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スマホの対応周波数や3G契約者向け端末購入割引の悪用に意見――総務省「競争ルールの検証に関する報告書2021」案へのパブリックコメント

 総務省は、「競争ルールの検証に関する報告書2021(案)」に対して募集したパブリックコメントを公開した。15日に開催された有識者会合向けの資料として用意された。

 競争ルールの検証に関するWGが取りまとめる競争ルールの検証に関する報告書2021(案)に対して7月14日~8月17日の期間で募集。法人・団体から17件、個人から12件の合計29件の意見が寄せられた。

周波数割当と既往契約解消の取り組み

 ドコモでは、事業法改正前に提供された旧プランの既往契約の解消について、積極的に取り組みを実施していることを説明しつつ、既往契約解消に向けた事業者の取り組みを周波数割当て時の審査項目とすることは事業者間に有利不利の差が出ないよう、公平性を保つことを要望した。

 これについて、総務省は既往契約解消に向けた取り組みは重要であり、その促進のために事業者にインセンティブを与える際の例示としたもので今後判断されると回答した。既往契約解消への取り組みを周波数帯の割当審査に活用することは、KDDIからも懸念を訴えるコメントがあった。

 事業法改正後に業界に参入した楽天モバイルは、旧プランの既往契約がいまだ多数残っていることを指摘。現行法にそぐわない期間拘束による違約金については撤廃または1000円とすべきとした。

端末周波数の制限

 テレコムサービス協会などからは対応周波数の制限は自由なサービス選択の権利を阻害するとしてスイッチングコスト化しているのではとする意見が寄せられた。

 オプテージもスマートフォン、タブレット、ウェアラブル端末も含めた端末の使用が利用者の不利益にならないか注視する必要があるとしており、楽天モバイルは通信事業者のみならず、一定のシェアを有する端末メーカーに対しても周波数帯域やデータ通信、音声通話などの機能はすべてのMNOに対応するよう義務付けるべきとした。

 同様に全国消費者生活相談協会とテレコムサービス協会もキャリアごとに異なる端末仕様とするなどSIMロック以外の方法での端末機能の制限をしないよう求めるコメントを出した。

3G契約の割引悪用のケースも

 MNO各社で3G停波に向けた動きが進む中、イオンリテールは、3G契約者が割引価格で4Gや5G端末に買い換え、契約変更できる制度が悪用されているケースがあると指摘。

 3G契約があるかどうかの確認方法は、端末本体の確認のみであるため中古の3G端末にMVNO契約のSIMカードを挿入しあたかも3G契約者であるかのように見せかけ、不当に割引を受けている事例が確認されているという。

 同社では3G契約者を割引の特例として扱うのであればMNOによる厳格な手続きや確認がなされるよう制度を見直すべきと訴えた。

 総務省はこれに対して「契約変更時の利益提供は運用ガイドラインで確認項目が明示されており、事業者や販売店が適切に確認を行うことを求める。状況を注視し、必要に応じて対応を検討する」と回答するにとどめた。

MVNOからは競争環境を危惧する声も

 一方、J:COM MOBILEを展開するJCOMでは従来、MVNOの主戦場となっていた低料金帯のプランをMNO各社が提供し始めたことについて「競争市場に置いてはやむを得ない」と理解を示しつつも、MNOとMVNOの垣根が無くなっていると指摘。

 MNOに対するMVNOの競争力が急速に低下した現状を訴え、両者の立場の役割や位置づけなど競争政策を明確にしてほしいとコメント。

 対して総務省では、MNOの自社サービス内のプラン変更では障壁にならない一方でMVNOなどへの乗り換えに不利益が生じるものに焦点を当てて対策してきたと主張。市場環境の整備については「電気通信市場検証会議等における継続的な市場検証を踏まえた上で、引き続き公正な競争環境の整備に取り組んでいくことが適当」とした。

音声通話料金

 ソフトバンクからは、音声サービス料金について、従量制料金が高止まりしているという指摘に対し料金体系や水準を総合的に勘案して設計したもので、ひとつの要素である従量制のみを捉えて高止まりとすることは不適切との意見が寄せられた。

 KDDIは、MVNOへの音声卸料金の見直しなどにより、一部のMVNOにおいて定額プランの提供などが始まったことに触れて、総務省において音声通話市場全体の状況を確認の上、必要な対応を取るべきとコメント。

 SNSの普及により需要が低下する音声サービスに対して、過度な規制が取られないよう、また料金低廉化やサービスの多様化が見られない場合、追加政策を取るとした報告書(案)について、「所要の制度整備」の内容が未確定かつ仮定の状況に沿った対応の記載は時期尚早ではないかと疑問を投げかけた。

 20円/30秒の料金が10年以上も値下がりしていないということを問題視する総務省は、公正な競争条件という観点から見て「非常に問題の大きな卸料金を維持してきた」ため提供コストを大きく上回る料金水準が維持されており、ソフトバンクの指摘は当たらないと退けた。

 また、SNSが普及したとしても、音声通話は一定の規模を占める基本的なサービスとした上で、その料金は長年競争が阻害されてきたと指摘。その上で今後も競争が働かなった場合に追加対応することを記載するのは時期尚早とは言えないなどとしている。