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総務省、電気通信事業法改正に伴う省令改正についてのパブリックコメントを公開

端末値引き上限2万円について否定的意見が多数

 総務省は26日、電気通信事業法の一部改正に伴う関係省令等の整備などに対する意見募集の結果を公表した。これらの意見募集は6月22日~7月22日に行われたもので総計で67件の意見が提出された。総務省では、意見募集の結果などを踏まえて関係省令の改正などを行うとしている。

 2019年6月11日に行われた第14回モバイル研究会では、携帯電話事業者が行っている割引施策である端末の値引きの抑止および、違約金を現状の9500円から1000円とする議論が行われた。

 端末価格の値引きについて、MNOは値引き額を最大2万円(税込)とすべきとされた。端末価格において、過剰な値引き合戦が繰り広げられている現状では、通信料金側の値下げ競争が十分に行われない、端末の定価が高止まりになるという問題点が存在する。そのため、端末とセットで契約することにより通信料金を割引にする施策は一律禁止、また継続利用を条件としない通信役務の利用、端末の購入を条件として行う利益の提供については、2万円を上限とすることで、通信料金の競争の促進および端末定価の値下げにつながることを期待するとしている。

 また、違約金1000円議論においては、高額な違約金で利用者を不当に拘束しているという見解が示された。総務省で行った利用者アンケートでは、アンケートに参加した6000人のうち、他事業者へ乗り換え意思があり違約金を支払ってでもすぐに乗り換えると回答した1753人の内8割のユーザーが、すぐに移行を検討する違約金の額は1000円と回答したという。このことから、違約金の金額は1000円であれば、事業者間の適正な競争関係を阻害する可能性がないと結論づけたとしている。

 違約金総論については、モバイル研究会内部でも多くの意見が飛び交った。特に違約金の金額を決めた根拠がアンケート結果に基づくものであるという事実に対し、根拠としては非常に弱く、回答者がどのような層かもわからない、また、どのような道筋を経て1000円という具体的金額に至ったのかが曖昧であり、アンケート以外の根拠も必要ではないかという意見があった。

 公開されたパブリックコメントの中で、アップルは、自社の製品について「さまざまな価格帯を設けることで、ユーザーが自分にあった選択を可能としている。それにより消費者利益を保護し、競争を促進してきた。今回の総務省省令案はそれに逆行するものである。特に最終調達日から24カ月以上が経過した端末や、製造が中止され最終調達日から12ヶ月が経過した端末に対する値引き許容は、モデルを乱発して在庫を抱えるメーカーにのみ有利なルールだ」と総務省に対して強く改正案の見直しを求めた。

 また米半導体企業の大手クアルコムの日本支社クアルコムジャパンは「継続利用を前提としない契約に対する規制は、これまでの議論には明確に上っておらず、省令で規制することは、政府への委任範囲を広く解しすぎていると言わざるを得ない。政府が値引き額を定めることは、結果的に事業者間の競争を阻害し、消費者の負担を増加させることにつながる。自由であるべき市場に対して、規制をかけるものであり、改正法の付帯決議2項にある『事業者の経営判断及び健全な事業活動を阻害することのないように十分に配慮すること』とあるように、規制範囲やその手法は、事業者の営業の自由に配慮した謙抑的なものであるべき」とコメントしており、アップル同様に改正案に対して否定的な見方を示した。