携帯マルチメディア放送「NOTTV」、月額420円に


 NTTドコモや在京民放局などが出資し、来春からの携帯端末向けマルチメディア放送(V-Highマルチメディア放送、モバキャス)向け放送局を展開するmmbiは、サービス概要と第三者割当増資の実施を発表した。

 29日には都内で記者会見が開催され、mmbi代表取締役社長の二木 治成氏、mmbi常務取締役の小牧 次郎氏、NTTドコモ代表取締役社長の山田 隆持氏、フジテレビジョン代表取締役社長の豊田 皓氏、スカパーJSAT代表取締役 執行役員社長の高田 真治氏、日本テレビ放送網 代表取締役社長 執行役員の大久保 好男氏、東京放送ホールディングス代表取締役社長の石原 俊爾、電通取締役 専務執行役員の橘 益夫氏が出席した。

左から電通の橘氏、日本テレビの大久保氏、フジテレビの豊田氏、mmbiの小牧氏、mmbiの二木氏、ドコモの山田氏、スカパーJSATの高田氏、TBSの石原氏

料金やチャンネル数発表、オリジナル番組も

 来年4月から提供される「NOTTV」(ノッティーヴィー)は、利用料が月額420円で、3チャンネル分利用できる放送局。その内容はリアルタイム放送や蓄積型コンテンツで、リアルタイム放送が3チャンネル用意される一方、深夜には書籍や番組などの蓄積型コンテンツを配信し、メモリカード内に保存して、いつでも楽しめるようにする。基幹放送の1つとして災害放送も実施する。月額420円で楽しめるコンテンツのほか、スポーツ中継や音楽のライブ中継など一部コンテンツは、追加料金で視聴する“プレミアムコンテンツ”として提供される予定という。

 1チャンネル目が主要番組を放送するチャンネル、2チャンネル目はその再放送やプレミアムコンテンツの放送となり、3チャンネル目は24時間のニュース番組となる。いずれも他社と協力して制作する方針で、たとえばmmbi自身が巨大な報道部門を抱えることは想定されていない。

コンテンツとサービスエリアを充実させ、端末の普及を図るサービスの位置付け

 29日の発表会で、サービス内容についてプレゼンを行ったmmbiの小牧氏は、操作イメージを示した動画で説明しつつ、TwitterやFacebookとの連携機能を備えることでソーシャルメディア時代の著名人が登場するような番組、視聴者参加型で昼休みに参加できるような高額賞金のクイズ番組などが期待できると説明。また、オリジナルドラマ番組を制作するとして、フジテレビ制作による恋愛ドラマを24時から15分間、放送する。さらに来年4月の放送開始時からは、ニッポン放送の「オールナイトニッポン第2部」が登場する。また、CS放送との連携も進めているとのことで、現時点では釣り情報チャンネル「釣りビジョン」の番組「釣りステーション」「ギアステーション」が放送されることを明らかにした。

 その他のCS/BS向けチャンネルとも現在交渉中とのこと。それらのチャンネルを代表する番組が「NOTTV」でも視聴できるようにする。プレゼンテーションで示された資料には、スカパー!やウェザーニューズ、アニマックス、WOWOWなどのロゴマークが含まれていた。

 オリジナル番組として、スマートフォンの使い方を紹介する「スマホのトリセツ」を用意されるが、蓄積型コンテンツとしてアプリの一覧も配信し、番組を見ながらすぐアプリをダウンロードして楽しむ、といった使い方を実現できる。ゲーム番組としてもゲーム専門誌と協力して最新情報を提供する。

 このほかの番組などは来年2月に予定される開局発表会で発表される見込み。

画質は10倍に、エリア整備も

 画質についてはワンセグの10倍となる。これはワンセグでは、解像度がQVGA(240×320ドット)、フレームレートが15fpsだったのに対し、携帯向けマルチメディア放送である「モバキャス」(NOTTVを放送するインフラの名称)は、ワンセグの進化版「ISDB-Tmm式」を用い、ワイドVGA(およそ480×800ドット)で30fpsという品質での放送となるため、“解像度が5倍、フレームレートが2倍”となることから、「ワンセグの10倍」という表現を用いているという。

 技術的には複数のチャンネルの帯域を使った高品質コンテンツの提供も可能。モバキャス全体では、アナログテレビの10~12chに相当する周波数帯を33個に分割(33セグメント)してコンテンツを放送することになるが、NOTTVはそのうち13セグメントを用いる大規模事業者となる。この13セグメントをどう割り当てて3チャンネルを構成するか、まだ明らかにされていないのものの、たとえば複数のチャンネル分のセグメントを用いてHD画質といった高品質コンテンツを提供できる。

