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「au回線は決して無駄ではなかった」、mineo囲み取材の一問一答

iOS問題は決め手のひとつ、マルチキャリアで独自性を強化へ

 ケイ・オプティコムは、MVNOサービス「mineo」に関して、5月26日に都内で記者向けに「mineo 2015年度 新事業戦略発表会」を開催した。発表内容のニュース記事プレゼンテーションと質疑応答のニュース記事は別に掲載している。

 本稿では、発表会後に実施された囲み取材を、一問一答の形式でお届けする。囲み取材にはケイ・オプティコム 代表取締役社長の藤野隆雄氏と、同社 モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの津田和佳氏が応じた。なお、一部は津田氏に個別に取材した内容になっている。

ケイ・オプティコム 代表取締役社長の藤野隆雄氏(左)、モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの津田和佳氏(右)

――au回線とドコモ回線はどう違い、どうアピールされるのか。

藤野氏
 iOSの対応。ネットワークの品質やスピードには、基本的な差はない。

――ドコモ回線を導入することで、mineoの端末戦略はどうなるのか。

藤野氏
 ドコモ回線を入れることで、(提供可能な端末の)バリエーションは増える。一方で、ドコモの端末はたくさん流通しており、それのSIMカードを入れ替えるというだけの人もかなりいるだろう。我々が直接(SIMロックフリー端末を売る)ということについては、それほど気にしなくてもいいかなと思っている。

津田氏
 できれば、SIMロックフリーの端末については、(ドコモ回線向けも)提供することを検討していきたい。具体的にいつ、という部分までは決まっていない。

――ドコモ回線の導入は、iOS非対応などで、mineoのau回線では伸びが期待できないという考えもあっての施策か?

藤野氏
 その部分は、ないと言えば、嘘になる。

――それはどの段階で構想していたのか?

藤野氏
 ドコモを含めたマルチキャリアMVNOは、当初からイメージとして持っていた。最初にどちらからスタートするかと考え、ブルーオーシャンであるau回線からスタートした。1年が経過し、いよいよマルチキャリアに踏み出した、というところ。

――マルチキャリアでないとダメだと判断した要素は?

藤野氏
 (将来構想において)災害時に生き残っているほうの回線を利用できるといった、自由に回線を選択できるのがいいなと考えた。

――iOSの問題が決め手になった?

藤野氏
 それも決め手のひとつ。ドコモ回線を導入できればiOSの問題は基本的に解決できる。

――仮にiOSの問題がなければ、マルチキャリアでなくシングルキャリアのままだったのか。

藤野氏
 いや。MVNOとして、世の中に2つ、3つある通信網のどれか1つしか使えない、というのは選択肢として狭い。いずれマルチキャリアにしたと思う。

――最初にau回線を選んだことへの評価は?

藤野氏
 ユーザーの選択肢を増やすという意味で、決して無駄ではなかった。

 au回線を使うMVNOは、KVEと我々の2社だが、まだまだ、auのMVNOが増えればいいなと思っている。

――mineoの中でドコモとauの回線が選べることで、その割合はどうなると見ているか。

藤野氏
 au3割、ソフトバンク3割、ドコモ4割という、MNOのシェアの比率とあまり変わらないのではないか。

――iPhoneユーザーは、mineoを選ぶならドコモ回線を選択することになる。市場のシェアと割合は異なるのでは?

藤野氏
 よく分からない部分ではある。ドコモ回線はMVNOで競合が相当多い。どうバランスするのか見えない部分はある。市場のシェアに近くなるのでは、というのがとりあえずの想定。

――ドコモユーザーをmineoに引っ張ってきやすくなるというイメージか。

藤野氏
 もちろんそれはある。

――iOSに非対応だったことが、具体的にどう影響したのか。

藤野氏
 数値は持ち合わせていないが、10万件の目標が7万件になったことには、相当程度影響したと考えている。

――マルチキャリア対応で、設備投資にどうインパクトがあるのか。

藤野氏
 かなりの部分が共用できるので、一から2つ目を作る、ということではまったくない。増加分はあるが、それ以上にユーザーを獲得できれば十分にペイできる。そういう意味でも導入に踏み切ったということ。投資のインパクトとしては、それほど致命的ではない。

――auの3G回線に対応することは、設備投資の面では別軸になり難しいのか。

津田氏
 そう。我々としては、そこに投資することは考えていない。

――今回、ソフトバンク回線を選ばなかった理由は?

藤野氏
 接続料が一番高いということと、通信方式ではドコモと似ている。いずれ、別の意味が発生すれば、導入を視野に入れていく。ドコモのほうが市場が大きく、接続料は安い。

――現在、ユーザーは平均してどれ位の容量を月間で使用しているのか。

藤野氏
 一時期はほとんどが1GBに収まっていたが、最近は増加してきた。

津田氏
 平均の利用量は、現在は1GB前後。サービス開始当初は600~700MBぐらいだった。他社が増量したことなどを受けて、我々も増量した。プランは1~3GBのあたりが中心になり、使用量も平均的に増える傾向にある。

――販売チャネルの拡大については?

藤野氏
 アンテナショップで販売を始めるほか、Webを中心に、新たな取り組みを組み合わせて販売を拡大していく。一部の量販店では店頭販売も試験的に行っているが、MVNOはコストを抑えることで、安い料金を実現できている。できるだけコストをかけずに売るとなると、Webが中心になる。

――他MVNOでは、MNPなどに関連してリアル店舗戦略を進めている。

藤野氏
 できるだけコストを抑えて、ユーザーに還元したいと考えている。

津田氏
 将来的に、アンテナショップでは、即日開通を検討している。

――1枚のSIMカードでマルチキャリアに対応するのは、時間がかかりそうだ。

津田氏
 すぐには難しい。将来的に、HSS(Home Subscriber Server)、HLR(Home Location Register)が解放され、我々がそういった設備を持てるようになれば、我々からSIMカードを発行できるようになる。それができれば、ドコモにもauにも同時に、自動的に切り替えて対応するSIMカードが、将来的に可能になる。

――実現までの期間の感覚は? 来年などではない?

津田氏
 まだまだ。3年ぐらい? まずは接続解放問題がOKになってから。技術的な準備はできると思っている。

 欧州での事例では、国ごとにキャリアが分かれているところを、MVNOの1枚のSIMカードで対応するというもの。日本では3キャリアで同じエリアをカバーしているので、欧州のようなメリットがあるわけではない。ただ、将来的には、そうした仕組みを応用して、例えば中国とか台湾とか、海外の現地用SIMカードも1枚にできれば、大きなメリットになる。

太田 亮三