BIGLOBE、Android端末によるクラウドサービス提供へ


Camangi製クラウドデバイス
NEC製端末

 NECビッグローブは、Android端末にネットワーク接続や各種サービスコンテンツを組み合わせて提供する「クラウドデバイス&サービス事業」を開始すると発表した。

 「クラウドデバイス&サービス事業」は、宅内や屋外でも利用できるクラウドデバイス(Android端末)を使った通信サービスやコンテンツサービス、アプリ配信プラットフォームなどを組み合わせた新事業。ビッグローブのネット接続会員を対象としたもので、新たに提供されるAndroid端末「クラウドデバイス」を使って、自宅内では無線LAN、屋外では公衆無線LANや3G/WiMAXを使ったモバイル通信で、ネットサービスやアプリを楽しむというものだ。

 発表会でプレゼンテーションを行ったNECビッグローブの取締役執行役員常務の古関義幸氏は、「基本的には自宅での利用を想定しているが、実際にどういった需要があるのかわからないところもある」と語っていた。

 このため、本サービスに先駆けて2010年2月上旬~3月末日まで、モニター試験(BIGLOBE個人会員対象)が実施される。申し込みは1月中旬から開始される予定で、モニター数は100名。モニターになると端末、3GまたはWiMAX内蔵無線LANルーターが貸し出される。

 モニターは、モバイルブロードバンドによるネット接続やWebブラウジング、「クラウドデバイス」向けに最適化された気象情報サービスやフォトアルバム、メールサービスなどが利用できる。ビッグローブでは、ニーズや利用方法などを調査した上で2010年中頃にも正式サービスとして展開したい考えだ。

Android OSの「クラウドデバイス」

 発表会では、「クラウドデバイス」として2つのAndroid端末が紹介された。1つはモニターにも貸し出される台湾のCamangi製Android端末、もう1つは現在開発中のNEC製の端末だ。

 Camangi製のAndroid端末は、7インチ、800×480ドットのタッチパネル式ディスプレイを搭載した情報端末。無線LANのみ対応する。USBポートを搭載しており、USBタイプの3Gデータ通信用端末などが装着できる。

 なおビッグローブでは、イー・モバイルの3G網、UQコミュニケーションズのモバイルWiMAX網を借りてMVNO事業を展開しており、当面はこの2事業者のモバイル回線でサービスが提供される予定。古関氏は将来的には3G/WiMAXモジュールを内蔵したいと話していた。端末はブラウジングや電子コミックの閲覧などを想定したもので、CPUの関係上、動画再生ではコマ落ちしてしまう場合があるという。大きさは200×120×14.5mmで、重さは380g。

 NEC製のAndroid端末は、2010年中頃の発売が予定されており、詳細については明らかにされなかった。ただし、同じく7インチディスプレイを搭載し、30fpsの動再生機能能などが用意されている。NEC製端末が3G/WiMAXモジュールを内蔵するかは未定。

 端末のホーム画面はビッグローブオリジナルのポータルとなっており、ブラウジングや検索のほか、ニュースや天気、写真保存サービス「フォトポケ」、Webメール「ウェブリメール」、Twitterクライアント「ツイっぷる」、閲覧履歴や操作履歴をパソコンと同期する機能「BIGLOBEゲート」、ライフログアプリ「NumRecorder」、レシピ、時計、カレンダーなどにすぐにアクセスできるようになっている。

 端末の価格はいずれも未定だが、Camangi製端末は3万9800円程度、NEC製端末も同程度の価格を想定しているとした。サービスの利用料はビッグローブの接続料に組み込まれる予定で、宅内無線LANで使う分には通信料は発生しない。公衆無線LANや3G/WiMAXを利用した場合は通信料がかかり、二段階制の定額料金プランなどが用意される予定。

 端末はビッグローブの直販サイトで販売され、楽天市場やAmazon.co.jpなどでも提供される予定。量販店での販売は検討中で、接続設定などがユーザーまかせに鳴らない形で考えている(古関氏)という。

 このほか、古関氏は「クラウドデバイス」の特徴を、ディスプレイの視認性の高さ、キーボードのないタッチパネル式モデル、通信設定などが極力いらない、接続回線を意識しないで使えるもの、オープンプラットフォームなどと話した。


