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ANAとJAL、米国5Gサービスの影響により19日以降の米国便が一部欠航へ

無線高度計への干渉の恐れ

 ANA(全日本空輸)とJAL(日本航空)は、それぞれ1月19日以降の米国便で、一部欠航することを案内している。

 米国で19日から始まる、新たな5Gサービスの周波数が、ボーイング777型機の電波高度計へ干渉する恐れがあるため。安全性が確認されるまで、両社ともに、同型機の米国本土線の利用を控えつつ、ボーイング787型機へ変更できない便は欠航する。

米国での「無線高度計」干渉問題が原因

 携帯電話サービスでは、さまざまな周波数を用いて、サービスエリアが構築されている。2020年前後に世界的に登場した5Gサービスでは、Sub6(サブシックス)と呼ばれる6GHz帯以下の周波数や、ミリ波と呼ばれる高い周波数(日本では28GHz帯)が用いられる。

 米国では、5G用の新たな周波数として、Cバンドと呼ばれる周波数帯域(同国内では3.7~4.2GHz帯)の電波オークションが2020年~2021年にかけて実施され、AT&Tとベライゾンの2社が落札し、新周波数帯でのサービスを開始する予定だった。

 米連邦航空局(FAA)の文書によれば、無線高度計は4.2~4.4GHz帯で動作する。そこで、航空業界からは、ボーイングは2018年、5Gサービス用に使われる周波数の一部が無線高度計へ干渉する懸念を表明したという。国連専門機関で航空分野を担うICAO(国際民間航空機関)も、5Gで4.2~4.4GHz帯を用いる場合、無線高度計について調査することを条件とすべきとしていた。

 FAAでは、「他国では5Gサービス開始前に、空港周辺での電波出力レベルを抑えるといった手法で、5Gサービスと航空サービスの共存が図られている。一方で、米国では数年前から解決策に取り組んできた」と説明。たとえば、空港周辺の緩衝地帯(時間)の設定も、フランスではより広い範囲としているのに対して、米国の空港周辺では飛行最後の20秒のみ保護するかたち。また電波の出力も、米国はフランスの2.5倍となる。アンテナから電波が発射される方向も、フランスでは下向きにすることが政府により義務付けられているとのことだが、米国ではそうした規制がない。

 2021年11月、初期情報として無線高度計に悪影響を与える可能性について発信したあと、AT&Tとベライゾンが自主的な取り組みとして新周波数でのサービス開始時期を延期。2022年1月になって、1月19日までの延期で合意もしており、その一方で、FAAは影響範囲の精査を続けていた。

 1月5日の時点では、新周波数帯の5Gサービスが展開する空港において、視界不良時の着陸が許可されていなかった。しかし、その後、無線高度計への承認が進み、1月16日時点では米国の民間航空機のうち、45%と推定される機体が視界不良時の着陸が許可されているという。航空機に対し安全が確認された機種も増えており、1月16日までにボーイング社の737、747、757、767、MD-10/11の一部と、エアバス社のA310、A319、A320、A321、A330、A350が承認されている。