スマホのユーザーインターフェイスを考える講演会


竹村氏

 2月14日、インターフェイスに関する講演会「エクスペリエンスデザインフォーラム2012」が開催された。この中で、Androidのユーザーインターフェイス(UI)などに関する話題が語られた。

スマートフォンのUIに余計なお世話はいらない

 「これからのモバイルとAndroid UI」と題して講演を行った富山大学の非常勤講師 竹村譲氏は、「リテラシーを期待しないインターフェイス」として、ジャングルジムなどの公園の遊具を例に、子供たちは特に説明しなくとも遊具を使い出すとし、その一方で、安全性が高められた最近のブランコなどは、保護者が座り方を教えなければ足の通し方もわからないと話す。

 竹村氏は、「優しさへの配慮が使う人のしきい値をあげてしまう」と語り、その一方で例えば航空機のコックピットのような、非常に高機能かつ機能的なUIは膨大なマニュアルが必要になると述べた。同氏は昨今のスマートフォンは、高機能であるがゆえにマニュアルが多いとした上で、最高のUIは、UIの存在を感じさせないものと語った

 また、電話の歴史を振り返りながら、電話交換手を通じて相手に繋がった時代から、ダイヤルを回すだけの黒電話、プッシュ電話、フィーチャーフォン、スマートフォンと、簡単な電話がさまざまなことを利用者側で行う難解で面倒なものに変遷していったと説明。「一般に、何でも確実にできるようにすると、多機能な道具には複雑なUIになり、シンプルな道具はシンプルなUIになる」と話し、電話がネットと繋がるようになったことで複雑化が増したとする。

 竹村氏は、日本IBM時代にノートパソコン「ThinkPad」シリーズの商品企画や戦略を担当していた人物だ。同氏は、スマートフォンのデバイスの技術革新がサービス革新に繋がり、サービス革新が販売革新に繋がるとし、「機能を実現するための単純な技術を探し、単純明快な目的を作る。その上で技術の存在を隠蔽して、機能を最大化するようなシンプルなUIが必要」と話した。

 このほか竹村氏は、スマートフォンのUIについて、「余計なお世話、余分なことはしないで」と語り、商品の本来の目的に特化すべきとする。また、商品企画する上での機能選択のミスや実装ミスをUIで後からカバーしようとしてはならないとし、さまざまな付加機能については、インストーラーを用意してダウンロードはユーザーの判断に任せ、シンプルでエレガントな端末に務めるべきとした。



特許から見るアップルのUI、技術戦略の描き方

山崎氏

 「これからのユーザーエクスペリエンスデザインとUI」と題して講演した千葉工業大学 教授の山崎和彦氏は、アップルの特許や、特許出願状況という視点から、ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験、UX)やUIを考えることを紹介した。なお、同氏も竹村氏と同じく、日本IBM出身でThinkPadのデザインを担当していた。

 山崎氏は「アップルのUIは調べるほどすごい」と話し、iPhoneやiPadに関して、半球上の透明アイコンやパッケージデザインの特許だけでなく、米ニューヨークにあるアップルストアの建物についても特許出願していると説明した。同氏はバーチャルストアのイメージをとっているのではないかと話していた。

 山崎氏は、iPhoneで文字入力時にタッチしたキーが大きく表示される特許を紹介し、「小さな画面の中でわかりやすくいかに選択しやすくするかという方向を考える一方で、バーチャルキーボードのような方向もアップルは検討している」と説明。「アップルの面白いところは、万人向け、みんなのためにいろいろやっていると思われがちだが、特定の人を考慮したUIを特許申請している点だ」と語った。iPhoneなどのモバイル機器を利用して、レポーターのように相手の声と自分の声の対話を記録する装置などが紹介された。

 山崎氏は、アップルの取り組みを通じて、ユーザー体験を技術戦略を描いてロードマップに落とし込んでいくことが、差別化要因になるとの見方を示した。


 

(津田 啓夢)

2012/2/14 17:39