【WIRELESS JAPAN 2009】
KDDI内藤氏、KCP+がもたらす開発メリットを解説


KDDIの内藤幹徳氏

 「WIRELESS JAPAN 2009」最終日の24日、KDDI コンシューマ技術統括本部 au商品開発部長の内藤幹徳氏による講演「auの携帯プラットフォームへの取組み」が行われた。携帯電話市場の現状を解説するとともに、携帯電話プラットフォーム「KCP+」がもたらす開発面のメリットなどについて語った。


端末価格の上昇で、買い替えサイクルも長期化

 内藤氏はまず、現在の携帯電話市場について解説。販売奨励金の改廃をともなう、いわゆる「分離モデル」によって、見かけ上の端末価格が上昇。2008年ごろから販売台数の低減、消費者の買い替え意向低下といった影響が確実に表面化しているという。実際の平均買い替えサイクルも長期化しており、分離モデル導入前の2007年後は25カ月程度だったものの、2009年時点では44カ月前後になるものと予測されている。

 auでは端末代金の支払い方法としてシンプルコース、フルサポートコースの2種類を用意しているが、2009年度第1四半期では約86%の顧客がシンプルコースを選択。一括払いでの購入者も50%を占める状況だ。市場全体での販売台数は低下しているものの、比較的高価な単価3万円以上での販売も比率的には伸びており、「高価な製品でも売れるという状況が少しずつ出ているようで、注目している」と内藤氏は語る。

 価格面での販売多様化と合わせて、ユーザーニーズもまた多様化している。「『ケータイが好きじゃない』という方も含めて、お客様は本当にさまざまなお考えをお持ちになっている」とし、auでは“ライフスタイル”を切り口に製品カテゴリを構成した。

 具体的には、オープンOS搭載機をはじめとした先進ユーザー向けの「オープンモデル」、ライフスタイルを重視するユーザー向けの機能充実モデル「サービスモデル」、より感性を重視するユーザーを対象とした「デザインモデル」(iidaなど)の合計3種類。安定した無線インフラとこれらを組み合わせ、魅力的な機能や価格を実現。この総合力で差別化を図っていくのがauの基本的なスタンスだ。


シンプルコースでの端末契約が増加オープン、サービス、デザインの3カテゴリで端末を展開する

メーカー別新機能を集約、次商戦期には共通化する「KCP+」

開発効率化、商品競争力の両立を目指して「KCP+」を導入

 製品が高度化する一方で、メーカーが負担する開発コストの増大はすでに大きな問題となっている。内藤氏も「端末開発におけるコストなどの諸課題を解決し、その上で商品力も同時に向上させなければならない」と説明。開発費を抑えつつ、新機能を次々と追加していかねばならない現状の難しさをうかがわせた。

 開発にあたっては、古くなった機能を削除すること自体少なく、開発規模は大きくなるばかり。新機能を短期間で商品化したいという意向や、通信キャリア側が主導する機能要求など、さまざまな課題が現実的にあるという。

 この答えとなるのが、「KCP+」という開発プラットフォームの策定だ。これまでなら端末ごとに異なっていた内部ソフトウェアの仕様を極力共通化し、差別化が比較的容易なユーザーインターフェイスなどの部分に各メーカーの開発リソースを割いてもらおうというシステム。前身プラットフォームの「KCP」では、「BREW」によって一部のアプリケーションを実行させていたが、これをほぼすべてのアプリケーションにまで拡張したのがKCP+という。

 内藤氏は「KCP+のベースとなる素材は、auが各商戦期ごとにメーカーへ配布している。各メーカーはその上にのせる独自の拡張機能を開発するが、auがそれら新機能を集約、次の商戦期には共通仕様にした改めてメーカーへ配布する」と説明。「メーカー間をまたいだエコシステム」とそのねらいを補足する。

 KCP+導入によって結果的に、さまざまな新機能を各社が分担して開発できるメリットも副次的に表れた。KCP+端末はリリース当初、動作パフォーマンス面の不利があったものの、徐々に改善され、開発ペースも向上した。「EV-DO Rev.0対応端末は初号機発表から1年で5機種しかリリースできなかったが、KCP+で開発したEV-DO Rev.A端末は1年で25機種にまで増えた」と内藤氏は一例を示す。


KCP+の概念図各メーカーの新機能をauが集約、次回の商戦期には共通仕様化できるのがメリットという

LTE導入後もプラットフォームが必要に

 auでは今後、Androidなどに代表されるオープンOSを採用したモデルにも取り組んでいく。ただしオープンプラットフォームの端末に通信事業者独自の機能を追加していくことには、オープンという本来のメリットを損なう可能性も懸念されるため、内藤氏は慎重な姿勢を示す。

 インフラ面では2012年のLTE導入を目指しつつも、既存インフラの熟成を進める。フェムトセルを活用した圏外対策に加え、2010年下期にはEV-DO Rev.Aのマルチキャリア化を開始したいという。

 なお将来のLTE時代にも、やはり何らかの開発プラットフォームが必要になるだろう。内藤氏は具体像こそ示さなかったが「より開発効率がよい、よりコスト競争力のある、そして商品競争力のあるチップセットやOSを検討していきたい」とコメントし、講演を締めくくった。


今後のインフラ戦略LTE時代の新プラットフォームも模索中という



(森田 秀一)

2009/7/24/ 18:54