インタビュー

「INFOBAR xv」の手応え、au Design projectのこれからを聞く

 KDDIがau Design projectの端末として発売した4G LTEケータイ「INFOBAR xv」。2018年11月末に発売されてから約3カ月が経過した。

 KDDI社内でau Design projectに携わるKDDI 商品・CS統括本部 プロダクト企画部 マネージャーの砂原哲氏、同プロダクト企画部 課長補佐の美田惇平氏に、「INFOBAR xv」のこれまでの取り組み、これからの取り組みを聞いた。

KDDI 商品・CS統括本部 プロダクト企画部 マネージャーの砂原哲氏(左)、同プロダクト企画部 課長補佐の美田惇平氏(右)

スマホ並みの予約、SIMピン発売

――発売から3カ月が経過しましたが、販売数などはいかがですか?

砂原氏
 具体的な数は公表していないのですが、当時のフラッグシップモデルと同じぐらいの予約が集まりました。オンラインショップでの予約も多かったですね。

美田氏
 これまで、4G LTEケータイを予約して購入する人は多くなかったのですが、「INFOBAR xv」は1カ月で、従来の4G LTEケータイ1年分の販売になりました。

――欲しいと思った人には届けられたと。

砂原氏
 そうですね。

――購入している層はこれまでの傾向を継承しているのでしょうか。たとえば男女比などですが。

砂原氏
 これまでのINFOBARと同様で、男女比は55:45ぐらいだったと思います。通常のAndroidスマートフォンと比較すると、女性が多いという形です。

美田氏
 年齢は、一般的なフィーチャーフォンは50代以上が中心ですが、「INFOBAR xv」は30~40代が中心です。初代INFOBARに触れた人がスライドしたともいえます。

――2台持ちが多いのでしょうか?

砂原氏
 正確な把握は難しいのですが、感触としては2台持ちが多い印象です。タブレットとの2台持ちというケースも聞きますね。

――パッケージ同梱のSIMピンが単体で発売されましたね。

美田氏
 一部の方からの引き合いもあり(笑)、なんとか調整して、単体で仕入れることができました。パッケージングはぜんぶ内製で(笑)、ステッカーは砂原がデザインして印刷し、私が会議室で袋詰めしています。auオンラインショップで売り出したら、即日で200個がすぐに完売しました。SIMピン自体の在庫はあるので、時間をみてパッケージを作っています。

INFOBARの形を模したSIMピン
社内で手作りのパッケージ

 ただ、パッケージ1つ(2個入り)で600円なのですが、auのオンラインショップだと2500円未満では送料がかかってしまうのと、au以外のユーザーは代引き手数料もかかってしまうのがネックでした。

 そこで、auショップや家電量販店でも購入できるようにします。充電器などと同じオプション品の形で、auショップで注文すれば取り寄せが可能になります。おそらく今週中か来週にはショップから発注できるようになるのではないかと思います。

――SIMピン以外にも、結構グッズが発売されていますね。

美田氏
 いろんな物流を開拓しないといけないとか、大変だったのですが……やってみれば、意外にできるなと(笑)。できる範囲で、声には応えていきたいと思っています。

好評なグッズ展開。完売してしまったものもある
鎌倉・建長寺のイベントで提供されるようかん。中身の柄にもこだわったとか

――大小いくつかのファンミーティングの開催も、これまでのau Design projectではなかった活動ですよね。

美田氏
 ユーザーと実際に会って喋れる場というのは良かったですね。我々が開発側の顔として出ていくことで、プロダクトに愛着を持ってもらえたようですし、相乗効果があったと思います。

プロダクトだけでなく体験価値も

――以前のインタビューで「INFOBAR xv」は“デジタルデトックス”(過剰な“情報摂取”を意図的に抑制する概念)もテーマのひとつであると伺いました。こちらの手応えはいかがですか?

砂原氏
 SNS上でも、共感したという声をいただきました。それなりに響いたのではないかと思います。

 最近では「ツナガリすぎないゼイタク。」というコンセプトを打ち出して、鎌倉の建長寺でのイベント(3月20日開催)を企画しました。すでに定員を超える応募を頂いています。

――アナログのレコードやフィルムのカメラなど、若い世代を中心にデジタルから距離を置いたアナログ文化を再発見する動きがあります。au Design projectやINFOBARとして、若い世代へのアプローチについてはどう取り組んでいますか?

砂原氏
 鎌倉のイベントではインスタントカメラ(チェキ)の交換も考えていますが、イベントとして、「今に向き合う価値」を再発見してもらおうというものです。

 デジタルネイティブと呼ばれる若い世代のほうが、上手く取り入れているかもしれませんね。アナログ体験をうまく探っているように思います。

――今後のau Design projectの取り組みについてはどうですか。

砂原氏
 2017年に開催した展覧会「ケータイの形態学 展 - The morphology of mobile phones -」は、au Design projectを再始動させたいという目的で開催したものでした。そこで展示した「SHINKTAI concept」(シンケータイ コンセプト)のコンセプトを受け継いたのが「INFOBAR xv」です。

 au Design projectのチームとして、活動を続けていきたいという意思はあります。次のスマホはどうあるのかという問いに応えたいという想いもあります。ただ、商品化や、新製品であるのかどうかなどは、決めきれていません。動こうとはしているという段階です。

 また、“端末”に囚われることなく、広い、大きなプロジェクトとして展開していきたいですね。端末メーカーやベンチャー企業ができることを手がけてもしかたがない。KDDIじゃないとできないこと、au Design projectでしかできない切り口が大切になると思います。

――その切り口のヒントなどはありますか?

砂原氏
 プロダクトだけでなく、プロダクトにまつわる体験価値にも目を向けていきたい。カッコいいモノを作るだけでなく、問題意識とかにどう取り組んでいくのかということです。そういう視点に立って、新しい提案ができないとか考えています。

 「INFOBAR xv」では、テクノロジーとの最適なバランスを意識しました。“つながる”ことそのものを否定するつもりはありませんし、私もスマートフォンを使っています。けれど、依存を強めすぎない、ほどよい距離感やバランスについて、提案できることは何なのかと考えました。ただ潮流に乗るだけではないものを提案できればと思います。

――本日はありがとうございました。