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「iPhone」と「Android」へ事前規制もありえる――政府のデジタル市場競争会議で中間報告

 内閣官房デジタル市場競争会議で26日、「モバイル・エコシステムに関する競争評価」の中間報告書がとりまとめられた。競争に悪影響がある「危険性の高い行為」を事前に禁止する、という考え方が示されている。

 26日午前、松野博一官房長官は、「少数のプラットフォーム事業者による寡占やルール設定などを通じた影響力を背景に、さまざまな競争上の懸念が指摘されている」とコメント。

 中間報告書では、普及したスマートフォンのエコシステムを分析。アップル(Apple)のiOSと、グーグル(Google)がリードするAndroidという2つの存在がシェアのほぼ全てを占め、さらにその傾向にも変わりがなく、固定的な状況と指摘する。

 アップルとグーグルの2社による寡占状態にあるモバイル分野のエコシステムでは、OS、アプリ、ブラウザなどの要素で構成され、サードパーティによるアプリのほか、プラットフォームとなっているアップルやグーグルも自身のサービスを展開している。

 プラットフォーム事業者がルールを定めており、中間報告書では、プラットフォーム事業者の行為を単体で見ると弊害は小さいように思えるものの、そうした行為が複数あると、相乗効果で大きな影響になると指摘。また技術がどう進化するか予測が難しいことや、競争しているか評価するのに必要な情報のありかがプラットフォーム事業者側に偏っていることから、競争が進んでいるか、客観的な評価が難しい。

 そうした中で、中間報告書では、アップルとグーグルのアクションに対する懸念がまとめられている。たとえばブラウザでのトラッキングルールの変更はそのひとつ。ユーザーの許可なく、広告主がユーザーのデバイスにあるクッキー(Cookie)を利用する行為について、アップルは2017年~2020年にかけて、WebKitに対策を実装してきた。ユーザーのプライバシーに配慮する取り組みではあるが、中間報告書では「ブラウザ事業者により、一方的なルール変更がなされ、対応する十分な時間が確保されなかった」「アップル自身が影響を受けない点は差別的な取り扱い」と指摘。

 アップルとグーグルの寡占がもたらす現状の課題は、市場機能によって自然と解消されることが難しく、なおかつ、中長期的に続くおそれが強いのではないか――そうした予測を示し、目指すべき姿として、「危険性の高い行為を、事前に原則的に禁止するアプローチがあり得るのではないか」「データやアルゴリズムについて、規制当局には、プラットフォーム事業者に対して情報の提供や、説明を求める権限を付与する仕組みも考えられるか」とされている。

 ただし、今回の中間報告書で示された考えは、「あくまでも、考えられるオプション」であり、特定の対応策を決定するものではない、という。現行法の枠組みにとらわれない考え方を示し、関係者から意見を募り、今後の議論を深めていくためのもの、と位置づけている。

 報告書では、アプリストア、ブラウザ、さまざまなデータ取得、アップルによるUltra Wide Band(UWB、超広帯域無線)やNFCへのアクセス制限など、各論についてのまとめも記されている。