インタビュー

AQUOS sense3/sense3 plus 開発者に聞く、スペック表にでない部分も磨き上げたスタンダードモデルのひみつ

 シャープの最新ミドルレンジモデル「AQUOS sense3/sense3 plus」が発表され、各通信会社から取り扱いが発表された。従来モデルの「AQUOS sense2」は、BCNの調査によれば、2019上半期で最も売れたAndroidスマートフォンで、senseシリーズはスタンダードモデルの定番シリーズとなりつつある。

AQUOS sense3
AQUOS sense3 plus/AQUOS sense3 plus サウンド
機種キャリア
AQUOS sense3NTTドコモ、au、UQ mobile
AQUOS sense3 lite楽天モバイル
AQUOS sense3 plus サウンドau
AQUOS sense3 plusソフトバンク、楽天モバイル
AQUOS sense3 basicソフトバンク(法人向け)

 そんなsense3シリーズの特徴や、本体の設計について開発陣にインタビューを行った。話を聞いた担当者は、通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部長の林孝之氏はじめとし、senseシリーズ全体を担当した同事業部 商品企画部 課長の清水寛幸氏、sense3 plusを担当した同事業部 商品企画部 主任 福山康陽氏、設計を担当した同事業部 回路開発部 課長の山下宏人氏の4名。

左から福山氏、林氏、清水氏、山下氏

初代のsenseシリーズから変わらない“必要十分”というコンセプト

――シャープが国内Androidの販売台数1位を獲得できたのは、これまでのsenseシリーズの貢献もあったかと思います。ユーザーに支持してもらえている理由はなんでしょうか。

福山氏

福山氏

 初代モデルからコンセプトとして「必要十分」というものを挙げています。その必要十分さを毎年、見抜いてお客さまに届けられていることが一番の理由かと思います。

 スマートフォンをどのように使うかは、多くのお客さまの中で決まってきています。そうした中、しっかり使われる方は丸一日、ライトに使われる方はより長時間使える電池持ちが、今まさに必要十分さとして求められているところだと考えました。そこで、sense3とsense3 plusではともに4000mAhのバッテリーを搭載しました。

林氏

 今回のモデルで3代目となりますが、初代モデルからコンセプトを変えてないです。必要十分だからといって、この条件に固執することなく、そのときのトレンド、お客さまの使い方を見ながらその時の必要十分さを判断しています。

清水氏

 私が思う支持されている理由は、使う人の気持ちを考えて仕様を決定していることだと思います。スペック上の数値も大切ですが、実際に使用した時に価値があるかどうかを考えながら決めていますね。その考え方が届いているのだと思います。

――なるほど。使う人の気持ちを考えた仕様というのは、今回のモデルだと……。

清水氏

 やはり一番の特徴は、4000mAhのバッテリーを搭載したことですね。市場を見ると4000mAhという数字は特筆して大容量とは言えないかもしれません。ですので、容量よりも実際に使用して電池が持つことを目標にしました。バッテリーの大きさだけでなく、IGZO液晶やそのほかの省電力化技術を採用して電池持ちの良さを実現しています。

 電池容量でバッテリーの持ち具合を比べる方もいると思いますが、私たちとしては、各キャリアやメーカーが公開している「電池持ち時間」に注目してほしいです。そこを見てもらえると、同じバッテリー容量でも電池持ち時間が違うことが分かってもらえるかと思います。

林氏

 2モデルで同じバッテリー容量ですが、それぞれ想定しているバッテリーの使われ方は異なっていて、sense3はじっくりと長く使ってもらえる使われ方、sense3 plusの方は丸一日存分に使ってもらえるようなイメージをしています。

sense3の背面カバーを外したところ。4000mAhのバッテリーを搭載している

――確かについつい、バッテリー容量で見比べてしまいますね。そのほかにユーザーの使い方を考えた特徴はありますか。

福山氏

 sense3 plusでは、ステレオスピーカーを搭載し、「Dolby Atoms」をサポートしています。ミドルレンジモデルの市場を見ると意外にこれらをサポートしている端末が少ないと思います。

 senseシリーズは端末を賢く選ぶ方が多いです。とは言え、スマホの使い方を見ると、動画サービスなどエンターテインメントを楽しみたい方が増えてきていると思っています。sense3 plusは、端末を賢く選びながらもエンタメを楽しみたい、そうしたお客さまに向けたモデルです。

清水氏

 私もsense3 plusを使い始めてからは、音楽を聴いたり、動画を見るときは絶対にこの端末を使っていますね。音楽と映像の体験がかなり違います。

“必要十分”の決め方、ワンセグは?

