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成層圏から通信を提供、ソフトバンクが基地局になる航空機を開発

 ソフトバンクは、米AeroVironmentとの合弁会社であるHAPSモバイルを通して、成層圏から通信ネットワークを提供するシステム「HAPS(High Altitude Platform Station)」事業を展開する。2023年頃に海外でサービスを提供開始する予定で、日本では2025年頃のサービス開始を見込む。

 事業展開にあたり、成層圏で飛行させ通信を提供する無人航空機「HAWK30(ホーク30)」を開発した。機体の大きさは78mで、航空機関連の認証は今後取得する。1機で直径200キロの範囲を、40機で日本全体を通信エリアとしてカバーでき、既存の周波数帯を利用、スマートフォンに直接通信サービスを提供できる。まずは、インターネットが普及していない地域に向けてサービスを提供していく。

 成層圏は雲がなく気流が安定しているため、災害時などには、地上の基地局の代わりとなり、通信を提供できる。平時は地上の基地局とともに通信サービスを提供することが可能。航空機にはソーラー充電パネルが搭載され、日照時間帯に充電し、夜間は蓄電池を電力として飛行、6カ月の連続稼働が可能としている。

 HAPSは、バックボーン回線にあたる「フィーダリンク」と、スマートフォンなどと通信する「サービスリンク」の2つの周波数で構成されている。現時点で、HAPSがサービスリンクで利用できる周波数は、2.1GHz(Band1)のみだが、標準化活動により、2024年以降には、450MHz~2.6GHzの中で使用できる周波数が割り当てられるという。また、フィーダリンク側も使用できる周波数が追加される予定。フィーダリンクの標準化活動にはエアバスやFacebookなどが参画している。

 すでに次世代機である「HAWK50(ホーク50)」も計画されている。ソーラー発電性能と充電性能を高めることにより、日本を含む赤道からプラスマイナス50度の緯度の範囲で飛行可能になる。

 また、同じくHAPS事業を手掛けている、米Alphabetの子会社であるLoonと戦略的関係を発表し、HAPSモバイルから140億円の出資が行われる。HAPSモバイルとLoonでは、HAPSモバイルが開発した機体の提供や、Loonの機体管理システムをHAPSモバイルに最適化するなどといった協業が行われる。

HAWK30
HAWK30の模型

質疑応答

 発表会には、ソフトバンク 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTOであり、HAPSモバイル 代表取締役 兼 CEOの宮川潤一氏に加えて、パートナーであるAeroVironmentのPresident & CEO Wahid Nawabi氏、Loon CEO Alastair Westgarth氏が登壇した。質疑応答は、宮川氏が応じた。

AeroVironmentのWahid Nawabi氏(左)とソフトバンクの宮川氏(右)
LoonのAlastair Westgarth氏(左)とソフトバンクの宮川氏(右)

 HAPSの5G対応については、5Gの普及を待ってからサービスを開始するのではなく、まずは4G対応から取り組み、5G対応端末が普及してくれば取り組むという。実効速度については使用する周波数によるが、現在利用可能な2.1GHzを利用すると約280Mbpsだという。

 日本での通信エリアの人口カバー率は、すでに99%程度となっているが、HAPSによる通信エリア拡大のメリットについて問われると、IoTへの活用が可能で、電波が届かないエリアでの作業を伴う、林業などの産業での活用に期待しているという。