 サービスエリアについては、当初は世帯カバー率60%で関東一円、東海(愛知・三重)、関西(大阪・京都・奈良・兵庫)、福岡、沖縄の15都府県で利用できるようにする。1年間で世帯カバー率を約76%にし、2013年3月末までに北海道・宮城・関東周縁部・静岡・新潟・長野・石川・和歌山・岡山・広島・香川・愛媛・熊本・佐賀・鹿児島も加わり、計29都道府県をカバーする。

目標契約は初年度100万契約

 12月6日の第三者割当増資により、mmbiの資本金は15億円から496億円(資本金が248.9億円、資本準備金が247.1億円)になる。mmbi株式のうちNTTドコモの保有分が60.45%となる。さらに、富士通、NEC、パナソニック モバイルコミュニケーションズ、シャープ、東芝、博報堂、電気興業、テレビ東京ホールディングス、博報堂DYパートナーズ、Philippine Long Distance Telephone Companyが新たな株主に加わる。調達した資金は番組制作や資本基盤の強化のほか、モバキャスとしてインフラを整備するmmbi子会社のジャパンモバイルキャスティングの増資85億円に用いられる。国内端末メーカーが出資する背景として、二木氏は「端末だけではなく、放送設備を手がけるところもある」と述べ、各社がモバキャスやNOTTVの成長性に期待して出資を引き受けてくれた、との見方を示した。

増資の概要mmbiの株主

 NTTドコモの山田隆持社長は、携帯向けマルチメディア放送である「モバキャス」は、総合サービス企業を目指すドコモにとって、重要なサービスの1つと位置付ける。また囲み取材では「貴重な電波を用いてサービスを提供することになるが、通信と放送の連携では最も大きなところだと思う。このサービスをぜひ伸ばしていきたい。1年2年という短期間ではなく、4年、5年という長期で見ていきたい」と述べ、ドコモとして手厚く支援する方針を示した。

 対応機種としては、2012年4月の時点でスマートフォン1機種、タブレット1機種を用意すると説明。2012年度上期(2012年5月~9月)には、スマートフォン3機種、タブレット2機種の計5機種を追加するとした。ここまでは10月の新機種発表会でも概要は示されていたが、今回の会見で、山田氏は来夏の対応機種5機種は、来夏モデル全体で1/3か、半分程度を占めるものの、来冬には10機種程度に拡充し、全体の半分か2/3になるとした。ただ、ここでいう全体にフィーチャーフォンが含まれるのか、スマートフォンだけなのかは明らかにされていない。将来的に標準機能になるかどうか問われた山田氏は「ワンセグはほとんどの機種に搭載されているが、同じように標準的に搭載できるようになれば一番素晴らしい。そうなるよう頑張りたい」と語った。またドコモショップも、モバキャスおよびNOTTVにとって、重要なユーザーとの接点になるとして、販売促進に取り組むと説明する。

囲み取材に答えるmmbi小牧氏(左)、mmbi二木氏(中央)、ドコモ山田氏(右)

 囲み取材で販売目標などを尋ねたところ、mmbi社長の二木氏は「初年度で100万契約を目指す」とコメント。それを受け、山田氏は「100万契約のためにはドコモとしては、タブレットを含めて300万台の販売を目指す」とした。スマートフォンやタブレット以外では、山田氏は将来的にはカーナビやデジタルフォトフレームなどの対応機器も考えられるとし、二木氏は「今検討しているが、モバキャスのチューナー機能を備えたルーターのようなものを提供し、Wi-Fi経由などでいろんなデバイスに、といったことが考えられる」と述べる。ただ、1契約で複数の機器で利用できるかどうか、という点については、まずスマートフォン、タブレットでの利用に限定し、テレビなどに向けたサービス展開は行わないとした。

 モバキャスが扱える周波数帯域(33セグメント)のうち、NOTTVは13セグメントのみ使う形となり、他の放送局はまだ現われていない。この状況についてドコモ山田氏は、他社も強い関心を持っているとして、ドコモとしていち早くサービスを立ち上げて利用率を高め、対応機種の普及などに取り組むとした。

 ドコモの出資比率が向上したことで、ドコモ専用サービスにも見える「NOTTV」だが、mmbiではiPhone向けサービス、あるいは他キャリアでの利用も検討しているという。




(関口 聖)

2011/11/29 15:14