【GREE Summer Conference 2011】

スマートフォンを軸にしたGREEの世界戦略とは


 グリーは、スマートフォン向けソーシャルゲームのプラットフォーム「GREE Platform」に関連した講演イベント「GREE Summer Conference 2011」を開催した。午前中のセッションでは、スマートフォンを軸に世界展開を図る同社の戦略が語られた。

「世界で成功が証明されてから行っても遅い」

グリー 代表取締役社長の田中良和氏

 最初に登壇したのは、グリー 代表取締役社長の田中良和氏。田中氏は「進化するゲーム業界」と題して、ゲーム業界、コンピュータ業界の衰勢をスマートフォンになぞらえて語る。同氏はゲーム業界もコンピュータ業界の一部とした上で、ダウンサイジングの宿命があるとし、「メインフレームからパソコン、スマートフォンと、コンピュータ業界の流れは変わり続けている。小さくなるものが高性能化し、その過程で価格が下がるなど、ゲーム業界は転換点にある」と指摘。またスマートフォンは電話としても主流になり「固定電話のように、ガラケーってあったよねと言われる時代がくるだろう」と予想する。

 同氏は、このようにスマートフォンが主流になる動きは「大きな変化だ」とし、「かつてパソコンは機種ごとにOSが違ったが、WindowsやMacが出てきて(共通化が進み)、ソフトウェア流通が変わった。携帯電話業界ではそれがスマートフォン。コンピュータ業界で起こったパラダイムシフトがスマートフォンで起こっている。スマートフォンを征するものがコンピュータ業界を征する」と現在の市場の変化を勝機とする。「携帯電話は人類史上初の全員が手にいれるコンピュータ。家電なども取り込んだ大きなプラットフォームが今後10年で登場するだろう。そこにソーシャルゲームも取り込んでいく」と意気込みを語り、「スマートフォンは世界中で爆発的に普及する。何十億人単位のビジネスという目線が重要」と、世界中のユーザーに提供するという意識が重要とした。

 田中氏は現在までの取り組みについて、「今後10年の有力な市場に対し、この半年で世界展開を進めてきた。OpenFeintなどの統合にも取り組んでいる」とした上で、現在のユーザー数が1億3000万人、日本市場が2600万人になっていることを示した。また、プラットフォームの共通化の提携で、中国や東南アジアなどを合わせてユーザーは8億3000万人にも上ることをアピールした。

 同氏はこれらの数について、「今後数年で事業構造を変え、日本を2割、残りは世界とかでなければ、生き残っていけない。パートナーと一緒に世界で展開したい。日本(のスマートフォン)はこの半年でものすごく伸びているが、安住せずに、世界に投資していただきたい」と、事業構造の変革にも触れ、最後にはサーフィンの体験を元に「波がきた時、浜にいたのでは間に合わない。波がくるかどうか分からない中で沖にいき、運のいいやつが波をつかまえられる。これは人生の縮図だと思った。世界で成功が証明されてから行っても遅い。まずは沖に行って、勝負しなければ始まらない」と語りかけ、日本での成功を原資に世界に挑戦するよう、集まった業界関係者に呼びかけた。

 

 なおグリーは5日、中国のオンラインコミュニティサービス企業Tencentが、GREE Platformと仕様を共通化したプラットフォームを提供したと発表している。中国向けソーシャルゲームの第1弾として、コーエーテクモゲームスから「100万人の三國志」が、タイトーから「SPY WARS」が今秋に提供される予定。Tencentは中国で6.5億人のユーザーを有しており、フィーチャーフォンおよびスマートフォンに対応するオープンプラットフォームの仕様がGREE Platformと共通化される。

 

OpenFeintを統合、ソーシャルゲームのプラットフォームに転換

GREE International CEOの青柳直樹氏

 グリーの米国子会社、GREE InternationalからはCEOの青柳直樹氏が登壇し、シリコンバレーを中心とした北米の現状や、OpenFeintoの統合によりGREE Platformに追加される機能が紹介された。

 欧米ではSNSとしてFacebookが普及し、ソーシャルゲームもFacebook向けを中心にジンガなどが台頭した経緯がある。「欧米の人は、Facebookがあるから、となるが、日本人が感じることは、日本でも一時期SNSはこれだよねとなっていたが、ソーシャルゲーム、モバイルで(優位性が)変化してきたということ。日本で起きたことは特殊なことではなく、今後4~5年でFacebookよりも大きなプラットフォームがモバイルに登場するだろう」と指摘し、パソコン向けでは標準的になっていたサービスでも、モバイルに舞台を移すことで再び競争が始まるとする。