――求められている“必要十分”さは、どのように決めていますか。

清水氏

 必要十分というのは、悪く言うと“逃げ”にも使えてしまう言葉です。senseは必要十分だからこれでいいよね、といった妥協が生まれてしまう可能性があります。

 sense3シリーズでは、そこにはまらないように心がけました。これがスマートフォンの基準になるというのを定義し続ける存在でありたいと思っています。

 企画するときは1年以上先に発売するものなので、業界だけでなく、お客さまの使い方などを予測して開発しています。また、他社のミドルレンジモデルと似たようなものにならないように、シャープならではのIGZO液晶や省電力化技術などを通して、AQUOS senseでしか提供できない価値というものを考えて企画しています。

――他社のミドルレンジモデルでは、ワンセグチューナーまたはFMチューナーを搭載しているところがあります。sense3シリーズでは搭載されていませんが、必要十分に入らなかったということでしょうか。

清水氏

 必要としている方がいるのは重々承知しています。ただ、必要とする人と、しない人がいるような評価が分かれる機能については、慎重に仕様を決めています。

 多くの方にお届けしたいモデルですので、あまり機能を載せてしまうと、価格に反映されてしまう面もあります。ですので、お客さまが搭載されてうれしい機能を優先してサポートしていきたいと思っています。

 災害時に必要とされるニーズも把握しているので、今後については検討していきます。

林氏

林氏

 最近は、それらの代替となるサービスが増えてきています。それではないといけない機能はだいぶ少なくなってきていますね。機能をそぎ落として、必要十分に近づけようとしています。

 ハイエンドモデルでは、あったほうが便利と思う機能は積極的に搭載していけますが、ミドルレンジモデルでは判断が難しいです。

――ワンセグについてですが、最高裁での受信料の契約が義務づけられると判決がでました。この判決は搭載を検討する上で、影響がありましたか。

林氏

 報道が出始めたときに、搭載されると困るというお客さまの声があったことは認識はしています。

清水氏

 しかし、そうしたニーズから搭載しないという判断をしているわけではありません。コストアップにより、価格が上がってしまうという理由もあります。

sense3シリーズではブランドカラーを設定

――今回はplusも含めてラインアップが多いですが、カラーバリエーションも充実していますね。

清水氏

 発表会ではあまり強調していませんでしたが、今回のsense3シリーズからブランドカラーを設定していて、sense3は「ライトカッパー」、sense3 plusは「ムーンブルー」です。今後もsenseは、この色とイメージを持ってもらえるようなブランドカラーを設定していきたいと思います。

sense3のブランドカラーとなるライトカッパー(右)。

林氏

 ブランディングをする上で、色によってお客さまに認識してもらえるような、そんな取り組みも必要と考え導入しました。

清水氏

 これまでのモデルとは違い、各事業者向けの専用色をたくさん揃えるのではなく、まずシャープが考えるベストなカラーバリエーションを考え、事業者様と話し合いをしながら追加色を作っています。

――この2色をブランドカラーとして設定した理由はありますか。

清水氏

 sense3のライトカッパーは、必要十分というコンセプトから、普段使いを想定した「落ち着きのある」「飽きがこない」それでいて上質なイメージになるよう選定しました。

 他社のスマートフォンでは、光沢のあるカラーがラインアップされています。それはそれで所有感は満たされると思いますが、sense3ではずっと持っていられるようなカラーを考えました。

――ラインアップが多い分、名前がややこしいという印象も受けます。

清水氏

 提供する価値が同じであれば、冠する名前は同じべきだと考えております。senseシリーズとしての考え方は共通しているので、senseの兄弟機種として提供する方が、それぞれバラバラの名称を付けるよりは理解してもらえると考えています。

