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総務省、のりかえ推進で21年10月から「SIMロック原則禁止」案

スイッチング円滑化タスクフォースの報告書案取りまとめも

 総務省は、「スイッチング円滑化タスクフォース」の報告書と、報告書案に対するパブリックコメントを公開した。パブリックコメントは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの通信事業者を中心とする法人から7件、個人から10件の意見が提出されている。

 報告書では、事前に公開された報告書案に沿ってSIMロックの解除を推進すること、キャリアを変えてもメールアドレスを"持ち運び"可能にすること、今後2年以内にMNP手続きのワンストップ導入に向けて検討を続けるなどの内容が報告書にまとめられている。

 パブリックコメントの内容を受けた訂正として、キャリアメールの"持ち運び"については、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社のシステム開発期間が平均で約1年となっていることから、「2022年夏頃までには実現することが適当」としていた時期を「2021年中を目処に、できる限り速やかに実現することが適当」に前倒ししている。

「移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン」の改正案

SIMロックは原則禁止

 総務省は、前掲のスイッチング円滑化タスクフォースで取りまとめされた「スイッチング円滑化タスクフォース報告書」の内容を踏まえ、「移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン」の改正案を作成した。

 ガイドラインの改正により、SIMロックを設定する行為や既に設定したSIMロックを解除しないことによって、電気通信の健全な発達又は利用者の利益の確保に支障が生じるおそれがあるときは、業務改善命令の要件に該当することを明記するなど、SIMロックを原則として禁止する方針が盛り込まれている。

総務省への事前確認で例外的に「認める場合あり」

 例外的にSIMロックが必要と認められるケースは、本体代の割賦代金を支払いしないなどの不正行為が行われるおそれが低いことが確認できないだけでなく、利用者の権利や競争への制限効果がより低い他の代替的な手段で代金の不払い防止が困難であると認められる場合に限定する。

 SIMロックを行う場合は、総務省に事前の資料で確認が必要で、総務省が資料を確認した場合に限って例外的にSIMロックの設定が認められる場合がある。全体的に、従来のガイドラインと比べてSIMロック解除を厳しく禁じる方針と言える。

 総務省は、SIMロックを行おうとする通信事業者に対して、SIMロック以外の手段によって対応ができないかについて事業者内で十分に検討を行うことを求める。その上で通信事業者がSIMロックを設定する場合には、事前に資料の提出を義務化する。

 資料の内容は、事前の検討の経緯や検討体制、SIMロックを設定する目的、SIMロック以外の手段では目的の難しい理由および定量的なデータを含めた根拠、SIMロックを設定する予定時期、対象となる機種、SIMロックを設定した端末を渡す対象者、SIMロックを設定した際の利用者および競争への影響を最小化するための考え方および取り組み、SIMロックの設定および解除の具体的な手順を示した運用方針の説明が必要となる。

SIMロックした後の「手続きなしで解除」を義務化、事後報告も必須に

 これらの手続きを経て、例外としてSIMロックを行う場合についても、SIMロックを設定する予定時期や対象となる機種など、総務省に資料で提出した内容を超えてSIMロックを行うことを禁止する。

 さらに、端末代金の総額が支払われた場合や、信用確認措置に購入者が応じ、その結果が適正であると確認できたとき、過去にSIMロック解除を行ったことがある利用者が最後にSIMロックを解除した日から起算して100日程度を超えた場合には、利用者の手続きなしに無料でSIMロックの解除を義務付けする。

 SIMロックを設定する端末を販売する場合には、SIMロックが設定されているかどうか、利用者がインターネットや電話などで確認できる手段を用意し、SIMロックの設定が不要となった場合には、利用者にSIMロック解除手続きを課すことなく、無料でSIMロックを解除することを義務付ける。

 総務省は、SIMロックを設定した端末を販売する事業者に対して、販売が開始された月からSIMロックが解除された月まで毎月、販売した機種および対象者、販売が行われた店舗名などのチャンネル、機種毎の販売台数、機種毎のSIMロック解除台数について、毎月の報告を求める。

新ガイドラインは2021年10月1日からを想定

 総務省では2021年10月1日からのガイドライン運用開始を検討している。ガイドラインの改正前に販売される機種については、ガイドライン改訂の影響を受けないが、2022年10月1日以降に発売される機種は、SIMロックを原則として禁止する。

 また、2023年10月1日以降は、過去にSIMロックを設定した全ての端末について、その解除申込みがあった場合にはインターネット、電話、店舗などで無料でSIMロック解除を行うことを義務付ける。

 ただし、システム上の問題や店舗において一度に複数のSIMロック解除を受け付けることによって、店舗での業務が著しく制限される可能性がある場合には、総務省へその理由および対応できないチャネルを報告し、確認を受けた場合にはSIMロック解除の義務化の対象外となる。

eSIMサービス:MNOとMVNOで同時期の提供を求める

 「eSIMサービスの促進に関するガイドライン(案)」では、MNOとMVNOに対してeSIMサービス提供を求める。

 MNOに対しては、eSIMサービスを導入していない事業者には速やかな導入を求めるほか、特にスマートフォン向けの提供を重視している。

 また、MVNOがeSIMサービスを提供可能とするために、RSP(Remote SIM Provisioning)機能をMVNOに開放するように求めた上、できる限りMNOとMVNOが同じ時期にeSIMサービスを提供できるよう、RSP機能やこれに付随するAPI連携に応じること求めている。

 SIMロックを原則禁止する「移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン」および、eSIMサービスを促進する「eSIMサービスの促進に関するガイドライン」は、6月28日まで意見募集を受け付けしている。