ホーム画面傾きを自動的に判別して縦画面になる重さは380g。片手で持ち続けるのは男性でも辛い印象
背面部吸盤タイプのアクセサリーをつけると、デジタルフォトフレームのように利用できるUSBポートなど
ボリュームスマートフォンサイズのディスプレイと比較すると、7インチの大きさがわかりやすい。電子コミックなどを利用するには画面が大きく、より紙に近い形で利用できるmicroSDカードスロット
ニュース表示タッチして詳細ニュースウェザーニューズの天気コンテンツ
文字入力画面本誌を表示、画面の拡大縮小にも対応設定画面はAndroidのもの

Android向けアプリ・コンテンツ市場「andronavi」提供

 さらに、ビッグローブでは、Andoroid向けアプリを提供するコンテンツマーケット「andronavi」も提供する。2010年1月7日よりパソコン向けWebサイトがオープンし、まずは無料アプリが配信、2010年4月より有料アプリも提供される。その後、グローバル展開も予定されている。

 「andronavi」では、海外の便利なアプリやコンテンツを日本語で提供される予定で、レビュー情報やレコメンド機能などが用意される。パソコンやクラウドデバイスなどからアクセスできるほか、たとえば「HT-03A」など、Android端末であれば利用できるコンテンツプラットフォームになるとしている。

 最大の特徴は多様な課金パターンに対応していることで、月額利用や従量課金制、時間単位や1日単位での利用などが可能。決済はクレジットカード払いで、ビッグローブ会員のクレジットカード情報で決済される。海外決済期間との提携も視野に入れているという。

 なお、コンテンツプロバイダーだけでなく、一般開発者もアプリの提供が可能。有料アプリにはDRM機能なども用意される。古関氏は、7インチディスプレイを活かした電子コミックアプリの配信などにも言及していた。

 配信アプリは、ウィルスチェックなどを行うが、基本的なスタンスはオープンとなるため、携帯電話事業者のようなアプリ審査は行われない予定。配信にあたっては、他のコンテンツ配信プラットフォームと同様にビッグローブ側に手数料が入る。

 海外展開への展開は、電子コミックなど日本製コンテンツの海外輸出に重点が置かれ、最初は英語の「andronavi」が登場する予定。古関氏は、「日本のコンテンツに興味がある地域、東南アジアやアメリカ、フランスなどに提供したい」と語った。


andronavi1月オープンのパソコン版HT-03Aでも表示可能

ビッグローブ飯塚氏、新事業について説明

NECビッグローブ 飯塚氏

 発表会の席でビッグローブの代表取締役執行役員社長の飯塚久夫氏は、今回の新事業について、「インターネットプロバイダーが端末にまで直接手を出そうというもの」と説明した。同氏によれば、インターネット利用者の約7割はパソコンと携帯電話を併用しており、多くのユーザーは屋内外に関わらずネットにアクセスしているという。今後予定されているLTEの時代がくれば、モバイル環境で100Mbpsが実現される可能性があり、屋外のブロードバンドアクセス環境も整いつつあるとした。

 ただし、パソコンやネットブックでは画面が大きく見やすい反面、持ち運びにくく、通信設定の煩わしさがある。携帯電話は持ち運べるが、画面が小さく、操作方法が統一されているわけではない。ビッグローブの「クラウドデバイス」は、こうした制約を取り払った端末になるという。

 また、アプリ・コンテンツマーケット「andronavi」(アンドロナビ)については、ビッグローブだけでなくさまざまな企業と協業展開し、課金システムを握るビッグローブが仲介役になるとした。

 ビッグローブがこれまでのISP事業から歩を進めた理由について飯塚氏は、「3年で2倍、2年で2倍とネットのトラフィックが増える一方で、必ずしもそれがマネタイズされているわけではない」と語った。同氏は、「インターネットのタダ文化」という表現で、トラフィック増にともなう設備の増強を収入でまかなえなくなっている状況を説明した。また、「インターネットのタダ文化」において事業の柱となるはずのネット広告市場についても「超独占の状態にある」と他社の一極集中状態にあることを話し、、新たな事業展開をせまられているとした。

 ビッグローブでは、今回の新事業で2012年度に年間100億円の売上げを目指すとしている。内訳は、端末供給、MVNO、コンテンツマーケットの手数料でそれぞれ30億円程度の売上げを見込んでいるとしている。



 

(津田 啓夢)

2009/12/17 14:05