 今後、もし提供する価値が変わるようなら、別の名称を設定する可能性もあります。

――sense3とsense3 plusは、端末の仕上げや価格などに差がありますが、同じミドルレンジモデルということで似ている部分もあります。ユーザーはなにを基準に選択したらいいでしょうか。

清水氏
 各事業者様で販売されるので、事業者様とコミュニケーションをとって機種の打ち出し方は相談しています。

 sense3は、安心して使える、これを選んどけば間違いないというイメージで打ち出しています。sense3 plusの方は、存分にやりたいことが楽しめるというイメージですね。

 どういった使い方をしたいかを想定してもらえれば、自分にあった機種が選択できるように努力しています。

――sense plusは今回で2代目です。sense“2”plusではなく、sense3 plusとなった理由はなんでしょうか。

林氏

 初代モデルは、SIMフリー専用モデルとして出しました。今回は法改正もあってキャリア向けにも、二極化(ハイエンドとミドルレンジ)している市場の間の存在が必要だと思い投入しました。このタイミングでの投入になったため、シリーズ名を合わせて販売した形です。

sense3 plusはR3よりもいい音のスピーカー、ハイエンドのノウハウをミドルレンジに

――先ほど、sense 3 plusの特徴として、音へのこだわりが挙がりました。夏モデルの「AQUOS R3」でも音の体験はかなり迫力がありましたが、R3に搭載したノウハウが生かされていることはありますか。

山下氏

 実はsense3 plusでは、R3よりもいい音がでるように設計しています。搭載しているスピーカーを大きくするとともに、内部構造を調整し、音の出方を最適化しています。

清水氏

 スピーカー単体の性能も重要ですが、音はアナログなもので、ちょっとした構造で性能が左右されます。そこのチューニング技術にはR3で培ったノウハウが生かされていますね。

林氏

 sense3 plusはハイエンドモデルではないので、今あるサービスをカジュアルに楽しんでいただくことが多いと思います。家の中でスピーカーを接続せずに使う場合や、お風呂の中で使用するシーンを想定して開発しました。

清水氏

 これはカメラの話ですが、R3で搭載された「AIライブストーリー」は、sense3/sense 3 plusの両方にも搭載しています。AQUOSシリーズ全体として、機種によらずお届けしたい体験は、シリーズを問わず搭載してあります。

スペック表に表れない部分で、他社ミドルレンジモデルに挑む

――他社でも、秋冬モデルとしてさまざまなミドルレンジモデルが登場しています。senseシリーズでは、どのような点を訴求していきますか。

福山氏

 AQUOSでは、お客さまに長く使ってもらえるように発売から2年間のOSバージョンアップを約束しています。また、電池の寿命を伸ばす「インテリジェントチャージ」もサポートしています。

 これらの機能は、スペック表に出てこない部分ですが、こうした長く使用してもらうためのサポートをシャープとして訴求していきたいです。

清水氏

 具体的な例で言いますと、繰り返しになりますが電池持ちです。また、スペック表に出てこない部分ですが、sense3シリーズでは、タッチスキャン速度を120Hzにしてあります。これにより、スクロールした後の動き出しの速度が良くなっています。

 カメラもシリーズ初のツインカメラにしています。このクラスでは、主にポートレート用の2個目のレンズが搭載されることが多いですが、ちゃんと超広角レンズを載せています。

 すでに発売されている「AQUOS sense3 lite」のお客さまの声を見ると、「思っていたよりカメラの画質が綺麗」という意見をもらっています。R3と同じ画質エンジンを搭載した効果だと思っています。

 sense3の標準カメラのセンサーは、sense2と同じものですが、「IRカットフィルター」をより性能いいものに変えて、よりフレアに強くなりました。sense3 plusでもパーツは違いますが、同様のことをしています。

 こうした、スペック以上に使っていて、気持ちいいと感じてもらうようにこだわっています。

FeliCaの搭載位置は、より質感を高めるための工夫

――本体の設計で工夫したことはありますか。

山下氏

 電池容量は従来モデルに比べ、1.5倍に増えましたが、基盤を25%削減したことで、端末のサイズアップを抑えました。削減にあたっての工程は地味な作業です。コストをかければ、基盤は小さいものが作れますが、ミドルレンジモデルではコストが重要なので、費用対効果を考えながら製作しています。

