して薬の陳列棚の位置を表示する機能も備える。

ヘルスケアAR

アーティストガイドに店舗ガイド、観光ガイドも

 障害者アーティストをプロデュースするプロジェクト「だんだんボックス」は、作品を紹介するサービスを提供予定。宇宙や海中などのVR空間やAR画面上に作品が浮かぶように表示されて、作品をタップすると紹介画面が見られるというもの。「だんだんボックス」は、「危機災害情報 ARカード」の裏面デザインも担当するという。

だんだんボックス

 東京・浅草で日本各地の物産や伝統工芸品を販売する「まるごとにっぽん」は、店舗ガイドのサービスを提供する。日英中の多言語対応で、AR画面上でキャラクターが店舗まで案内するほか、店舗のフロアロゴをかざすとフロアガイドを表示する。

まるごとにっぽん

 そのほか、長崎県の観光施設ハウステンボスの代表取締役社長 澤田秀雄氏が登壇し、ハウステンボスの園内ガイドに同アプリの活用を検討していることを明かした。また、日本医師会の会長 横倉義武氏は、「危機災害情報 ARカード」を被災時の訪日外国人や緊急医療チームで活用することへの期待を語った。

ハウステンボス 代表取締役社長 澤田秀雄氏
日本医師会 会長 横倉義武

石井 徹