【WIRELESS JAPAN 2009】
シャープ松本副社長、好調な中国展開などを説明


シャープ 代表取締役副社長執行役員 商品事業担当の松本雅史氏

 「WIRELESS JAPAN 2009」初日の基調講演では、端末メーカーとして唯一シャープから、商品事業を統括する代表取締役副社長執行役員の松本雅史氏が登壇した。松本氏は「新しいコミュニケーションを創出するシャープの移動体通信ビジネス」と題し、世界的に携帯電話端末の売上が縮小する中での同社の成長戦略を説明した。

 シャープは昨年、海外向けの端末事業拡大のため、中国市場に本格参入した。2008年6月に最初の機種「AQUOS手机 SH9010C」を発売したが、この販売価格は日本円にして7万円程度と、日本市場で考えても高価格帯の商品だった。もちろん中国市場の物価では相当の高額機種となる。それでも、現地のハイエンドユーザーはインターネット等を通じて日本の商品をよく知っており、サイクロイド式の回転ディスプレイというスタイルは、あこがれをもって受け入れられ、一定の存在感を得ることができたという。

 2008年11月に発売した後継機種「AQUOS手机 SH9020C」は、今年に入ってから4000~5000元機種の週間販売ランキングで度々No.1を獲得するなど高い評価を得ており、同社は中国進出後最初に目標としていたポジションには十分つけているという認識を持っている。これまでにスライド型、折りたたみ型を含めた全7機種を中国市場に投入しており、今後は販売台数を稼ぐため普及価格帯の機種も充実させていく方針という。

中国市場に投入した7機種高額商品にもかかわらず中国市場でもAQUOSケータイは好調

 また、従来のGSMやTD-SCDMAに加え、今年に入ってW-CDMAの正式サービスがスタートし、新しいインフラの広がりにつれて端末の販売が伸びる可能性もある。このような状況も同社にとっては追い風だ。中国における携帯電話販売は年間2億台を超えており、少しのシェアを取るだけでも国内市場よりはるかに大きな台数を販売できる可能性はある。

 世界市場全体に目を向けると、2009年は端末の販売台数がここ数年見られなかった前年比マイナス成長になると見込まれている。「これまで毎年2ケタ%の伸びを示していたが、2008年に6%まで落ちた。2009年はマイナス4.4%の11億7000万台と予測されているが、実体はもっと落ち、10億台に近づくというデータもある。2010年は改善をするであろうという予測だが、今までのような成長には陰りが出てきている」(松本氏)という。

 その中で光明となるのが、前述の中国市場やその他の新興市場、そしてスマートフォンだ。まだ現在はスマートフォンの販売台数は全携帯電話のうち1割強だが、今後の需要は大きく伸びると予測されている。シャープでは2004年から米T-MobileのQWERTYキーボード付きスマートフォン「Sidekick」を製造しているほか、日本ではW-ZERO3シリーズなどの実績がある。松本氏は、今後先進国向けにはスマートフォンの事業を強化し、製品を投入する地域を広げていきたいとの意向を示した。

2009年はマイナス成長、その後も伸びは1ケタ%にとどまると予想される不況下でもスマートフォン需要の伸びは期待できる

 一方国内市場の販売台数は、新販売方式開始前後の2007年度下期をピークに、世界市場以上の急激な落ち込みを見せている。2009年度下期からは緩やかな回復基調に移ると見られているが、2007年以前の水準は到底期待できない。従来は機能が満載されたハイエンド機に人気が集中する傾向があったが、最近はハイエンドと実用的な機能に絞ったミドルレンジの2クラスに需要が2極化しているという。しかし、ここで保守的な商品に退行してしまうと、さらなる市場縮小を招き負のスパイラルに陥ってしまうとして、松本氏は「不況期にこそ、リーズナブルな商品の中にもキラリと光るポイントが必要」と指摘する。

 この夏の新製品で同社は、800万画素以上の高性能CCDを、ハイエンド機だけでなくミドルレンジの機種にも搭載した。また、「ソーラー携帯」という新たなカテゴリを形成すべく、KDDI、ソフトバンクモバイルに続きNTTドコモ向けにも太陽電池パネル搭載機種を開発した。このような「シャープならでは」の機種を投入することで、市場に活気を取り戻そうとしているのだという。

 今後の携帯電話の進化の方向としては、カメラのような搭載デバイスの高性能化によって起きる端末自体の進化に加えて、サービスや他の機器との連携による進化が考えられるとする。「ブルーレイレコーダーとの連携で、地デジの番組を携帯電話に転送して持ち出すということもできるようになった。カーナビと携帯電話が連携し、簡単に目的地が設定できたり、不在着信や未読メールがカーナビの画面に出たりする」(松本氏)という。

単体デジタルカメラに迫るカメラ機能や、ソーラーパネル搭載機で需要の掘り起こしを狙う

 連携については「商品とデバイスの連携」「商品とサービスの連携」「商品同士の連携」の3形態が考えられるとし、そこでの「商品」とは、携帯電話だけでなく、AV機器やPCのような情報機器、生活家電なども含まれる。それらの商品がカメラ、液晶パネル、デジタルチューナーといった電子デバイスや、クラウドコンピューティングなどによって提供されるサービスと触れ合うことで、また新たな商品が生まれる。

 松本氏は「携帯電話市場は飽和に達したかに見えるが、携帯電話自身が形を変え、品を変えていくことが成長の柱になる。端末の進化と連携により需要を喚起していきたい」と話し、同社のコア技術や新たなネットワークサービスと組み合わせることで、携帯電話は今後もさらなる進化を遂げるとの考えを強調した。

ブルーレイレコーダー連携は既に実現しており、カーナビ連携もパイオニアと具体的な規格策定に至っている「商品とデバイス」「商品とサービス」「商品同士」の3つの連携の形が考えられる



(日高 彰)

2009/7/22/ 20:30