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AIスピーカーで「ピカチュウ」と会話、Google HomeとAmazon Alexaで

開発担当者が語る「ピカチュウトーク」の狙い

 ポケモン社は、スマートスピーカー向けのサービスとして、人気キャラクターのピカチュウとお話を楽しめる「ピカチュウトーク」を発表した。日本では年内、海外では2018年以降に提供する。Google Home/Home mini、Amazon Alexa対応端末で楽しめるようになる。利用料は無料。

AIスピーカーで「ピカチュウ」と会話、Google HomeとAmazon Alexaで

 「ピカチュウトーク」は、スマートスピーカーを通じて、ピカチュウとの会話を楽しめる。ユーザーの話しかけた内容にあわせて、ピカチュウは「ピカ~」「ピカピカ」と反応、子供~大人まで幅広いユーザーにとって楽しめる内容に仕上げられた。

 Alexa対応製品やGoogle Homeで「ピカチュウを呼んで」と声をかけると、ピカチュウトークに切り替わる。日常的な会話に対応し、「おはよう」「こんにちは」「今日の天気は?」といったワードに反応するが、基本的にピカチュウが口にするのは「ピカ~」「ピカピカ」「ピカチュウ」といった言葉だけ。これだけでは何を言っているか理解しづらいところはあるが、イントネーションなどで、感情のニュアンスを表現しており、ユーザーの話しかけた内容にあわせた反応を返してくれる。

 また「10万ボルト」「ゲットだぜ!」と、ゲーム内容にあわせた著名なワードには、そのワードにあわせた独特のリアクションを返してくれる。姿は見えないが、スピーカーの向こうにピカチュウがいる雰囲気を存分に味わえる。

 日本ではまだ登場から間もないスマートスピーカーだが、利用時には時刻や天候を聞いたり、アラームをセットしたり、音楽を再生したりするなど、ユーザーがしたいことをリクエストすることが多い。

 「ピカチュウトーク」を実際に試したところ、スマートスピーカーに対する姿勢ではなく、動物に対するような気持ちになっていることに気づいた。同社では、子供がいる場面や、恋人同士での利用なども面白いのではと語る。

スマートスピーカーでエンタメ

 開発に携わったポケモン社のプラットフォーム戦略室に所属する新藤貴行氏と、小川慧氏の2人。小川氏は、スマートフォンアプリ「Pokémon GO」では周辺機器の「Pokémon GO Plus」の開発を担当した人物でもある。

AIスピーカーで「ピカチュウ」と会話、Google HomeとAmazon Alexaで ポケモン社の小川氏(左)と新藤氏(右)
ポケモン社の小川氏(左)と新藤氏(右)

 そんな両氏によれば今回の「ピカチュウトーク」は、Google HomeおよびAlexa向けとしては、数少ないエンターテイメントカテゴリーのアプリ(Google Home向けとしては“アクション”、Alexa向けとしては“スキル”と呼ばれる仕組み)のひとつだ。

 スマートスピーカーの黎明期と言える今だからこそ、ピカチュウとの会話というシンプルな機能に絞り込み、もっともシンプルでわかりやすく、誰もが楽しめるコンテンツを目指した。

ピカチュウらしさを磨き込んだ

 スマートスピーカーは「AIスピーカー」と呼ぶ声もあり、対話の自然さがウリのひとつ。「ピカチュウトーク」では、「ピカピカ」と発話するワード自体は少ないものの、ユーザーの問いかけに対して、いかに“ピカチュウ”らしくするか、という開発目標を掲げていた。

 ここで開発陣とともに力を尽くしたのが、戸田昭吾氏だという。戸田氏はアニメ版ポケモンのオープニング曲やエンディング曲の歌詞を数多く手がけてきた人物。「ピカチュウ、お風呂に入るよ」といったさまざまなパターンのユーザーからの呼びかけへ、自然なリアクションになるよう、戸田氏が台本をイチから起こしていった。

 シナリオの分岐が多岐にわたり、それにあわせる声も必要になることから、「ピカチュウトーク」のために、ピカチュウの声を演じる大谷育江氏の録り下ろしボイスも100以上、用意された。

 「ピカチュウトーク」は、特別なAPIなどが用意されたわけではなく、グーグルやAmazonが提供する一般開発者向け環境で開発が進められた。GoogleアシスタントやAlexaの仕掛けのなかでは、ユーザーの声を認識する自然言語処理が活躍。ただ、たとえば「こんばんは」「ばんわ~」「グッドナイト」といったワードを、夜の挨拶を意味するものとしてまとめるのは、ポケモン社側が整備。そして先述の通り、ユーザーが問いかけた内容にあわせてどう返答するか、そのシナリオはポケモン社が戸田氏らとともに用意した。

 ランダムな返答の幅を持たせつつ、夜遅くにピカチュウを呼び出すといびきをかいていたりするなど、時間に応じたリアクションまで組み込まれている。ちなみに「ピカチュウトーク」のピカチュウは、アニメで主人公とともに冒険するピカチュウではない。そのため、「サトシ」といった名前や、アニメで他のポケモントレーナーのもとにいたピカチュウの名前を告げても反応はしない。

 これからのクリスマスシーズンに向け、関連するワードにも反応するの? という質問に、新藤氏は明言を避けつつ、何らかの仕掛けがあることを示唆していた。

スマホアプリは検討中

 「スマートスピーカー×ポケモン」という異色の組み合わせはインパクト十分。作品に登場する「オーキド博士」のようなキャラクターも考えられたのでは? という筆者の質問に、新藤氏はポケモン図鑑や、何らかのゲームなど、アイデアはいろいろあったと語る。その上で、今回は、子供から高齢者まで、幅広い層に知られる「ポケモン」を代表するキャラクターであるピカチュウとの会話にフォーカス。

 「ピカチュウ、○○をして」と家電などを操作するアイデアもあったのでは? との問いに新藤氏は「ピカチュウ、10万ボルト! と言えば、スマートスピーカー対応ライトが明滅する、といったアイデアはあった」とニヤリ。小川氏は「そういったアイデアは技術的には実現できる」としつつも、スマートスピーカーや対応ライトの所有率などから、そうした機能は盛り込まず、あえて会話に絞った。

 もともとポケモン社では、新たなテクノロジーを活用しながらも、ローンチの際には、簡単に使えて、よりシンプルな楽しみ方に仕立て上げるというポリシー。スマートスピーカー黎明期だからこそ「最新トレンドのスマートスピーカーでピカチュウと会話できる」と言う形を目指した。

 「ピカチュウトーク」のスマートフォンアプリ版について小川氏は「検討中」と語る。基本的には自宅に置いたスマートスピーカーで、ちょっとしたスキマ時間に戯れたり、疲れたところで癒やされたりといった使い方を想定しており、「技術的にはどこからでもつながるが、(外で使う姿は)あまり想像がつかない」(小川氏)。

 スマートスピーカー向けの「ピカチュウトーク」は年内にも提供される予定。新藤氏と小川氏は口を揃えて「どう使われるかわからない」としつつも、その場にピカチュウのぬいぐるみを置いて会話を楽しむような人が出てくれば嬉しい、と語っていた。