先代モデルsense2(左)とsense3(右)、バッテリー容量増加に伴い、バッテリー部分が大きくとられている
液晶側も薄く設計。指紋センサーはディスプレイドライバーと重ねて配置

 液晶側もパーツの構成を変えることで、電池のスペースに割り当てられるよう薄くしています。商品のポリシーである、前面の指紋センサーを入れながら、ディスプレイのフチを小さくするため、液晶のドライバーの上に指紋センサーを重ねて配置しています。

清水氏

 初代モデルのsenseでは、ディスプレイのドライバを避けて、指紋センサーを配置していたため、センサーと液晶の間にスペースができてしまっていました。

初代のsenseでは指紋センサーとディスプレイ間がおおきくとられている
sense3では、指紋センサーとディスプレイの間が狭い

山下氏

 筐体についてですが、sense2ではアルミを採用し、初代のsenseよりもひねりなどに強くしました。sense3ではより長く使ってもらえるように、さらに筐体を強くし、結果として19のMIL規格を取得することができました。

 また、バッテリーの安全性に対する欧州の法規制(CE)が新しくなるということもあり、安全性に冠しても新たな規制に準拠した設計をしています。

――背面のFeliCaの搭載位置も特徴的ですよね。

カメラ部に搭載されるFeliCa。これには理由が

清水氏

 sense3 liteやsense3の発表時にFeliCaの搭載位置が話題になったかと思うのですが、これには理由があります。

 本体がアルミボディでFeliCaの電波を通さないため、カメラリングの周辺に小型化したFeliCaのアンテナを形成しています。

 sense2もアルミボディでしたが、FeliCa部分を樹脂にすることで電波問題をクリアしていました。

 sense3では、より質感を高めるために樹脂の塗装からアルマイトの染色にして、よりアルミの質感が出るように工夫しました。そこでFeliCaのアンテナは、この配置になったんです。

山下氏

山下氏
 FeliCaをこの配置にして他のアンテナパターンも調整することで、樹脂部分がないアルミボディ一体となったので、強度を上げつつ、背面カバーを軽量化することができましたね。

清水氏

 sense2のときのアルミの塗装は、焼付塗装で何層も塗り重ねるので、苦労する塗装でした。染色のおかげで色が剥げないです。

山下氏

 その分、塗装の厚みも増えていましたが、sense3でアルマイト染色になった分、厚みを減らすことができ、結果としてバッテリーのスペースにあてることができました。

山下氏

 sense3では、1週間の電池持ちを実現するといっていますが、実を言うと、sense2のような電池持ち優先のパフォーマンスにすると、もっと時間は伸びます。

 今回は、タッチスキャン速度の強化などに余力をあてて、パフォーマンスに余裕を持たせました。

――アルミボディとは仕様書などでよく見ますが、ここまで工夫がされているとは思いませんでした。sense 3 plusはまたデザインテイストが違いますよね。

清水氏

 sense3 plusの方は、バスタブ構造ではなく、フレームとパネルの構造にしてあります。エンタメを楽しみたい方にはこっちの構造がいいだろうと考えて、デザインを仕上げました。

――最後におすすめの機能はあれば、教えてください。

清水氏

 強化された「スクロールオート」ですね。従来モデルから搭載されている自動スクロールの機能ですが、最大速度の向上と、一時停止ができるようになりました。速度が上がったことにより、SNSなどの流し見がとてもやりやすくなりました。すごく使いやすくなったので、ぜひ使ってほしいです。

 こうした機能は、ユーザーの方に便利だと思ってもらい、一度AQUOSを使ったら、次もAQUOSを選んでもらえるようなきっかけになってほしいと思っています。

――過去モデルになりますが、同じsenseシリーズの「AQUOS sense plus SH-M07」のOSを、Android 9 Pieにするアップデートの提供が遅れています。どのような事情ですか。

清水氏

 お客さまにはお待たせして申し訳ないと思っています。アップデートに向けた準備の段階で、バグが見つかっており、対策をして動作検証をするのに時間がかかっている状態です。不完全な状態では、お届けすることはできません。スピード感をもって取り組んでおり、11月中にはソフト更新を提供する予定です。

AQUOS sense plus SH-M07

――本日はありがとうございました。