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「実質0円」規制の影響は100億円、大手キャリア間のMNPは減少~ドコモ吉澤社長、決算会見で語る

 NTTドコモは2016年度第3四半期(10月~12月)の業績を発表した。その中で、総務省が打ち出した割引規制のガイドラインの影響を問われた代表取締役社長の吉澤和弘氏は、割引額の圧縮により24カ月で300億円強、2016年度だけで見ると100億円程度の影響があり、その分、同社の利益を押し上げる要素になったと説明する。

 なお第3四半期は、営業利益が8473億円だった。これには750億円程度の特殊な要因(償却方法の変更など)が含まれており、それを除いた営業利益は7673億円だった。

ガイドラインにより大手3社の競争は減少

 ガイドラインの影響として吉澤氏は新規契約が減少し、あわせて解約もまた減少していると説明する。

吉澤氏
「(総務省の)タスクフォースのなかで販売方法の見直しなどがあり、キャリア間の行き来が沈静化している。(解約率が減少した要因として)そのひとつの理由としてあるのかなと」

 高額なキャッシュバックは、他社からの乗換である「MNP(携帯電話番号ポータビリティ)」のユーザーをメインターゲットにして実施されていたことが多かった。つまり実質0円を規制するということは、「規制される対象はMNP」(吉澤氏)になる。MNPの誘因材料だったキャッシュバックや高額な割引が減ったことで、MNPが減る。それはつまり新規契約・解約が減ることになり、NTTドコモ、au、ソフトバンクという大手3社間の顧客獲得競争に影響した。

 一方で端末販売数自体は前年度より延びている。第1四半期こそ、ガイドラインの影響が強く出たが、第2四半期(2016年夏)、第3四半期(2016年秋)と時間が過ぎるに従い、フィーチャーフォンを対象にした「はじめてスマホ割」や、機種変更で、端末需要が復活した。

 ただし2017年6月には、下取り価格への新たな規制がスタートするため、何らかの影響が出てくる可能性はありつつ、1月に入って示された新ガイドラインに従う方向で、対応策を現在検討中であることも明らかにされた。

ワイモバイルの影響は横ばい

 大手3社間の競争が落ち着きを見せる一方、2016年を通じて活発な動きを見せていたのはワイモバイル。これに吉澤氏は「2016年2月ごろから、ワイモバイルなどの影響が大きくなっているのは確か」と述べ、MVNOを含む格安スマホにドコモのユーザーが乗り換えるケースが増えてきたことを認める。

 ただ、その影響が拡大したのか、という点では「わりと影響はあったけどイメージは横くらい」と手で水平を描きつつ、大きな盛り上がりには至らなかったとする。

「MONO」に続くモデル、新しい販売スタイルは検討中

 2016年第3四半期のトピックスのひとつに挙げられるのが、ドコモ初のオリジナルスマホ「MONO」の登場だ。もともと廉価な端末に割引を付けて、650円というインパクトのある実質負担額で12月に発売された機種。

 吉澤氏は「もう少しこういうものを増やしていく。それからそういった端末に対して、実際に利用する料金面で何かセットすることも考えられるのかなと思う。具体的には何も決まっていないが、さらに研究していきたい」と語り、新たな手法の導入を示唆した。

IoT向けのネットワークソリューション、今春より

 2016年度第4四半期、そして2017年度に向けた新たな展開のひとつとして、IoT分野での新しい通信サービスが予告された。

 IoTは、低消費電力でなおかつ、サービスエリアが幅広い通信技術の開発が進められている。27日の会見で吉澤社長は、「LTE Cat.M(カテゴリーM)」やNB(Narrow Band)-IoTといった方式に加えて、LoRa方式を採用する方針も明らかにする。LTE Cat.MやNB-IoTについては2016年11月に検証をスタートしていたが、吉澤氏は「LoRaも本格展開する」とコメント。

 春からはLoRaを用いたソリューションを夏からはCat.M、NB-IoTといったセルラーIoT技術を導入していく。

主なオペレーションデータ

 第3四半期時点での契約数は7359万件で、前年同期の6960万件から6%増加した。スマートフォンやタブレットの利用数は3493万件(前年同期3613万件、10%増)。解約率は0.57%(同0.59%、0.02ポイント減)。

 通話定額とパケットパックの「カケホーダイ&パケあえる」の契約数は3520万件(同2652万件、1.3倍)、ドコモ光契約数は297万件(同109万件)だった。特にドコモ光は、フレッツ光からの転用だけではなく、新たな光回線の導入となる新規契約の割合が増加。2016年度第2四半期時点では全体の2割が新規申込だったが、第3四半期では4割にまで増えた。

 ARPU(ユーザー1人あたりからの平均収入)は4450円だった。内訳は、音声ARPUが1280円、パケットARPUが2960円、ドコモ光ARPUが210円。また月間の平均通話時間(MOU)は139分だった。

 このほか、クレジットカードサービスの「dカード」は1731万契約(前年同期は1611万契約)に成長。このうちゴールド会員は200万契約を突破した。

ユーザーへの還元、1500億円規模へ

 ドコモでは「ずっとドコモ割」「更新ありがとうポイント」などに代表されるユーザーへの割引施策は、2016年度、800億円程度になる見込み。こうした割引やキャンペーンは、年度の途中から始まったものもあるが、仮に、年度の最初から実施していたと想定した場合、通年での還元は1500億円規模になるという。