 同氏は、日本で起こったことが世界に広がるというケースはゲーム業界でも起こってきたとし、「例えばゲーム機では、日本では昔からゲーム産業があり、日本のユーザーが大きなトレンドを生み出してきた。その後世界に広がった。また、有力なタイトルがあり、コンテンツが牽引してきた。日本連合として捉えると、大きな可能性がある」と、世界に先駆けて事象が表れる日本市場の特徴を語った。

 北米の状況については、Facebook向けのソーシャルゲームで大きくなったジンガ以外は、モバイル向けの企業が占めているとし、「早晩、ジンガを抜くところが出てくるだろう」とそのポテンシャルに言及する。

 一方、「良いか悪いかは別にして、北米は明らかにバブル期を迎えている。大学出たてで起業した兄ちゃんが、簡単に5億円を調達できる」と、シリコンバレーのモバイル/SNS業界がバブル期にある様子を体験談を交えながら紹介した。メジャーなゲームメーカーからの人材流出や起業ラッシュも増加しているとのことで、「バブルによって引き起こされるブレイクスルーがあるだろう」と、市場やサービスにさらなる変化があるとも予想した。

 今後の展開については、現在は既存の仕組みを連携させた内容にとどまっているOpenFeintの統合を進め、「ソーシャルゲームのプラットフォームに転換していく」(青柳氏)方針が改めて示され、今後追加される予定の、ユーザープロファイル機能やバイラル ノーティフィケーション機能、ゲームフィード機能といったサービスが解説された。

 青柳氏は、「この四半期でだいたいの機能が揃う」とすでに提供間近である様子を示したほか、「モルモットになって、ショウケースになれば」と自社タイトルのゲームも北米向けに提供する意向を明らかにした。同氏は最後に、現在の状況を「10年に一度の機会」とし、「みなさんと頑張っていきたい」と語りかけた。


 

アプリは機能を強化

グリー 執行役員 マーケティング事業本部長の小竹讃久氏

 グリー 執行役員 マーケティング事業本部長の小竹讃久氏は、「GREE Platform」の、ソーシャルゲームプラットフォームとしての具体的な取り組みが語られた。

 同社ではこれまで、スマートフォン向けの施策として、Webブラウザへの対応に加えて、iOS、Android向けの対応を強化し、またカテゴリや検索機能、課金方法、広告配信といった拡充を進めてきた。

 スマートフォンにおける取り組みの特徴については、「フィーチャーフォンでは、トップページから各コンテンツにユーザーを振り分けていくイメージだったが、スマートフォンはアプリが中心になるのではないか」と、アプリの活性化や集客に必要な機能を提供していく方針を示し、「ポイントは競争と協力。どうやってまわりのユーザーを巻き込めるか」と分析する。

 具体的な施策では、アプリにダッシュボード機能が提供され、マルチランキング機能やアチーブメント(称号)機能、アプリ内課金によるゲーム内通貨の購入、招待機能の強化といった取り組みが実施される予定。また、プロモーションも既存ユーザーや非会員向けに分けて、テレビCMやオンライン広告が積極的に展開される。

 小竹氏は、「我々も本気だと感じてもらえれば。プラットフォーマーとしてチャンスが大きくなるように拡充していきたい」と語り、パートナー支援策を充実させていく方針。協業という形で、開発資金の拠出や、企画・開発・運営の各コンサルタント、プロモーションなどで支援策を提供する。

 

開発プラットフォームにAdobe AIRを採用

アドビシステムズ プリンシバル プロダクトマネージャーのマイク・チェンバーズ氏

 講演ではこのほか、アドビシステムズ プリンシバル プロダクトマネージャーのマイク・チェンバーズ氏が登壇し、モバイル端末にけるFlashやAIRを採用するメリットが紹介された。特にAIRは「この1年間、パフォーマンスの改善に注力してきた」とのことで、最新版のバージョン2.7では、GPUアクセラレーションもサポート。Photoshopなどと連携してグラフィックスやパフォーマンスの高いゲームを製作できるとアピールした。

 また、AIRの今後の展開として、「Stage3D」と名付けられた、GPUアクセラレーション対応のFlash向け新レンダリングエンジンを採用することが示され、「ゲーム専用機と同等レベルの2D、3Dグラフィックを実現できる」とアピール。このほか、ハードウェアアクセラレーションに対応した動画再生や、端末機能への広範なアクセスが可能になるネイティブ エクステンションも実現されるとし、最後にGREE Platformのアプリ開発プラットフォームにAdobe AIRが採用されたことを披露。詳細は追って公表されるとした。


 Flashで動くアプリの例
 「Stage3D」レンダリングエンジンの例
UNITYがStage3Dをサポート 

 




(太田 亮三)

2011/8/5 16:41